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音楽ファンの為のステレオ  (英国編)

クラシックを中心に聞いている者にとっては、英国製のオーディオも捨てがたい魅力がありますね。

これまでの経験を要約すると、英国の機械はより俯瞰した描写が得意で、演奏会場全体を縮尺模型のように見下ろす感覚に秀でていると思います。
対して、米国の機械は一般に楽器の音を忠実に再現することに長けていると考えています。
演奏者と同じ床に座っていると言い換えても良いでしょう。


さて、英国の装置ほんの一例ですが。

スピーカー  Lowther アクースタMk-1  まだまだ中価格で素晴らしい物が沢山あり。

アンプセット QUAD 22+Ⅱ型  またはLeak ポイントワンプリ+Stereo20

プレーヤー Garrard401  Decca Mk-1アームとMk-1カートリッジ

以上のセットは全て揃って初めて英国の音を具現できるものとしています。
もし、あなたが英国のオーディオを好まれてクラシックを楽しみたいと考えているとしたら、これらのセットは限りない喜びを与えてくれることでしょう。



ここで唯一つ、日本のオーディオマニアが40年以上に渡って犯してきた間違いを私は指摘することができます。

その発端は、五味康祐さんの高名な著書に端を発しています。
その書にはこんなエピソードで五味さんのオリジナルTannoyとの馴れ初めが記されています。

「貴社のTannoyで十全なステレオ効果を得るには如何な装置を用いれば良いか?」と氏はTannoy社に尋ねました。
Tannoy社は答えて曰く
「Deccaの針、SMEのアーム、GarrardとQUAD(22+Ⅱ型)のアンプを用意して待て」と。

これらの機械を用意してTannoyの到着を待ち、これまでに経験したことのない音響の世界に驚愕したと氏はTannoyとの出会いを綴っています。
しかし、いつの間にかアンプは米国製に変わり、針もEMTに変わりました。

これはどうしたことでしょう?
私なりに推測するに、やはり、「より明確な音で聴きたかったのでしょう」
上述したように英国製の装置の醍醐味は、ホールごと俯瞰して聴けるような臨場感にあります。

このことは、反面楽器一つ一つの音色はブレンドされた状態でハーモニーの中に存在します。
この全体描写こそが英国オーディオの最大の美点であり、他国の機械に求め得ない特徴だろうと考えています。

その後、日本ではTannoyはクラシックを中心としたオーディオマニアの間で絶対的な名声を獲得しますが、その使われ方は、極めて日本的であったように感じています。異文化の伝統を受け入れて日本的なアレンジを加える能力ですね。

和菓子のあんこを、パンに入れて「アンパン」を創作する素晴らしいジャパンクリエイトです。


繰り返しになりますが、何かを得るには別の何かを手放すことにほかなりません。
英国の音響機器を使いながら、その長所をみすみす捨ててまで明快な鳴らし方にすることはないだろうに。と、私などはいつも思ってしまいます。
しかし、ヨーロッパの伝統的な文化の具現化は戦後の日本にはまだ遠く。はっきりとした、解りやすいソノリティへと嗜好が向かったこともまた、無理からぬこととは思います。


もちろん、オーディオはパーソナルな趣味であり、如何な組み合わせで聴かれてもご本人の満足を満たすことが大切ですが。
もし、英国のスピーカーをお使いで上のアンプを試したことがない方は、是非一度聞いてみることをお勧めします。



そこで得られる音は、ハッキリともクッキリとも聞き取れません。
しかし、数世紀に渡って、ヨーロッパの根底を流れてきた古く、底光りする燻し銀のようなクラシック音楽の文化自体の意味するところを、もう一度考え直させるいい機会になるのではないでしょうか。


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コメント
こんばんは。昨年は、お邪魔させていただきありがとうございました。

イギリスの音、日本のマニアが犯してきた間違い、、自分も何か違うのではないか?とずっと思ってきました。

デコラで聴くとデッカのカートリッジはすばらしいが、単独で聴くと、、、うるさくてとても、という話を良く聞きます。タンノイのスピーカーも、しっとりと鳴らすのが難しく、使いこなすにはやはり使う人の人間性が、などと五味さんの言葉が?使われたりしてきました。また逆に、タンノイはふやけたような音で、聞いていられないという方も、、、

イギリスの音、Kaorinさんのイメージとはちょっと違うのですが、自分の今のイメージとして、HIFI時代のタンノイ、EMI、ローサー、、デコラなど、、また昔の骨董時代のHMV、MARCONI、ferranti、などに共通して、イギリスはとても明確な音を持っているのではないか、、と感じています。
もちろんハーモニー、音場の再生なども秀でいて、陰影も出せるけれど、基本的にとてもクリヤーな音を持っているようだ、と感じています。

オートグラフなどもそうですが、どうも、イギリスの機材は、、本来の魅力の出る的確な使われ方をずっとされてこなかったのでは、、と自分は強く感じています。
(えらそうなこと書いてしまい、すみません。)




2010/02/07(日) 05:58 | URL | marco #MZf6kU0Y[ 編集]
Marcoさん、こんばんはご無沙汰しています。

いいですよお、同じ音を聞いても個々の捉え方と、言葉で表現する時に別の単語を選ぶのはオーディオの醍醐味だと思いますから。

皆が素直に感じる事を表現しあって議論して初めて、共通の認識が生まれるのだと思います。でも日本では、なにかカリスマの廻りでヨイショする的な構図が多くて、議論にならず右へならえなのが変じゃないですかって書きたかったんです。

デコラ(st)も一時使っていましたが、QUADのアンプと同じ(僕流には)会場を俯瞰する音の感じでした。
なんとなれば、僕の印象のあれこれはDeccaの針と英国製プリ=EQのコンビネーションがあの音を形作っているのかなと当たりを付けています。
DeccaまたはEMIのバリレラ針、QUADやLeak、デコラのプリ、以前に写真を載せたLowtherのプリも含めて全て一貫した英国の音になりますね。(回路はどれもほぼ一緒ですから当たり前ですが)
2010/02/08(月) 00:38 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
marcoさん、kaorin27さん、こんばんは。

イギリスの音に対するお二人のご意見、興味深く拝見しました。

英国のスピーカーの音は、ボクには2種類あるような気がします。
今使っているGECアルミコーンや、その前に使っていたQUAD ESLは、おとなしい高音で、ステレオの場合、音像がスピーカの後ろに展開する「俯瞰型」タイプです。
一方、marcoさんもお持ちのHMV LS7は、中高音の張り出したくっきりした音ですね。
昔聴いたワーフェデールやグッドマンのダブルコーンも、このタイプでした。

ボクは、LP期以降の録音(専らCDですが)は前者で聴いていますが、SPレコードやその復刻CDを聴くときは、後者がいいと思っています。
2010/02/08(月) 20:14 | URL | ibotarow #iaNYWVsc[ 編集]
ibotrowさん、こんばんは。

お三方目のご意見ありがとうございます。
ibotarowさんのように数々の英国製機材をお使いの方にご意見を頂くと、また一段、このテーマに奥行きが出来て嬉しいなと思います。

自分のホームグラウンドがどこにあるか(一番長く親しんだ機材)で同じ音を聴いても感想が異なったりすることもあるでしょうね。それは、とっても貴重なことと思います。
エベレストも北壁からでも南壁からでも目指すのは頂上ですものね。

そうですか、CD使うとやっぱり印象は変わりますでしょうね。記事では英国製のRIAA-EQと針との込みの音で書いてしまったので、一方の壁の情景だけでしたね。反省。
また、機会があったら続編を書きたいと思います。
多くの英国のSPを使っている方への、同国製アンプを一度使って見られては?というご提案でしたので今回はご容赦をお願い致します。
2010/02/08(月) 22:36 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
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