Marantz 8B   本当の実力を聞くために

結局、自分ではノータッチでしたが今回の一件でマランツという会社のことを知る機会になりました

米マランツ社は1964年に家電メーカーのスーパーコープに売却され、以降日本のスタンダード工業によって製品開発されることになりますが、これはもう少し前「古き良きアメリカ」時代の話です


創業者ソウル・バーナード・マランツさんは工業デザインと電子技術の経験がある人で、1951年頃知人のためにプリアンプを作った
いわゆるセミプロの自作マニアですね。その機械が仲間内で評判になり400台近い購入希望があって
奥様と二人の手作業では追いつかなくなり1953年に会社として立ち上げたそうです

P・ウォーカー先生やアイクマンくんなどもみんな同じような経緯で起業していますね
本格的家庭用オーディオが今まさに産声をあげた瞬間です

その後の快進撃はよくご存知の通り、シドニー・スミスやセクエラといった名技術者を向かえ入れ名器の数々を生み出します

私の薄い記憶だけで今回ネット検索しても確認が取れなかったのですが、マランツ自身だったかスミスは測定器の仕事もしていたと聞いた記憶があります

今回 8Bのマニュアルを見ていて、そう、これは測定器のマニュアルの書き方だと思ったのです


マニュアルのP5に 「アジャストメント」という項目があり

1、バイアス調整
2、ACバランス調整

の2項目が写真入りで事細かに記載されています

さらにその後には
テストポイント毎の電圧値と抵抗値の標準一覧があって、実に親切なマニュアルになっています
これだけやっておけば、一通り以上の調整ができますので、買ってきたままの状態で使うよりもかなり音の足並みが揃って重心が下がり、そして何よりピントのあった音になるでしょう

今回は片側のchだけでしたが、きちんと調整してからモノラルで聞いてみました
聞き慣れた民生機アンプという印象は霧散し、音像に整いと背景に静寂のあるハイクオリティ・アンプの香りが漂ってきました

楽器の姿がなんとなく霞がかかり、こんもりとした「マリモ」が鳴っているような印象がなくなったのです
やはり8Bはきちんと使いさえすれば素晴らしい名器でした!


いつも申し上げていますが、50年前の真空管時代の名器が眠たくなるような生気のない=優しく真空管らしい音=であったら「名器」と呼ばれ続けるはずがないんです
同時代他メーカーのアンプをはるかに凌駕する音の鳴りっぷりがあったからこそスーパースターとして君臨したんです

マニアの皆さんが、名前さえも聞いたことのないアンプメーカーは星の数ほどあったにもかかわらず、ほんの一握りの機種だけが50年経った今でも高値で取引されているのには、当然の理由があるのです


Marantz8b.jpg


さて、このブログで上記マニュアルのリンク先を張って調整方法などにも少し触れようかと思いましたがやめました

少なくともある程度の精度の(市価1万5千円以上)デジタルテスターとダミーロードとショートピンは必要ですし(テスターも持たずにヴェンテージアンプを使っている環境を想像できないが、下記の理由で使わないほうが良いとも思う。またダミーなしに通電するとアウトトランス断線の原因になる)ちゃんとするなら、オシレーター、ミリバル、ジェネレーターが必要になる

そして、何より心配であったのが

底パネルを外して天地を返した状態で通電し・・・+Bにはこの時点で400v来ている・・・電圧測定や半固定抵抗の調整をすることです
この時に金属のスクリュー・ドライバーやプライヤーズを、手を滑らせてアンプの中に落としてしまうと家中の電源を消失することになります。

もちろんアンプは大きな被害を受けます、そんなリスクを冒してまでするべきことではないと考えました


312marbottom.jpg

400vが走るこの中に手を突っ込む(比喩です)勇気が必要です
電圧は高いですが、200mA程度しか流れないので感電しても「ビク」って程度です
壁コンセントからの200vは契約の50Aとかのままですから「ブヲ」ってなります




結論から申しましょう

球を交換して音が変わった、良くなったと喜ぶのは少し待ってください
球を交換したせいで、回路中の動作条件ppならAC、DCバランス、シングルなら球の動作点が変わるので音が変わるのです、それを喜んでいても仕方がありません

ただし球を変えるたびに上記マニュアル通りに調整をされている人は別です。その人は以下の文を読む必要がありませんが、その様なことができるほどアンプを理解している人は大抵安易に球を変えたりしないものです



仮にきちんと調整された状態(そんなものには中々お目にかかれませんが)で買ったとしたら、球を変えることによってわざわざバランスを崩して、音が変わったと言っているのです
アンプは音が変わることが重要ではないんです

もし、交換する球をお求めになるお金があるのなら、一度信頼の置ける技術者によって調整された状態で聞いてみることです。その後は1年に一度のルーティンにする
それだけで、あなたの家ではどれほど素晴らしい音楽が響くかしれません

ただし、お願いする相手がまた悩ましい問題であります。アンプを設計して自作できる・・・というだけではいけません


長い時間の中で技術は歴史を刻み続けてきたのです
歴史を知り、マランツであればその設計に携わった技術者の思想や組あげる時の「クセ」を知らないと(想像する感性がないと)できる話ではありません

「オリジナル部品でないといい音は出ない」だの「俺がいじったら、もっと音を良くしてやる」なんて人にあなたの大切な、そして歴史的名器を委ねてはいけません
素人の生兵法は古来より固く禁じられるものです、なので私自身も8Bに関しては関与出来ませんでした


まずはその機械を作った人たちが情熱を叩きつけた最高の状態で一度聴いてみてください
雑誌やネット上の評判をはるかに上回る音の世界がそこにはあると思いますよ

変化を求めるならば、その後でもいいじゃないですか?
すでに鬼籍に入ってしまったシドニー・スミスやソウル・B・マランツと違って僕らは生きていてこれからも時間はたっぷりあるんですから

亡き先人の偉大な業績にまず敬意を表してから己の思考を表現するのであれば、礼を失することにはなりますまい



『余談中の余談コーナー』

立川志の輔師匠(北陸地方の生まれ)が29歳という遅咲きで談志師匠に弟子入りした当時のことです
兄弟子(おそらく年少の)に蕎麦屋へ連れて行ってもらいました

お酒を頼むと「お通し」として白菜の漬物が出てきました
志の輔さんは、これまでそうしてきたように何の迷うことなく漬物に醤油をかけて食べようとした所、兄さんにお小言をいただきました

「おまいさん漬物が塩っ辛いか甘いかわからないうちに醤油をかけるんじゃないよ。一口食べてからでも遅くないだろ」

・・・お後がよろしようで








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Marantz 8B Tさんの涙! って泣いてないか、でも泣けるよねえ

さて、件のマランツ8Bは購入したお店に発送して周りの抵抗をもう2、3本交換して無事戻されたそうです

それから半年ほどのち再びTさんから電話がかかってきました。やっぱり暗い声です

「どうしました、大丈夫ですか?」

「それがさ、マランツ8Bの片方のchの音が小さくなって左右のバランスが取れないんだよ」

「左右の球は入れ替えましたよね、ソケットの掃除はしましたか?プリアンプ以前ではないですか?」

「それがさ、8Bにはメーターが付いてるよね、出力管4本のうち1本だけが針が十分に振れないんだよ」

「それは困りましたね、一応見てみますから持ってきてください」

Marantz_8B_15B.jpg

出力管の脇にある(黒いキャップが被っている)半固定抵抗を調整して右端のメーターの針をメーター内の白いラインに合わせるという作業


まあ、出力管のPiを測ってppのバランスを取るんだよねえ、おそらくカソードで測っているのだからパスコンが抜けたんだろう。くらいの軽い気持ちで待っていました

30分もすると、ちびまる子ちゃんが焦った時に頭から青い線が降りてきているような顔をしたTさんがアンプをかついでやってきました


それでも、随分とのんきなことを言ってきます

「今日はさあ、まだレコード聞きたいからさあ、抵抗とかコンデンサーとか変えればいいんでしょ、早くやってよ」

まあ、見てみますからちょっと待ってください、とNETで落としておいた回路図から見始めた・・・・その瞬間今度はこちらがガーーンとなりました

7001429369021-1706.jpg

なんと、固定バイアスなんです

メーターはバイアス可変によるDCバランスを測るためにあったのです、ほとんど部品がない場所の電圧だぞ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おそらく修理はできないだろうな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「今日は無理ですね、あまり好ましくない状態だと思います、せいぜい早くやりますがそれでも2、3日はください。
それと手直しではできないと思いますので正規の修理代が発生しますし、修理不能でお返しする可能性もありますのでご理解ください」

無念というか不服そうな顔でしたが、直ぐに出来ないのは事実は事実なので納得してもらって一旦お帰りいただきました
さてここからはこちらの気分が暗くなる番です、早速原因の特定=犯人探しを始めました

普段はこんなに急がないんだけれど、気が早ってしまうというか嫌な予感を拭いたいからという感じです

まずは関連するであろうCR部品の不具合を個別に確認していきます・・・・予想通り問題は見つかりません、数は少ないのでここまで20分ほど

早速行き詰まりますが、そうも言ってはおられません、気力を振り絞って次の手に移ります
各部電圧を4本の出力管から見た立ち位置で測っていきます

音声回路でも特に問題はありません、ここまでで1時間弱。少し焦りが・・・

PICT4538.jpg

このメモは信号回路で犯人がわからず、B電源の流れを測っていて犯人検挙の瞬間を記録したものです



答えは想像以上に悲劇的なものでした
アウトトランスの1次側のレアショートだったのです

自分の測り間違いじゃないかと何度も何度も確認しました、しかし残念ですがスクリーン=プレート間に導通はありませんでした
いつもより数倍重い携帯を取り上げてTさんに連絡しました



翌日、Tさんは購入したお店に連絡したのですが、部品としてはすぐにはないのでジャンク品が出た際に生きているトランスを探すしかないと言われたそうです
それからどうなったか委細はわかりません、日本にはたくさんの同型機があるでしょうからトランスは出てくると思いますが早く叶うことを祈ってやみません


最初に抵抗が溶断した時にはこちらで修理(の記録)をしていないので、今回のトランスが切れた同じ場所の球が不具合だったのかはもう私にはわかりません

まっとうに考えると真空管アンプは400vレベルのB電源で動いているわけですから、短絡事故の際には重度の損害が生じる可能性が大きいのです
使う人間は常にその覚悟というと大げさですが、もしもの時の安全保障を考えてしかるべきでしょうね


私が長いこと真空管と付き合ってきて思う事です

「なんとなく嫌な気がする、これをやっちゃいけない」という第六感を敏感にするしかこんな恐ろしい器械と付き合う道はないと思います
別の言い方をすると「気配を察する」感性です

前回話題にした「球転がし」を私がしないのは、アンプにとっては「ヤバイ気がする」ってことも大きな要因だと思います
そこんところが鈍感になると、いつの間にか大きな渦に巻き込まれるかもしれないと思うのです

今回は大変な悲劇でしたが、このアンプを初めて見た時に言った

「抵抗で済んで良かったですよ、トランスでもやったら大変でしたね」なんて冗談が本当になってしまったのです

その時の修理を自分でせずに販売店にお願いしていただいたのも「なんとなく近寄りがたい感じ」がしていたのだと思います



次回は、この悲劇を通じて学んだこと

球転がしをする前にやるべきことは山ほどあった!


最終回です






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Marantz 8B と球転がし   大好きなTさん

私の家と同じ市内にTさんという先輩がおられる
この人を私は大好きなんだけれど、今まで出会ったオーディオ好きな人の中でも群を抜いてユニークな方なんです

何がすごいかってその発想力が、私のような凡人には遠く及びもつかない程とてつもないパワーがあるのです
それはもう、30年前に出会ったその日から一言一句発言を全て覚えていますから、いつか「T氏語録1〜7巻」という本を出版して大儲けしようと企んでいるんですが・・・「やめてくれよお」と拒否られているので現在は虎視眈々とチャンスを窺っているところです


さて、そのTさんからある日電話をいただきました
その頃Tさんは長年使っていたマッキントッシュのアンプに加え、マランツの#7と8Bのコンビを導入して随分と楽しんでいるらしい。という話を風の噂に聞いていました

しかし、電話口の向こうからは何やら元気のない声が聞こえてきます

「マランツの8Bなんだけどさ、球を変えたら音が出なくなっちゃったんだ、それに少し焦げ臭い匂いもする」

それは大変ですね、一応見るだけ見ますから持ってきてください、ということで我が家に持ち込まれました

Marantz-model-8-Tube-Amplifier2.jpg
この写真はNET上からいただきました


一目で、出力管のカソードに有る抵抗の溶断とわかりました
多分C電圧測定用の抵抗だったと思います
多分というのは、そのアンプは購入後まだ2ヶ月ほどだったため、販売店へ送ってくださいと話していましたのでその時は回路図を見ていなかった


どうしてこうなったかと話を聞きますと
いわゆる「球転がし」をしたくなった(マッキンの当時からやっていたという)のでe-bayで海外からEL-34を取り寄せて差し替えた途端バリバリっとなった、らしいのです

「kaorinくんも海外から球を買うだろうけれど、こんなことはないの?」と聞かれましたが
私は、アンプに実装する前に真空管試験器で球の良否を測ってからでないと使いません。と答えました
もし不良の場合は、数字的根拠を突きつけて返金を要求する必要もありますしね、外国人相手は骨が折れます

何よりも、球の不良による今回のような「もらい事故」が怖いので、氏素性のわからない球をすぐにアンプに入れてB電源を投入するなんてのは自殺行為だと思っています
オークションにある「測定済み」「整備済」なんてのは夏のお墓で肝試しするより怖い
今回は、抵抗1本で済んで運が良かっただけなんです、トランスでもやっちゃったら泣いても泣ききれませんよ

なんて話をしたところで、一服してコーヒーを飲みながら昔から疑問に思っていたことを聞いてみました



なんで、真空管を変えるんですか?


私の疑問はこうです

そりゃ真空管を変えると音は変わることもあるでしょうね
ブランドや型式が、果てはロットが同じでも個体差はある、さすれば「内部抵抗」が違い、同一条件下で「流れる電流値」も違うのは当たり前、人間の顔がたとえ双子でも違うようにね、当然出てくる音が微妙に変わるのはこれも道理だ


現在自宅で稼働中の2セット(モノラル4台)のアンプはフルメンテしたのち、使用する全ての真空管の個々のバラツキを考慮しアンプに実装した動作状態を汲みして、ステレオ2台ペア毎のゲインや特性を揃えてあります

いざ、真空管を交換する段になったら・・・
手持ちの真空管は全数測定してからストックしてありますから、切れた真空管と測定結果の近い1本を選び出して交換するのですが、それでも微妙な調整に関しては実装の上オーバーオールで調整・確認する必要が生じます
これは大きな労力なのです

以上の通り、真空管が切れる→交換 という事態に対しては大変な恐怖を感じているのです
現状の動作状態が保たれなければ困るし、今の音が変わっては困る という恐怖なのです

それなのに、積極的に球を変えるなんて、一体全体どういう心持ちなんですか?と 問うたわけです

PICT4532.jpg

ある真空管を測定したときのメモです、これは試験器で単体で測っただけ
より大きな問題は回路に実装したときにこの人たちがどのような振る舞いをするかなのです



では、Tさんの答えはどうだったのか?
多くのブログやコミュニティーでも球を変えて音の変化を楽しむという記事を見かけますけれど、Tさん以外の方も同じような意見なのかなあ?などと考えつつ息を飲んで答えを待ちました

しばし、沈黙ののちTさんはこうおっしゃいました

「だってさ、今よりいい音がする球があるかもしれないじゃん。可能性があるならそれを聞いてみたいじゃない!?」

おっと、びっくり、
予想していたより遥かに説得力のある回答で、一瞬身じろぎました

でも、何か、何かひっかるモノがあったのでその後も互いの本音をもう少し探り合いました
それでもやはりTさん揺るぎない精神でさすがです、俺の気持ちは一言で伝えた!それ以上でもそれ以下でもないってくらい堂々としています

きっとそうなんでしょう、
昔からよく言われる、音の変化を楽しむという趣向も含めて、趣味としてはその考え方も一理でしょう
お前はあらゆる可能性を放棄するのか?それで人類に進歩はあるのか?なんて言われたら返す言葉もありません


でも、Tさんごめんなさい、やっぱり凡人の僕にはその深謀遠慮は理解できませんでした
自分がアンプに対してしていること、それによってアンプから得ていることを考えると違うんです、僕はアンプに「いい音」を出してもらいたいんじゃないんです
アンプが意図した通りの動作をして欲しいだけなんです、だからアプローチが異なるのだとわかりました


ただ自分はまだその道の半ばで、足場を固めている途中なのでより良い可能性を追求する段階に至っていないと思っているのです
そこで精一杯考えて、こんなカスカスの意見だけ言わせてもらいました



もし、私がコンサートヴァイオリニストとして生活できるほどの能力があったとして、何らかのご縁があって稀の名品をロシア政府(笑)から無償で貸与していただいたとしましょう

例えばガルネリウス「キャノン」を借りたとして、それを使って演奏活動をしています
そんな私が「たまには他のヴァイオリンを使って違う音を楽しみたい」とか「このキャノンはいい音でないから駒とかをスズキのに変えようかしら」と考えるでしょうか?私には無理ですね

どんなに頑張ったって自分が「キャノン」と伍するだけの演奏をできるとは思えない、精一杯勉強して少しでもその名に恥じないような演奏家になろうとするしかないです
そして、鞍上人なく、鞍下馬なし という状態になりたい、名器ガルネリウスを体の一部のように弾きたいと願うはずです

これは曲の作り手ベートーベンや、ヴェイオリンの作り手ガルネリと演奏者である私との時空を超えた真剣勝負なのです

PICT4528.jpg

現在稼働中の真空管です、これらより「いい音」の出る球があるのかどうか知りませんが、作り手と使い手の時空を超えた真剣勝負をするためには球を変える前にやるべきことは山積みです


対してTさんの「可能性のある限りいい音を聞きたいし、その為には自分ができるだけの手を打ってみたい」という志もよくわかりました

お互いに意見を交換しあっても尚且つ双方の意見が両立するという意味のある時間となりました


しかし・・・

このお話はこれに留まらず、もっともっと大変な事になる続きがありました







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Garrard301 について雑感

続編を書き始める前に、まず一つ重要なことを先に書いておかなければいけません

今回はたまたま301が2台同時期に我が家へ来ました、そして、偶々が重なって初期型の軸受けのものでした
・・・ただそれだけの事なんです

オカルト話が盛り沢山なオーディオ趣味の世界ですから、301の色が違うと音が良いだの軸受けが違うと音楽の聞こえ方が違う・・・・こんな霞のような話が多くてたまりません

私も初期の301は好きですよ、
それは前回お話しした通り機械としてみれば材料や加工がより丁寧であるからですが、もしも縁あって買うのなら後期型であっても一向に構いません
その程度の「好き」です

ただし、これは断言しときますけど
ハンマートーンだから音がいい、グリス軸受けだから良い音楽が聞こえるなんて、金輪際一度だって思ったことはありません


ということで皆さんも騙されちゃいけません

そのお宅の音がいいかどうかは、アンプやスピーカーから部屋までのすべて含めたその末の話なんです

とどのつまりその家の音の良し悪しは、決してパーツの色なんかじゃなくて使う人間の能力次第なのです



もしあなたが、301でも401でもEMTでもようございますが、1台お求めになるのなら毛先ほどの仕様の違いで天地が変わるような言い方をする人からは決して買ってはいけません

キチンとした整備をしてあることは絶対条件ですが、それは外見がピカピカしているということでは決してありません



結局はですね
一番大切なのは、買う人ひとり一人が「良い整備状態とはどんな物なのか」を知っていること。これに尽きるんです
沢山見てね、たくさん触って、良いものも悪い状態のものも知らなきゃいかんのです

今現在の見た目が悪いからって、それ自体が悪いとは限らないんですよ
ある千葉のお店なんか、隅から隅までネジの頭1本までピカピカにしますけれど、それは「キレイ」なだけで「美しい」ではないんです
中身の美しさは必ず外に出ますから、買い手はそこをしっかりと見極める必要があるんです


ヴィンテージに限らず、新品で買えるオーディオ製品だって買い手が舐められたら、作り手や売り手はどんどん手を抜きます
それを止められるのは、買い手の厳しい目でしかないんです。変な言い方ですけれど、買い手には分別ってのが必要なんです


PICT4379.jpg

後期型ではこの羽根は付いていないんですよ、だからと言ってこんなもの音には何の関係もないですけれどね



さて、
2台目の301を組み立てて、試運転の段になって困ったことが起きた

モーター軸を指で回して回転の不具合がないか調べると実に滑らかに回るのだが、スイッチを入れて電源を与えトルクをかけると、かすかに擦れるようなノイズを発してどうも上手くない

散々考えたが理由がわからない
まるまる2日考えたがわからない、仕方ないのでもう一度全部バラして隅々まで目を凝らして見た

するとある部品が、ほんのわずか、それこそ目視しても気付かないくらい僅な角度の差があった

差し金を当てながら慎重に手直しして再び組み直した
惚れ惚れとするような滑らかな回転が戻ってきた
そうそう、こうでなきゃ

初めてのパターンだったけどまた一つ経験できて次につながる、ありがたいこと

PICT4526.jpg

これが301のマニュアルにあるモーターの組立図です、これでも下半分です



このブログでは何度も書いているが、EMT930 927は工具さえあれば猿が組み立てても同じものができる
それほどまでに部品設計が良くできていて、点数は少ないし順番や向きを間違えることはほぼない
930や927のモーターの部品点数は20個くらいじゃなかったかしら

それに比べて301はこの騒ぎだ、一つ一つの部品も軽量、肉薄で頼りない

それだけに組み方で性能が左右されやすく、扱う人間の特徴が表に出やすい機械だと思う


PICT4479.jpg

ピカピカにしてはいないが、整備後はなんとなく「パリッと」見える・・・この「見える」が重要だと思う



商売柄、ダイレクトドライブのモーターは随分と聞かされてきたが
音楽を聞く上でのS/N比(僕の造語で、音がなりやんだ時のホールの静けさ)の表現は明らかに良質なアイドラードライブがDDのそれを凌駕している、浅学の私には理由はわからない、またアイドラーなら全ての機種が良いというわけでもない

一方、整備されていないアイドラードライブはザワつきがあるだけでなく、微細音がマスクされてホール感を感じられない



繰り返し言うが
オーディオの音はターンテーブルの色やバージョンで決まらない

どんな立派なコンポーネント(部分品)を買ってきても、それが本来の性能を発揮できなければ成果は期待できない

機械を立派に整備し使い尽くして音楽を享受できるまで進むか?
性能には目を向けず、購入したブランドに喜びを感じてそこで歩みを止めるか?

何れにしても購入者が選択することだ

・・・・その人の家の音は、そこの主人の見識でのみ決まるのだ






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Grrard 301 二題 (2台)

「言葉のいらない」というのは最上級の賛辞だろう
その気品あるデザイン、取り回しに絶妙な大きさ、回転の精度、静かに回ること...etc ...etc....

1950年代の発売だと記憶しているが、これほど長い期間にわたり名器と称えられている物は、その称えられる長さの分だけ時代を何年も先取りしているのです
価格を含めて考えると60年以上経た今でも伍するものはほんのわずかでしょう、もしかしたらまだ無いのかもしれません


そんな、大好きな301(特段401でも構わないのですが、過去に1台も使ったことがないので妄想発言を控えているだけ)ですが、仕事として取り組む対象としては中々骨の折れる頑固者の一面も持ち合わせています

PICT4392.jpg


営業の外出先で「なんだか今日は疲れたから一つお饅頭でも買って帰るか」などと決断をした日に限って、会社に帰ると本社から来客があってチョコレートの差し入れが机の上に置いてあったり。
家に帰ると「親戚が訪ねてきて手土産にケーキをいただきましたよ、今日中に食べてください」

おやおやと思っていたら、翌日には実家から彼岸だからとおはぎが送られてくる。なんて経験したことありませんか?
我が家では常にあるあるの上位に位置する「甘味は甘味を呼ぶ」の法則です


そうして、名器も名器を呼んでGarrard 301が二つ並んでいるの図です

この2台とも一見普通のGarrardのように見えますが目利きの方にはなかなかの珍しいものとわかるでしょう

左のは軸受けのフランジの形状からグリス・ベアリングの前期型とわかります
そして、右のは同じくグリス・ベアリングなのですが、最初期のハンマートーン仕上げとの端境期にごく少数作られた
ハイブリット型(シャーシがアイボリーでプラッターだけがハンマートーン)なのです

こちらは昨年Lockwoodモニターを採用された横浜のTさんに頼まれた分なのです、これを見つけた瞬間本人に確認する間もなく買い込んでいました

PICT4030.jpg

背中を押してくれたのは、こちらのマニュアル・ハンドブック(取説)です

PICT4029.jpg

何と言っても1960年頃のフォノモーターは高級品ですからね
出荷検査票は、当然サイン入りの手書きのものが添付されています

重要なのは、
・検査票
・マニュアルの1ページ目
・本体の銘板
この3箇所のシリアルナンバーが揃いであることです
そして、購入した際の納品書まで揃っていましたからこれは、履歴の個人を特定できるワンオーナーに近いものと言えます

何より、一も二もなく私が飛びついたのは
あまり長時間使われていないもので、過去に修理歴が無い様子であったから

以上の点を、英国のサルベージの業者が掲載する小さな写真から読み取るのですから、少々「掛け」でもあるのです


PICT4463.jpg

現物が着いて仔細に見渡して確信しました、これはいいぞ

まず、汚れを拭いた後が無い。次にマイナスネジの頭が舐めていない。まちがい無いです

汚れは、なんとか落とせます
(千葉県のトーレンスやガラードを100万円で売るような業者のように、ピッカピカに光らせる事を主な仕事にはしません、時代を全て落としてしまうのは日本的な趣味でイケてません。あれは趣味どころでなく悪趣味です)

しかし、削れた部品は元に戻らないですし、まずい方法で直しがある個体も再生するのにはいじっていない個体の倍も手間がかかります、完全には戻らない場合もあります

外見は汚れていても、機械的に元気な個体は実は、塗装の色なんかよりずっと貴重品なのです

それと、Garrardのアイボリー塗料は、ヴィンテージ自転車の塗装に近く粉っぽい塗料が使われており、不用意に汚れを拭き取ると、表面の塗料をごっそり剥ぎ取ることになりツヤを失うばかりかひどい時には下地が出てしまいます
特に日本人は綺麗好きで掃除好きですから、日本にある301はツヤのないものが非常に多く悩みの種です

実際に分解を行っても、素性の良さがわかります、ばっちい外見に反して表に出ていないパーツは極上のものばかりでした

PICT4379.jpg

モータの軸はお約束通り、冷却フィンの付いた初期型です
後期型になると、コストダウンのためにフィン無しになります、機械物を見る機会が増えると初期のものほど立派に作られているものばかりで人間不信になりそうです

軸受けに挿入される先端部分も引き抜く際に付着したオイルの筋が見えるだけで横縞がありません、見込み通り稼働時間の少ない良品でした



さてここから組立に移るのですが、見えない敵に苦労させられるのはもう少し後のことでした


続く





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