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Neumann WV-II リビルド完了 納品しました

もう3年ほど前になるでしょうか

Tさんがひとつの段ボール箱と細長い鉄板を何枚か持ち込まれました

中身は完膚なきまでにバラバラにされたNeumannのEQアンプ WV-IIの見るも無残な解体後の姿でした


「プレートCHが一つ断線して使用不能になったので解体されて部品毎に売られようとして居たのを、kaorin27君に頼めば何とかなるかもしれない」と思って散逸寸前で買ってきた。とのことでした


もちろん目の前は真っ暗になりましたが、逆に考えてもし自分が受けなければ世界中を探しても再生は難しいだろう(まあ、勝手な思い込みではありますが)そうなればバラバラになってしまう

この機会を与えられたのも何かの’天命’だと思えばお受けするしか無いだろう



ただし、時間無制限、費用無制限・・・とは言え上限は伝えたけれど国産高級プリアンプ1台分くらいは覚悟してください。とお願いしました



障害 その1

私が過去にメンテナンスした個体はみんなシリアル#70番以上で構造や回路は大筋で同じものでした
しかし、この個体はシリアル#20番以下の最初期型でシャーシから回路から切り替え方法から全くの別物でした

スタートから手元の回路図と実際の部品の値や個数が異なるので少々困った事になりました




障害 その2

まあ、違うと分かればそれ用に頭を切り替えてアプローチすれば良いのだから、改めて資料や昔の書籍を当たりましたが
何分、相手はあのノイマンのWV-IIです。そう簡単には資料が存在しません

もちろん、根性で探しましたよ。今の若い人には理解されないでしょうがやっぱり人間の最後の力は「気合」「根性」しかありません


電源のユニットと音声回路は30cmほど離れて設置します
これには困りましたね、ケーブルの長さを決めるのが難しいのと、最終的にまとめてハーネスで縛るのですがその為にごく初期の段階からケーブル類の走る道筋やコーナーで曲げる時の「インコース」を行くか「アウトコース」にするかを決めておかなければいけません

当然、何回もやり直しになりました
これを製造した当時はすべての青写真が出来てから「せーの」で組み立てたのでしょうね

結局自分も全体の実体配線図に近い物を書き上げてからの制作になりました・・・急がば回れは金言です


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まずはヒーターから貼り始めます、もう何年も前の写真ですが



障害 その3

写真の通り部品を付けるシャーシは深い船底の形状です
真空管のソケットにリードをハンダ付けするスペースが取れません

Neumannはどうやって組み込んだのだろう?

陶芸教室で古の名器を習って作る時に、当時の人はどんな手順で、どんな道具で作ったのだろう?と言うアナリーゼがとても大切でした
アンプでも同じことですが、こいつは想像もつきません。

外で配線を済ませてからユニットごと組み込んだのか?・・・ソケットが上付けの為不可能
こんな失敗を繰り返しました


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この内壁にCRの付いたボードを貼り付けますが、そうしたら「当然」ソケットが隠れてリードのハンダ付けができません
ハテ、どうしたものか



完成

3年が経ちました
電解コンデンサーは全数交換しましたが、抵抗やフィルムコンデンサーなどは全て元の部品を活かしました

恐らく1957年頃の製造ですから65年前の部品ですがNeumannの社運をかけて製造したアンプですからピクリともしない精度と寿命を与えられております

感動以外の言葉はありません


調整

NeumannのAM32カッティング・システムに付属のアンプラックVG-Iの中に検聴用プレイバックEQとしてWV-IIはセットされて居ます

EQカーヴの切り替えは 「RIAA」「DIN」の2種類です
勝手にステレオ・レコードのEQの種類を増やす不届き者が見えますがAM32システムで切ったレコードはこの2つだけです

このEQカーブは可変式(極々微量な変化幅、基本設計がすごい)で校正可能になっており、慎重に調整した結果は低域で0.3dB、高域で0.2dBの誤差に収めることができました
家庭用としてはふざけた程のオーヴァースペックですが、その様に作られているので特に面倒くさい事もなくここまでの収差を達成できます

また、S/N比は冗談抜きで最新のトランジスタアンプに近いだけのものがあります

カッティング・システムの備品ともなれば「そうなのかなあ」とも思いますが、65年前に当時の真空管と部品で達成したのですから、製造の者はアンプの建て付けの本当の深淵部まで理解して居たのでしょうね。現代の最新の技術を持ってしても手も足も出ない完成度と申せましょう


いつもの通り我が家では測定の結果を持って完成といたしました、一音たりとも音を出して居ません

プレーヤーもパワーアンプもスピーカーも部屋も違う環境で音を出して何になるのか?
それが分かるまでには耳から血が出るまで聴き込まなければいけないのかもしれませんが、私は到底そこまでは・・・
ただの面倒くさがりですwww



音を聴きました


Tさんのお宅にはシリアル#150番台のWV-IIが既にありますので、図らずも2台の音の差を見せつけられる事になります

EMT 930 TSD-15
WV-II
Western 118
Lansing 415
Lansing 287
Westrex LondonのC/O

英Colombia SAX-2236-7 アッカーマン 「こうもり」がかかりました

・・・・・・・・・・

はあ・・・・

レコード再生の、遠くの何処かにある、何らかのハードルとか閾値を乗り越えた様な印象を持ちました

Tさんと顔を見合わせて最初は言葉が出ませんでしたね



その後、お昼にしようと美味しいステーキをご馳走になりました

食後にTさんが最近購入した素晴らしいオリジナルLPをたっぷり聞かせて戴きましたが、その凄さに、WV-IIがいい音して舞い上がっていた私のご陽気な気分はすっかりすっ飛びました


あの様なコレクションはお金があるから手に入る様なものではなく、ビックリはするけど羨ましいとか欲しいとかの感情を超越するものです

以前にKさんのライカ・コレクションを拝見した時も同じ気持ちになりました


・・・そうですねえ

渋谷の元の東急の裏から大好きな鍋島焼を拝見しに戸栗美術館を目指して松濤(江戸時代は鍋島藩の下屋敷だったそう)の街へ上がって行くと、どちらの会社の建物だろうと見上げたら個人さんの表札が出て居たときの様な気分と申せばお分かり頂けるでしょうか?





世界が違い過ぎて、自然と微笑みが出ます・・・













 
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ビッグりしたな〜モー ターいへん

昨年、長野市を騒がせたニュースがありました

個人のカーディーラーで、支払いを済ませたのに十数台の車が未納のまま代表者が夜逃げした。というのです
このニュースを見た時、中古車のことだと思っていました、だって新車ならメーカー直営店で買うでしょって

実際は直営店より(300万円の車で)10万円ほど安く買えるので評判を呼び業績を伸ばして来ましたが、コロナなどの影響で注文が減り経営に行き詰まったようです



普段ならあまり気にも留めないニュースですが、その少し前に以下の様な事があったので良く記憶に残っています



高齢の父親が身体を壊し免許も返納したし、父名義の車も古いので今後どうしましょう。と家族会議になった

将来車椅子になった時に病院とか施設への送迎で乗り降りの楽そうな車を購入しましょうと結論が出て、そうと決まれば前の車の車検切れまで約1ヶ月で新しい車を探さなければいけません

家からすぐの国道に出て、南に車を走らすと何件もカーディーラーや買取店、販売店が並んでいます


最初に入ったのは買取系の販売店でしたが今をときめくビッグモーターだったのか、競業他社だったかは覚えていません


上記した事情を話し「こちらが1軒目だから、色々様子を教えて欲しい」と伝えました

目的の車はあるか?と聞かれたので、PC画面から良さげなのを3つほどピックアップして見積もりをお願いしたのです

すると、事務所の奥へ入って見積書を1枚作ってきました

渡されて、内容も見る間も無く
「これに決めましょう、これは良い車です、今日決めて貰えば値引きを頑張ります・・・」



「いや、初日の1軒目で実車も一台も見ていないし車種も決まっていないので今日は何も決めれません」(人の話聞いてへんのかい)
「見積書ありがとうございました。また検討してきます」

早々に店を出ましたが
この一店ですっかり中古車屋に見切りをつけた私は、その直後トヨタ直営中古車から購入したのですが、ハッキリ言って諸経費は買取系の販売店の半額以下でした

メーカー系中古は高いという先入観がありました
けれど、実際は全く異なっていました



こうした経験があったので今回のビッグモーターの騒動も特段驚くこともありませんでしたが

「車大好き」「車のことなら少々は」と思う人の心の隙を突くような事件だったので憤りを感じますね





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R8 Gordini

この世で唯一 欲しい車です
でも、レストアの費用・その後の維持費を考えると到底手に負える代物では無い



車でもオーディオでも「欲しい!欲しい!!」で物を買った時はロクでも無い結果になる確率が非常に高いようです

逆に
今はこれ全く必要ないんだけれど、これほど状態の良い個体は死ぬまでにお目に掛かれないだろうからとりあえず買っておこうかしら

こんな気持ちで買った物ほど、長く楽しませてもらっているようです


サラリーマン時代には「財形貯金」をオーディオ貯金として
目の前に突然と必要なものが現れた時、躊躇なく買う事が出来る様に準備していました

その代わり、グレードアップとか新製品が出たから入れ替えとかの欲求は皆無だったのと
状態の良く無いものは平気で見送るのでトータルするとそれほどお金を使わずにこれたと思います




最近は終活で手放す方が見えた時に、一も二もなくお譲り頂いた物がいくつかありました

Lowther TP-1 Decca Decola  301シルバー 莫大な枚数のオリジナルLP盤など

どれも、買わなくたって我が家の体制に影響の無いものですからどうしても欲しい物ではありません
しかし、状態の良い希少品は個体保護のために私の所できちんとメンテナンスして管理しておくべきとの使命感に近いかも知れません

たまたま良い縁があったから我が家に来てもらったのです


もし、ルノーR8 ゴルディー二が安く出たらどうしましょう・・・買わないでしょうね、車貯金していないからね





















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この世に沢山のスピーカーがある理由とは?

例えば、ビートルズの全てのレコードの1音すら聞き逃すまじと頑張っている人

ブルーノートのモノラル盤をコンプリートしようとしている人



言うまでも無く、この様な方々はスピーカーを複数台持つ「必要性」は少ないでしょうが
その中でも、「モノラル用」「ステレオ用」と使い分ける人もいるでしょうし、リビングと書斎にも・・・など
いく種類かのスピーカーを複数台使う人もいるでしょう

ただし、私の様に100年の時間と各国の民族色の強い音楽を嗜好する人間とは、同じ3台のスピーカーを所有していてもその意味合いが大きく異なるのは自明です



この話題を考えるとき、いつも思い出す事は、オーディオを始めたばかりの頃師匠から

「スピーカー1台、アンプ1台でオーディオをやった気分になってるんじゃねえぞ」

もう、40年も前に聞いた言葉で、その間に自分は様々な捉え方をした様に思います


・世の中には星の数ほどスピーカーがあり、異なる個性がある事を知らないと自分の立ち位置を測りようが無い

・1台だけのスピーカーで「音が悪い」だの「音質向上」だの沼にハマっていては抜け出せない

・師匠はオーディオ店店主だから、沢山買って欲しかったwww  私には一度も営業をされた事はなかったけどね

・他にも沢山考えたが、
結局のところは伊藤喜多男さんも言っていた「一芸に秀でた者では社会で使い物にならない」

「多芸の一芸が重要なんだ」との感触に一番近いだろうか


たかだか、レコードで音楽を聞くに当たって

部屋の内装、調度、照明、果ては時計とかカメラ、勿論服装に渡るまで沢山のことを教えてもらったが、人間の幅を広げるのとオーディオ世界の見聞を広げよ。とは同じ目的のための避けては通れぬ「道」なのかと


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オーディオを聞きにお邪魔したら、こんな家から
こんな紳士が「やあ、いらっしゃい」って出てきたら・・・音なんか聞く前に惚れちゃいます
師匠に出会って以来、中々お目にかかれませんが

次郎さんも武相荘でオーディオやっててくれたらなあ・・・



さて、改めて記事にしてみて、昔の事など考える時間を持てました

まず、この世の中には何故これほどにも多くのスピーカーがあるのでしょう?
ビジネスとしてはあまり「旨味」が少なそうなのにねえ、何ででしょうか?

本当に唯一無二の「音の良い」スピーカー(アンプでも何でも)があるなら
この世にスピーカーは1つでいいんじゃね?って思いません?   せめて各価格帯に1機種づつで




この辺りにヒントがありそうです・・・オーディオを始めたばかりの人たちが

「どのスピーカーが音が良いですか?」

「あのスピーカーより、こちらのスピーカーの方が音が良い」

と、言っているのをよく耳にします
その意味ではオーディオ雑誌が新商品に「特選」だの「推薦」だのシールを付けるのは、初心者向けなのが分かりますね

「俺の好きな音がいい音」って段階の人にはこの世のスピーカーが10種類くらいしか無いことになっていて、自分のスピーカーはその中で唯一の最高にマッチした「運命のスピーカー」だって言い張っています

だけども、
他の家で自分家より高いレヴェルの音に出会うと「運命のスピーカー」をすぐに売り払って買い換えます


結局、
自分は何を聞きたいのか?を、まだ分かっていないから「俺が好きなんだから良い」にしか拠り所がないのです。

聞くべき音楽が分かっているなら、悩むことも「試聴」する事もなく買うべきスピーカーはハッキリするものです
音楽が「これを買え」って教えてくれますからね


ちゃんと「出会った」人は、何百件のマニアの家に訪問しても、どこで美音を聞いても微動だにせず
何十年も自分の分身のごとく同じスピーカーを使い続けるものです

これこそが、スピーカー1台の本当の姿ですけど、
そこにたどり着くには何台も使った経験の末でしょう、人生の最後にたどり着くべき「フナ」=替えの効かないスピーカーと出会った人は幸せです



ここまで、読んでいただいた方は、私の言いたい事はもうお分かりですよね

・美空ひばりのSP時代の歌を好きな人と

・1958年録音のオペラを沢山聞く私と

・イザベル・ファウストの最新録音のDSDデータを楽しみたい人と


この3人の思い浮かべる「良い音」は全く違う

よって、3人の求める「良いスピーカー」も全く異なる



と、いう事は

自分以外の人間と「音について」話をする時には

自分が「どんな音楽世界の住人」なのかを最初に宣言しておかなければ、オーディオ製品のブランド名や型番を振りかざして叫んでみても何の意味もないんだよね



ちなみに・・・

前回の冒頭で

「スピーカーの守備範囲云々で、スピーカーは1台あればいい」と口角に泡を飛ばしていた御仁のお宅には

先日、3台目のスピーカーにアンプ、プレーヤーのセットを納品してきました    ちゃんちゃん






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スピーカーは何セット必要か?

人間の脳の働きの不思議を感じた出来事でした


あるオーディオ好きの方と話をしていました

2人とも、多くのレコードを所有し多様なレコードを楽しみたいと語っているのに、思考の、発言のベクトルは180度正反対の向きから考えていたからです

大変に興味深いことでしたので、まとめて記事にしてみたいと思います



曰く
「僕はkaorin君と違って、多くの種類のレコードを聞きたいからスピーカーの守備範囲を狭くしたく無いんだ」


それに答えて私は
スピーカーの守備範囲(?そんなものがあるなら)それは使用者が狭くしたり広くするものではなくて、人間の創造物たるスピーカーは残念ながら完全な物は存在せず一つひとつ異なる音の個性があり、他方レコードに入っている録音にも全て異なる個性があるので相性という現象が存在するのです

よって、まことに遺憾ながら録音の時代や製作国が異なる多数のレコードを楽しみたいと欲するならば、大掴みに捉えても複数のスピーカーを用意せざるを得ません




ここで、もう少し注釈を添えるなら・・・

例えば、オーケストラ用とかピアノ用、ヴォーカル用、Jazz用などのスピーカーの分け方は全く同意しませんし
その日の気分で変えるなんて、デートに着て行くワンピースを選ぶ少女じゃ無いんだから、そんなわきゃありません


我が家で一番大規模なklangfilmのシステムの一番得意なジャンルは弦楽四重奏とピアノ、ギターです

もちろんオペラもこれで聞きますし、我が家の10枚に満たないJazzもこれで私はかけます・・まあどのスピーカーでJazzも乃木坂も聞くんですよ・・オーディオ的に何も求めていないのでどれでも一緒なんです

ただし、Jazzを専門に聞いているmomoさんが来ると

「クラシック聴いている人の低音だなあ」と怒られ?wwwますが、自分的にはむしろ褒め言葉を頂いたと喜んでいます

Jazz録音のコントラバスやチェロが膨らんでマズい音になることは、残響2秒に迫るウィーンの黄金のホールで楽器から放出された音の余韻が天上から降るように録音されたレコードが「それらしく聞こえるね」と言う褒め言葉になるのです


これは元々のスピーカーの個性であって私が決めた訳でも、そうなる様に「使いこなし(爆)」た訳でもねーんですよ

どのレコードをどのスピーカーでかけるか?は

レコードが「こうしてくれ」と要求して来ますから、その要求に耳を傾けて自分の甲斐性の範囲で出来るだけ「らしく」鳴ってくれる様な環境を用意するのが私の仕事です


レコードを買った時に各スピーカーでひと通り聴いてみます
何秒で分かりますよ、活き活きと歌い始める組み合わせと、妙に居心地の悪そうな相手がいる事はね


レコードとスピーカーの相性なんてのは彼らが勝手に決めるものだから、スピーカーの守備範囲なんて概念はそもそも私には無いんですよ





ここまでで幾ばくかの方に賛同頂けたと思います

次に少し具体的にどのような棲み分けをしているかをご案内しましょう


まず最初にお伝えする事は

我が家には、1910年頃にプレスされたSP盤から、1940年台のモノラルLP盤 1960年頃のステレオLP盤
1980年頃よりデジタルになって2000年以降の最近のCD盤、DSDのデータまで110年間の音源があります


まず、確認しますがこれらの異なるフォーマットのメディアは1台のオーディオ・プレーヤーで再生できるでしょうか?

もちろん「否」ですね

形状や方式は勿論、制作の時代背景や社会的な意義、作り手の思いは時代の移り変わりとともに大きく異なります



では、次の問いです
1910年のSP盤もデジタル化され、1950年のモノラルLPもCDやデータで入手できる時代になりました

録音の状態はご想像の通り古めかしい物で、音の印象も現代録音とは随分と異なります
F特だけとってもSP時代は100Hz-4000Hz程度ですし、初期のLPも60Hz-12000Hzがせいぜいです


こうした旧録音と、2023年にDSD512で録音された音源を、音色はもちろんですが、音楽の持つ世界観や背景も重要視して再生したいと願う際に同一のスピーカーで鳴らすのを良い選択だと思いますか?


もう少し直球に考えて

25Hz-50000Hzまで再生できる=その為に85dBまで能率を落とした最新型スピーカーでリ・マスタリングされたSP時代やモノラルLP時代の音源は上手に再生できるのでしょうか?

残念ながら音楽から受けるエネルギー感は元のソースのせいぜい半分程度に減じるでしょうね

スピーカーのエネルギー変換効率は能率100dB/m.wのスピーカーで7%弱だそうです
能率の低い=音響変換率が2%程度のスピーカーはアンプのエネルギーの多くが熱に変換されるので、大きなパワーを入れていけば音量は取れますが「力で押さえ込んで鳴らす感じ」となり「打てば響く」様には鳴ってくれません


例えて言うならば、高速道路を同じ100km/hで走るとき、ヒルクライムのカーブを下るとき

マツダのロードスターやMGのライトウエイト・スポーツで走るのと

レンジ・ローバーで走るのとでは自ずと乗り心地が変わるのは当たり前のことです



以下は、本当によく聞く意見です

「最新のスピーカーの方が性能が上がっているので、古いレコードもより良い音で聞ける」って言う人がたくさんいました

想像でなしに耳で聞けば1発でわかると思うんだけどなあ・・・中々そうは行かないのが現実の世の中なんですよねえ


ロードスターのドライブフィールとレンジ・ローバーのそれの違いが判らないと仰る人もいるでしょうから、そう言う人はどちらでも一緒で良いとは思いますが

私は絶対嫌ですよ



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クリス・コナーのCD盤を蓄音器でかける!の図です

もちろん、こんなことしても再生できません。逆もまた然りで、古いメディアは最新の機械でかかりません
馬鹿なことをして!って笑っておられるでしょうね




逆もまた然りで

最新録音のハイレゾ・データを1950年代の電蓄で再生しても、録音の魅力を最大限に表現する事はできません
こちらは多くの方が「その通り」と言っています

ノイズ・フロアが低く、微小信号の方向にDレンジの広大な音源こそ
先ほど取り上げた低能率で広帯域な最新スピーカーによってベストマッチな音響を発生できるのです

当たり前ですよね?



続きます










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オーディオに測定は必要なの?

本当は、この話題は10の連載でも足りないくらいなのですが、そんなんじゃ幾ら何でもブログ向きでは無いので直線的にポイントだけ書いておこうと思います



まず、自分の立場を表明


所有測定器

・ミリバル&発信器  測定というよりは不具合の発見に使う方が頻度は高いです

・オシロ  あまり出番は無いが、最後に頼りになる 守護神

・LCRメーター 命の次の次の次くらいに大事

・ハンディのFFT(周波数解析器)部屋の伝搬特性・残響特性・ユニットの位相他を測ります

・欧州の球が多いので、チューブテスターはFUNKEのW-19一択です




やる事

・周波数特性
フォノ・EQ始めアンプをメンテしたり製作するのに測らなければ出来ません

・古いアンプをいじる時にはノイズとの戦いがありますのでミリバルは神です
ノイズ退治は mVオーダーなので耳で聴いても何の役にも立ちません

・自分の家ではもうしませんが、他所へ行くとスピーカーの位置決めにFFTを使います
20年来の苦悩も15分で解決できる場合もあります・・・滅多にそんなに上手くいかないけど

他 


どんな思いで?

私が測定器を使い始めたのは25年くらい前からです

家を建てて引っ越してきてから借り家の時に聞こえた神の如き音が霧散しました、使っている機械は何も違わないのに

それから数年は人生で一番無駄な時間と無駄なお金を使いました

・・・不要な物を買った事は何をしても勉強なので後悔はしていませんが、間違った眼で見切って大切な物を売ってしまった事に百万の後悔と懺悔の気持ちです



一念発起して「再現性」=いつでもオーディオの状態を把握し、思い通りの状態に持って行く=マネジメントする取っ掛かりとして測定を導入しました



自分ルール


そんな事を20年以上続けていたら、幾つか考えがまとまってきました

・オーディオで何かを変えた時、耳で聴いて良い音と思っても、理屈が違うと思った時は不採用

周りの環境や自分の耳(嗜好)なんて5年もすれば変わるでしょ? でも宇宙の法則は125億年変わらないから


ここで言う「理屈」は「測定の結果」ではありません

今現在、人類が手にしている測定方法なんてのは音の現象の何%すら正しく表現できませんから、測定結果=音評価とはなりません


では、何を信じるているのかというと


・オーディオで揺るがなく信じている事

オームの法則
フレミングの法則
ニュートンのエネルギー保存の法則

この3つがあればオーディオで起きている事の90%は説明できる
残りの10%は感性の世界なので、各々でお好きな様にどうぞ・・・と

しかし、現実には大幹の90%の部分を感性にだけ頼っているのでは無いか?・・・測定を始めた理由にまた戻ります




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有名な長野県高山村の「水中のしだれさくら」
この桜は寛保2年の記録がありますので250年くらい経っています

幹がしっかりしているのでここまで長生きできるのですね
枝葉末節に囚われてはいけないと教えてくれます




・まとめ


オーディオ機器の測定とは人間ドックとか健康診断だと思いますよ

内臓脂肪とか血糖値とかレントゲンとか胃カメラとか
これらは人の体の基本的な健康状態を数字や映像に置き換えた物です・・・測定結果ね

この値がどうであろうと

その人が、顔が綺麗とか、優しくていい人とか「声が魅力的」とかまでは分かりません。
キレイとか優しいと思うのは、受け手の感性の問題でございましょう?

ガッキーと北川景子と白石麻衣と、人によって「好き」が違うのは感性で評価するからです。音の好みも同じです



以下は、以前も記事にしていますが

マランツ #7プリを使っていた方が、低音が薄い気がするのでアンプを測定をしてくれと持ち込まれました

当然、オリジナルのカップリングコンデンサーは全数DC漏れを起こしていて、次段のグリッドにしこたま漏れている状態でした


コンデンサーを変えると音が変わるからそのままで良い。と言って持ち帰りました

アンプとしては、ゲインは取れない、低音はでない、ノイズは乗るんでもう廃棄寸前の瀕死の状態なんです


実はその後、パワーアンプを1度、スピーカーを2度変えたところまでは聞きましたがそれ以降の事は存じません



何度も同じ事書きますが
パーツを変えて音の変化を楽しむのが悪いって言ってるんじゃないんです。ただその変化は環境や状態によっては限定的であったりするので
先ずは根っ子と幹の部分を太く健康にしてから楽しめば、より大きな喜びになる・大輪の花が咲くと思うのです



二十年前の自分と同じ事をしているのでなんとかしてあげたかったのですが、人は心で動く生き物なので仕方のないことなのかも知れません。



大病をして体が悪いのも顧みず(検査受けないから知らず、あるいは無視して)に

明日はネイルへ行って爪をキレイにして来ようかしら!

なんて人が居たら 「ネイルより、病院行きな」って言うでしょう
体はともかくオーディオなら修理できるのだから





オーディオをいくら測定しても、その結果で「音の良し悪し」なんて到底分からないし、音が良くなるわけでもないんですよ。

しかし、測定結果に不具合があるならば「現在、悪い音が出ている」事だけは間違いなく分かります。



健全な精神は健康な肉体にのみ宿る


良い音は正しい機械のみが発する


私が測定を続けるのは、簡単な理由です







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