スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


我が家のFMチューナーが決まった話

このブログの過去記事を振り返ってみると、2015年の2月にFM放送の受信を目指して行動を始めたとの記事を書いていた

長いブランク明けであって昨今のFM放送や受信の事情が全くわからなく、まるっきりの初心者がヨチヨチ歩きを始めたという状態のスタートだった

オークションとハードオフで3000円程度のチューナーを買い
FM中継局のアンテナは自宅から目視できる場所なので、すぐに入るだろうと4素子のアンテナを買って置いてみたがノイズが多く実用にならない。

参ったなあ、
スタートした時点ではアマく考えてましたが、何事も始める前に考えるほどには簡単にいかないものです



次に打った手は・・・忘れもしません。ちょうど今頃の時期でした、午前中には時ならぬ雪が降った午後のこと
心ばかりの命綱を腹に巻いて、緊褌一番 決死の覚悟で屋根の上に8素子アンテナの設置を完了しました
これで問題なく受かるだろうと聴き始めましたが、なんとなく入力の弱さを感じて、ブースターを買ってみました

おやや・・・まだ足りないか? と高額だったけれど40dBのブースターをさらに奮発した!!!
どうやらここで、アンテナ入力の確保はできたようだがアンテナ1本とブースター1台は無駄になって空き部屋の隅に寂しそうに転がっている

オーディオをやっていると時々「俺は一切の無駄なく一直線で最高の音を出す!」なんて力んでいる人に出会いますが、まずそんな結果にはお目にかかっていませんしそれどころか無駄のない趣味なんてなんの喜びもないのだから長続きするわけもないです



所詮FMなんてメインの音源じゃないし可能な限り出費を抑えて。との目論見で始めたFM受信騒動ですが

その後
Kenwood 1台 アキュフェーズ 2台 SANSUIの同じ機種ををもう2台と買いました
台数が増えた大きな理由は「音質」なんかのためではなく、故障して使用不能になったからでした

そこで「基準信号発信器=ステレオ対応」や「周波数カウンター」まで買い込んでメンテを行うようになりましたが
国産民生機の脆弱さに呆れて、国産機に見切りをつけたかった

PICT4759.jpg

海外製FMチューナーを使用する場合、アンテナコネクターもわけのわからない形になる
その上、大陸と英国ではオスメスが異なるようだ、安くもない変換器をいくつも買う必要がある

しかし、欧州で生産されたFMチューナーはバンド帯が異なるため日本では使用できません
昔のバリコン式の時代は共振点を変更して使えたようですが、シンセサイザー式ではどうにもならないと言われていました

その頃にネット上ではデジタル処理して出力できるPGFチューナーなるものが評判になり、どのみち録音はデジタルなのだからいっそのことこのチューナーを導入してはどうかと、開発者の林さんに連絡を取り教えを請いました

しかし丁度新設計の基盤を準備中のタイミングなのでもう少し待てますか?とのことでしたがその後の進展はなく話は立ち消えになっておりました


本当にもうこうなったら崖っぷちです
一から勉強をして自分で「周波数シフター=放送される電波の周波数をずらして欧州のチューナーで受信できるようにするもの」を作るしか、我がFM受信システムを完成させる道がありません

かく云う私はよく電波とか言われますが(笑)電波関係の工学は全くのど素人
右も左も分からない、イロハから勉強してなんとか実用となる周波数シフターを作ることができました
それを使ってやっと念願だったREVOXのチューナーを使える環境を手にしたのです

これまで痛い目にあった中古品チューナー使用時の不具合に対応して
・できるだけ後期に、つまり最近に作られたもの
・業務用のSTUDERブランドで発売された実績のあるもの
この2点を目指して新しいチューナーを導入しました

PICT4754.jpg


早速、音を聞いてみました
全く まったくもってお話になりませんでした
これまでのチューナーが受信機の機械の音だとすると、これはもっと生々しい血の通った音楽が創生されるようです
何が違うのでしょう?
上述した通り私は受信機に関してはズブのど素人なので理屈は想像もつきませんしそんなことには何の興味もありませんが、何から何までこれまで使っていたチューナーとは次元の違う音楽再生であることは明確でした

これで随分と楽しみましたが、一つだけ困っていることがあります

CDーRはメディアの入手やすさ、コスト、圧倒的な互換性を鑑みると理想的な録音方式ではありますが
唯一、録音時間が短いのが弱点です  78分しか持ちませんのでオペラをはじめとする長手の楽曲では途切れた録音になります

昨年のバイロイトのリングはヤノフスキーの熱演だっただけに惜しいことをしました

そこで、システムの再構築の検討を始めた頃、とある小さな会社からPGFデジタルチューナーの完成セットが販売されていると云う情報が入りました


また一方では
QUAD Lowtherシステムの構築に伴い(必要に応じてではなく多分に調子に乗って)QUADのモノラル時代のFMチューナーまで買ってしまいました

PICT4756.jpg

巨大なブースターのパワーでチューナーは何台繋げても余裕綽々です
そして、この1台でまた新たな衝撃を受けたのです

Klangfilmの大きなシステムに入れて「いい音だな」とはならないのかもしれません
しかし、QUAD&Lowtherの世界観の範疇でこれほど鮮烈なFMを聴けるとは想像もできませんでした
夜中にひっそりとした音量で聞く
ラジオ深夜便から流れるJAZZや懐メロが静かに壁に染み込まれていくようです

大音量だ、抜けだ、鮮度だと云う旗印だけではない、本質の根っこの部分でオーディオに何ができるのか?何を求めるのか?を考え直させられたと云う意味での衝撃でした

そして、これら2つの衝撃がその後の方向付けをよりはっきりさせていくのですが、長くなりましたので
次回に続きます








沢山のブログが集まるサイト「日本ブログ村」に参加しました。
130以上のオーディオブログが参加しています。ぜひご覧下さい。下のバナーがリンク先です。
にほんブログ村 PC家電ブログ ピュアオーディオへ
にほんブログ村














スポンサーサイト

20年ぶりのアンプ製作  PX-4シングル 1932年仕様

ひょんな偶然が重なって、AD-1のアンプを自分で組んだのは30代の前半でした
その後10年ほど活躍してくれましたが、Klangfilmの専用アンプが投入されたことによって使命を終えていました

それ以降は、メーカー製造のアンプをメンテナンスして使う機会ばかりでしたから長いことアンプ製作から離れていました

そんな私に
昨年の末から今年のかけてアンプ製作のご依頼が舞い込んできました

その方は、随分と以前にフィールドのオイロダインをお譲りして以来懇意にしていただいている好事家の方で
これまで300Bの91などを中心としたアメリカ製アンプで楽しんで来られましたが、ある時PX-4アンプの音に触れてから、欧州製直熱三極管の燻銀のような音質の魅力に目覚めてしまったとおっしゃるのです

周りにもアンプ製作を頼める方は沢山お見えのようですが、ご高齢であったり欧州管に対しては経験がないという事情があって、「じゃあ、お前に任す」と白羽の矢が立ちました

正式にご依頼をいただくに際して
過去の失敗を繰り返さないように、入念にお打ち合わせをいたしました

・回路は1932年ころ真空管が発表された当時の回路の採用を了解されたい。理由はそれ以外に選択肢がないので
(私の創意工夫は一切入れない、よって音が悪いという苦情も一切受け付けない(笑))
・部品選定に関しては一任いただくこと(可能な限りオールドの英国製、欧州製部品を使う)
・デザインはコンストラクションに関わるので基本的にはお任せ願うこと(細かいことはご希望に添います)
・パイロットランプと監視メータをつける(私はやんわり反対して、すぐ承諾)
・出力は200Ωで旧型オイロダインをダイレクトにつなぐ(特注するしかない)

回路は上の通り、知る得る限りでもっとも原典版に近い時代の古いものを採用しました
まだ、出力トランスが普及しておらず、カップリングディバイスがチョークとコンデンサーの時代の回路です!
当時の業界事情を鑑みれば当たり前なのですが、20年前に作ったTELEFUNKEN AD-1の推奨回路とは双子のように酷似しています

穴があくほど見慣れた方式ですので、回路図と部品リストの書き出しは瞬く間に終わりました
しかし、頭のひねりどころはここからです。部品配置こそがアンプ成功の全てと言っても過言ではありません
コンストラクションさえ決まれば九割がた完成したようなもの、あとの実装・配線なんて赤子の手を捻るようなものです

それからはコピー紙を何枚も携帯して、思いついたそばからアイディアを形にしてスケッチする日々が続きました
そこしずつ部品が揃ってきますから具体的な寸法も入りはじめます

PICT4748.jpg

5ヶ月から半年くらい過ぎた頃から、新しいアイディアが追加されることはなくなり
そろそろ腹を決めて製作にかかる頃合いかと思ったのが昨年の10月頃でした

自分はアンプを起こしたのは20年ぶりとか言っているのであまり偉そうなことは言える立場でないのはよくわかっているんですがこの時間がアンプ作りでは最も重要だと思います

ヤフオクなどに出品されるアンプを見ますと、この検討が不十分で見切り発車で組み立て始めたのではないかと思しきアンプが散見されます

音の嗜好は個人の問題なので使用者が満足するなら私が関知するところではありませんが、高圧を扱う真空管アンプにおいては安全性と長期にわたる安定性に対して懸念を感じ、傍目ながら気が気ではありません

自分自身が作ったアンプも含めてなので、文句を言われても構わないのですがそう言ったアンプはとても使う気にならないと思っている人間が作ったアンプの顛末記であります

PICT4615.jpg

銀紙が光っていけないんですが、発泡スチロールの板の上で部品を立てて検証中
自分としてはこの大きさ「320mmx200mm」で行きたかった、今見ても申し分のないコンストラクションです
中央の出力トランスはまだ代理のものです

その後、オーナー様のご希望で「350mmx220mm」のやや大きなシャーシに変更になりました

PICT4652_convert_20170320025339.jpg

部品を並べてみるとやっぱりサイズ的に少々ゆったりですねえ

その後も検討を繰り返し、最終的に組み上がったのがこちら

PICT4672.jpg
写真の整流管は動作確認の為にG2004を載せていますが、本番ではMullard FW4-500を奢って英国アンプの矜持を保ちました

その装着に反対した電流監視メーターは左側のオルタネイト・スイッチを押している間だけ照明がついて測定を開始する仕様にして、ちっちゃな抵抗を示しました


内部は

PICT4673.jpg

音声回路中の抵抗は全て英国製ヴィンテージ品です
・ソケット類は全部英国製
・コンデンサはドイツ製と英国製の混成部隊
・スイッチやヒューズソケット、ヒューズなどは米国製
・フックアップワイヤーは英国WESTREX(電源供給)と米国ベルデン(ヒーター回路)
後述の通り信号回路には出力管のRk(メタルグラッド型なのでそもそもリード線が存在しない)のプラス側3cm程しかワイヤーを使っていません
・スムーシング・チョークは最大限大きく(30H)とってコンデンサーは少しでも小さくしたいのですが、安全保障上電解コンデンサーは現代部品からの選択ということで16μFとしています。ここは6〜8μFでも十分でしょう


写真に撮ると苦労は映らないんですが(笑)
長い間考え抜いた甲斐があったというものです

全てのCR部品はそれ自身の持つリード線の範囲内で組まれていて、ワイヤーによる所謂「渡し」にしている箇所はありません
出力管のRkから入力端子のコールド側まで1本のグランドラインを渡して信号の通る順番に流す手法はいつもの通りです
アースポイントは1点です、これで歪みが最も減りノイズが少なくなりました。理想的ですね

回路図にするとこのアンプは結構複雑な回路構成なんですよ、部品が少ないんじゃないの?と見えるようならちょこっと自慢です

なお、電源周りのワイヤーを過剰に余らせて回しているように見えるかもしれませんが
本機は「チョークコイル」「出力トランス」が直出しのワイヤーなので、パツンパツンに切り詰めてしまうと後々のメンテナンスや部品交換の際に痛い目にあうので可能な範囲で長く残してフォーミングしています


出力は 3.5W (CP)
残留ノイズ 2.4mV(200Ω)以下
周波数特性 15 〜 30kHz (-1dB)

特注した出力トランスが1932年の常識では計り知れない高性能だもんで
直熱三極管の古典回路としては規格外の高性能アンプが出来上がりました
というのはこの回路は本当に優秀なもので、部品の裏付けさえあれば現代的な「高性能アンプ」も真っ青の音が出るんですよ

さて、組み上がったアンプの音のことなんかリキんで語っても仕方がありません

聴く人の感性により評価は変わりますし、音はスピーカーから出るものですから特定のスピーカーを使って聞いた音の印象を語ってもそれらのスピーカーを所有していない人にとっては「アンプの音」をイメージするのは難しいでしょう

その前提で一つだけこのアンプの特徴なのかな?と思ったのは

我が家の常用アンプに比べ、春の朝の空気の透明感のような清潔でクリアーな空気感を強く感じます
これはシングルアンプの特徴なのか?トランスか?回路かはわかりませんが
理屈で追うと、広い周波数応答と低歪みの賜物でしょうね

しかしながら、我が家ではもう何年も聴いたことのない空気感でしたので、自分でも少し取り組んで見たいなあ!などというフラチな考えが頭をもたげていることを告白しなければなりません







沢山のブログが集まるサイト「日本ブログ村」に参加しました。
130以上のオーディオブログが参加しています。ぜひご覧下さい。下のバナーがリンク先です。
にほんブログ村 PC家電ブログ ピュアオーディオへ
にほんブログ村







英国オーディオ旅行  二十年ぶりの民生機

我が家における英国式オーディオの火を消してはいかん!

と、この歳になって一念発起
20年ぶりくらいに民生機に取り組んでいます

まずは、入り口をご紹介しましょう

PICT4743.jpg

CollaroのターンテーブルにDecca Super arm と PRO arm の2本体制です
それぞれに専用の(針圧の適合という意味で)ヘッドを使います
下のセレクターボックスは、2本のアームとステレオ、モノラルの切り替えを行います

ターンテーブルは当然のこと、フローティングしないとお話にもなりません
そのために、写真にあるキャビネットの決められた隙間に納めるよう上下ともミリ単位のクリアランスで押し込んでいます
今回のラインを組む中で一番苦労した点です

置いてあるレコードはオワゾリール パーセルによるシェークスピア劇の音楽に登場いただきました
エンシェントを指揮したホグウットの名盤です、これほどふさわしい1枚もそうありますまい

PICT4744.jpg

ヘッドも少しずつ揃ってきました
まだいくつかはメンテナンスのために英国へ旅をしています

この中に一つ、中々の珍品が含まれています、そのあたりのお話は別途書きます



さて、今回もアンプはQUADにしました
これはもう腐れ縁のようなもので仕方ないですね

これ以外のメーカーの機械も随分とお世話になってきましたが、ことプリアンプに関してはQUADの方式が一番納得がいっているというだけの理由です
他社のアンプよりQUADが優れているとも思いませんし、もちろん劣っているとも思いません

PICT4728.jpg

プリはいつものようにモノラルのを2台使います
このQUAD QCIIというアンプは4回ほどモデルチェンジをしていまして、中身の回路や部品の定数が変わっているのでステレオで使うときには注意が必要です

今回の個体はセカンドバージョンで、入力数やテープアウトの端子などが一般に見られるモデルとは異なっています
この時代のもので状態の揃った2台を見つけるのは難しいと思います、運が良かったです

ただし、EQカーブは見る影もないくらいずれています
英国から別途マイカコンデンサーを送ってもらいカーブを合わせました

カーブがずれている状態で何人か音を聞いてもらっています
みなさん、首を傾げて怪訝そうな顔で無口のまま帰られました

次回聞かれたときにびっくりしてもらえると思います
こんな古いアンプは買ってきて繋いだだけでは何の役にも立たないんだ、という重要なことをお知らせできる又とない機会でしたので、不備を承知で調整前の音を出しました(我が家ではほとんど完成後にしか人様にはお聞かせしません)

憧れのヴィンテージアンプを買うだけならお金との相談で済みますが
良い音楽を聞くことができるかは全く別の次元で、現状のままでは不可能に近いことです

PICT4730.jpg

パワーアンプはお馴染みのQUAD Ⅱ型なんですが、売主は変なことを言っていました

曰く
「この個体は、再生産品である。電源を入れると一応音は出るが要修理品である。シャーシにはいくつか穴が開けられているので了解されたし」

こちらとしては、まあ音が出るんならトランスは逝っていないようだし、下手に部品が変えられていないのは願ったり叶ったりだからこれで良いか!と送ってもらいました


さて、パワーアンプのメンテナンスを開始しましたが、あらゆる点でおかしなことが起きます

1 Ⅱ型アンプで特徴的な豪華仕様のアクリル銘板の代わりに簡素なアルミ板の銘板がついています
しかもそこには、セントラルエレクトロニクスの注文により作られたとあります???

2 写真の通りシャーシの横腹に穴が空いています
寸法や形状から、ねじ込み式のプロ用のコネクターがつけられていたようです
反対側にも2個空いていて、スピーカーコードを引き出していたようです

3 写真上側のアンプの電源トランスには、昔懐かしいテプラシールが貼ってあります
よく見て見ると  「CH. 9」とあります
チャンネル9番???

4 同じく写真の通り、アンプの両端にはラックマウントごときな「ツバ」が付いています

5 最後に周波数特性を測って見ました
8kHzくらいから下降して高音が全く出ていません???
慌てて、近所でⅡ型をお使いのMさん宅で見せてもらうと・・・大きな発見がありました


出力トランスの仕様が違います
・・・初めはわからずに単純な配線違いだと思って配線をノーマル機仕様にしたら・・・危うくトランスを焼き切りそうになりました

そうと分かればこっちのものです
業務用ラインで使うための道具立ては揃っていますからお手の物、実際にはノーマル機よりもトランスを楽に使っていますから望外に優秀な特性であることが判明しました

思い返すと、Vitavoxのモニタースピーカーも同じ仕様だったなあ、あれがまだ手元にあればダイレクトに使えたのになあ
と思いましたが後の祭り、人間「知らない」というのは恐ろしいものです。もっともっと勉強しよ



さて、仕様の違いもわかってひと段落、続いてアンプの実際的なメンテナンスに移りましたが、これがまた大変なものでした

まず、50年代のカーボンコンポジット抵抗の狂うこと、狂うこと
慌てて同一部品を大量に英国から取り寄せました

PICT4745.jpg

いくら新品といってもストックの抵抗も狂っています
一つの値の抵抗が10本あっても2本1組も取れません
そこは最後の手段を使って何とか2台分揃えました、大量の不使用抵抗が残りましたがこれもそのうち使うときがくるでしょうね

これまで長いことドイツ製の業務機を扱ってきて、金属皮膜系の抵抗を見てきました
何十台か100台近く直しましたが、抵抗値が狂っていたから交換した記憶がすぐには思い出せません


また、1本のKT-66が熱暴走を起こして原因の追及に時間を要しました
これも業務機ではあまり考えられないことです、不具合までのマージンや部品決定時の安全保障の感覚が大きく異なりますね





オーディオシステムの音を聞いて、あっちが良いとかこっちが好きだと言い放つことは実は造作もないことであり、どれほどの意味もないことです

ある時代に、ある目的や用途を持って作り出されたモノには必ず作り手の想いやそれぞれの時代の要求があります
現代に生きる我々にはその物の価値を正しく汲み取れているか?が問われているのだろうと思います


今回ご紹介した民生オーディオが生み出された当時の英国では、まだおそらくかなり身分の高い人たちが顧客だったでしょう
途方も無い大きなお屋敷の普段は家人も足を踏み入れないような離れや奥の院でお父さんだけが音楽を聞く部屋に置かれていたかもしれません
あるいは、来客からの羨望を浴びるようにしつらえた瀟洒なサロンかも・・・


いづれにしても、無粋な「家電製品」が見えているようでは興ざめです
QUADやLEAKがプリメインアンプであるにもかかわらず、プリを切り離して可及的小さな筐体に詰め込んだのちパワーアンプを人の目の届かぬ場所に離して押し込めるように設計されているのは決して偶然ではありません

私は以前にQUADを使っていた時も同じようにしましたが、こうした機械は必ずアンティークのキャビネットに入れて、使わないときには普通の家具として何食わぬ顔をしていなければならないと考えています


DCP_0435_convert_20090630094228.jpg

これは20年ほど前に使っていたキャビネット

こちらが今回のもの

PICT4746.jpg


そして、大切なことは
価格的には何十倍も開きのあるKlagfilmの劇場用システムと聞き比べて、やっぱり大きい方がいい!なんて無毛な感想を持って評論家ごっこをしないことです


素晴らしい京都のやっこ(四角に切ったお豆腐)にお醤油をかけただけのものと料亭の料理を比べて「俺はこっちの方が好きだ」なんて無粋なことを言っているようでは
この世界を生きていく資格が無いというものです








沢山のブログが集まるサイト「日本ブログ村」に参加しました。
130以上のオーディオブログが参加しています。ぜひご覧下さい。下のバナーがリンク先です。
にほんブログ村 PC家電ブログ ピュアオーディオへ
にほんブログ村













Marantz 8B   本当の実力を聞くために

結局、自分ではノータッチでしたが今回の一件でマランツという会社のことを知る機会になりました

米マランツ社は1964年に家電メーカーのスーパーコープに売却され、以降日本のスタンダード工業によって製品開発されることになりますが、これはもう少し前「古き良きアメリカ」時代の話です


創業者ソウル・バーナード・マランツさんは工業デザインと電子技術の経験がある人で、1951年頃知人のためにプリアンプを作った
いわゆるセミプロの自作マニアですね。その機械が仲間内で評判になり400台近い購入希望があって
奥様と二人の手作業では追いつかなくなり1953年に会社として立ち上げたそうです

P・ウォーカー先生やアイクマンくんなどもみんな同じような経緯で起業していますね
本格的家庭用オーディオが今まさに産声をあげた瞬間です

その後の快進撃はよくご存知の通り、シドニー・スミスやセクエラといった名技術者を向かえ入れ名器の数々を生み出します

私の薄い記憶だけで今回ネット検索しても確認が取れなかったのですが、マランツ自身だったかスミスは測定器の仕事もしていたと聞いた記憶があります

今回 8Bのマニュアルを見ていて、そう、これは測定器のマニュアルの書き方だと思ったのです


マニュアルのP5に 「アジャストメント」という項目があり

1、バイアス調整
2、ACバランス調整

の2項目が写真入りで事細かに記載されています

さらにその後には
テストポイント毎の電圧値と抵抗値の標準一覧があって、実に親切なマニュアルになっています
これだけやっておけば、一通り以上の調整ができますので、買ってきたままの状態で使うよりもかなり音の足並みが揃って重心が下がり、そして何よりピントのあった音になるでしょう

今回は片側のchだけでしたが、きちんと調整してからモノラルで聞いてみました
聞き慣れた民生機アンプという印象は霧散し、音像に整いと背景に静寂のあるハイクオリティ・アンプの香りが漂ってきました

楽器の姿がなんとなく霞がかかり、こんもりとした「マリモ」が鳴っているような印象がなくなったのです
やはり8Bはきちんと使いさえすれば素晴らしい名器でした!


いつも申し上げていますが、50年前の真空管時代の名器が眠たくなるような生気のない=優しく真空管らしい音=であったら「名器」と呼ばれ続けるはずがないんです
同時代他メーカーのアンプをはるかに凌駕する音の鳴りっぷりがあったからこそスーパースターとして君臨したんです

マニアの皆さんが、名前さえも聞いたことのないアンプメーカーは星の数ほどあったにもかかわらず、ほんの一握りの機種だけが50年経った今でも高値で取引されているのには、当然の理由があるのです


Marantz8b.jpg


さて、このブログで上記マニュアルのリンク先を張って調整方法などにも少し触れようかと思いましたがやめました

少なくともある程度の精度の(市価1万5千円以上)デジタルテスターとダミーロードとショートピンは必要ですし(テスターも持たずにヴェンテージアンプを使っている環境を想像できないが、下記の理由で使わないほうが良いとも思う。またダミーなしに通電するとアウトトランス断線の原因になる)ちゃんとするなら、オシレーター、ミリバル、ジェネレーターが必要になる

そして、何より心配であったのが

底パネルを外して天地を返した状態で通電し・・・+Bにはこの時点で400v来ている・・・電圧測定や半固定抵抗の調整をすることです
この時に金属のスクリュー・ドライバーやプライヤーズを、手を滑らせてアンプの中に落としてしまうと家中の電源を消失することになります。

もちろんアンプは大きな被害を受けます、そんなリスクを冒してまでするべきことではないと考えました


312marbottom.jpg

400vが走るこの中に手を突っ込む(比喩です)勇気が必要です
電圧は高いですが、200mA程度しか流れないので感電しても「ビク」って程度です
壁コンセントからの200vは契約の50Aとかのままですから「ブヲ」ってなります




結論から申しましょう

球を交換して音が変わった、良くなったと喜ぶのは少し待ってください
球を交換したせいで、回路中の動作条件ppならAC、DCバランス、シングルなら球の動作点が変わるので音が変わるのです、それを喜んでいても仕方がありません

ただし球を変えるたびに上記マニュアル通りに調整をされている人は別です。その人は以下の文を読む必要がありませんが、その様なことができるほどアンプを理解している人は大抵安易に球を変えたりしないものです



仮にきちんと調整された状態(そんなものには中々お目にかかれませんが)で買ったとしたら、球を変えることによってわざわざバランスを崩して、音が変わったと言っているのです
アンプは音が変わることが重要ではないんです

もし、交換する球をお求めになるお金があるのなら、一度信頼の置ける技術者によって調整された状態で聞いてみることです。その後は1年に一度のルーティンにする
それだけで、あなたの家ではどれほど素晴らしい音楽が響くかしれません

ただし、お願いする相手がまた悩ましい問題であります。アンプを設計して自作できる・・・というだけではいけません


長い時間の中で技術は歴史を刻み続けてきたのです
歴史を知り、マランツであればその設計に携わった技術者の思想や組あげる時の「クセ」を知らないと(想像する感性がないと)できる話ではありません

「オリジナル部品でないといい音は出ない」だの「俺がいじったら、もっと音を良くしてやる」なんて人にあなたの大切な、そして歴史的名器を委ねてはいけません
素人の生兵法は古来より固く禁じられるものです、なので私自身も8Bに関しては関与出来ませんでした


まずはその機械を作った人たちが情熱を叩きつけた最高の状態で一度聴いてみてください
雑誌やネット上の評判をはるかに上回る音の世界がそこにはあると思いますよ

変化を求めるならば、その後でもいいじゃないですか?
すでに鬼籍に入ってしまったシドニー・スミスやソウル・B・マランツと違って僕らは生きていてこれからも時間はたっぷりあるんですから

亡き先人の偉大な業績にまず敬意を表してから己の思考を表現するのであれば、礼を失することにはなりますまい



『余談中の余談コーナー』

立川志の輔師匠(北陸地方の生まれ)が29歳という遅咲きで談志師匠に弟子入りした当時のことです
兄弟子(おそらく年少の)に蕎麦屋へ連れて行ってもらいました

お酒を頼むと「お通し」として白菜の漬物が出てきました
志の輔さんは、これまでそうしてきたように何の迷うことなく漬物に醤油をかけて食べようとした所、兄さんにお小言をいただきました

「おまいさん漬物が塩っ辛いか甘いかわからないうちに醤油をかけるんじゃないよ。一口食べてからでも遅くないだろ」

・・・お後がよろしようで








沢山のブログが集まるサイト「日本ブログ村」に参加しました。
130以上のオーディオブログが参加しています。ぜひご覧下さい。下のバナーがリンク先です。
にほんブログ村 PC家電ブログ ピュアオーディオへ
にほんブログ村






Marantz 8B Tさんの涙! って泣いてないか、でも泣けるよねえ

さて、件のマランツ8Bは購入したお店に発送して周りの抵抗をもう2、3本交換して無事戻されたそうです

それから半年ほどのち再びTさんから電話がかかってきました。やっぱり暗い声です

「どうしました、大丈夫ですか?」

「それがさ、マランツ8Bの片方のchの音が小さくなって左右のバランスが取れないんだよ」

「左右の球は入れ替えましたよね、ソケットの掃除はしましたか?プリアンプ以前ではないですか?」

「それがさ、8Bにはメーターが付いてるよね、出力管4本のうち1本だけが針が十分に振れないんだよ」

「それは困りましたね、一応見てみますから持ってきてください」

Marantz_8B_15B.jpg

出力管の脇にある(黒いキャップが被っている)半固定抵抗を調整して右端のメーターの針をメーター内の白いラインに合わせるという作業


まあ、出力管のPiを測ってppのバランスを取るんだよねえ、おそらくカソードで測っているのだからパスコンが抜けたんだろう。くらいの軽い気持ちで待っていました

30分もすると、ちびまる子ちゃんが焦った時に頭から青い線が降りてきているような顔をしたTさんがアンプをかついでやってきました


それでも、随分とのんきなことを言ってきます

「今日はさあ、まだレコード聞きたいからさあ、抵抗とかコンデンサーとか変えればいいんでしょ、早くやってよ」

まあ、見てみますからちょっと待ってください、とNETで落としておいた回路図から見始めた・・・・その瞬間今度はこちらがガーーンとなりました

7001429369021-1706.jpg

なんと、固定バイアスなんです

メーターはバイアス可変によるDCバランスを測るためにあったのです、ほとんど部品がない場所の電圧だぞ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おそらく修理はできないだろうな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「今日は無理ですね、あまり好ましくない状態だと思います、せいぜい早くやりますがそれでも2、3日はください。
それと手直しではできないと思いますので正規の修理代が発生しますし、修理不能でお返しする可能性もありますのでご理解ください」

無念というか不服そうな顔でしたが、直ぐに出来ないのは事実は事実なので納得してもらって一旦お帰りいただきました
さてここからはこちらの気分が暗くなる番です、早速原因の特定=犯人探しを始めました

普段はこんなに急がないんだけれど、気が早ってしまうというか嫌な予感を拭いたいからという感じです

まずは関連するであろうCR部品の不具合を個別に確認していきます・・・・予想通り問題は見つかりません、数は少ないのでここまで20分ほど

早速行き詰まりますが、そうも言ってはおられません、気力を振り絞って次の手に移ります
各部電圧を4本の出力管から見た立ち位置で測っていきます

音声回路でも特に問題はありません、ここまでで1時間弱。少し焦りが・・・

PICT4538.jpg

このメモは信号回路で犯人がわからず、B電源の流れを測っていて犯人検挙の瞬間を記録したものです



答えは想像以上に悲劇的なものでした
アウトトランスの1次側のレアショートだったのです

自分の測り間違いじゃないかと何度も何度も確認しました、しかし残念ですがスクリーン=プレート間に導通はありませんでした
いつもより数倍重い携帯を取り上げてTさんに連絡しました



翌日、Tさんは購入したお店に連絡したのですが、部品としてはすぐにはないのでジャンク品が出た際に生きているトランスを探すしかないと言われたそうです
それからどうなったか委細はわかりません、日本にはたくさんの同型機があるでしょうからトランスは出てくると思いますが早く叶うことを祈ってやみません


最初に抵抗が溶断した時にはこちらで修理(の記録)をしていないので、今回のトランスが切れた同じ場所の球が不具合だったのかはもう私にはわかりません

まっとうに考えると真空管アンプは400vレベルのB電源で動いているわけですから、短絡事故の際には重度の損害が生じる可能性が大きいのです
使う人間は常にその覚悟というと大げさですが、もしもの時の安全保障を考えてしかるべきでしょうね


私が長いこと真空管と付き合ってきて思う事です

「なんとなく嫌な気がする、これをやっちゃいけない」という第六感を敏感にするしかこんな恐ろしい器械と付き合う道はないと思います
別の言い方をすると「気配を察する」感性です

前回話題にした「球転がし」を私がしないのは、アンプにとっては「ヤバイ気がする」ってことも大きな要因だと思います
そこんところが鈍感になると、いつの間にか大きな渦に巻き込まれるかもしれないと思うのです

今回は大変な悲劇でしたが、このアンプを初めて見た時に言った

「抵抗で済んで良かったですよ、トランスでもやったら大変でしたね」なんて冗談が本当になってしまったのです

その時の修理を自分でせずに販売店にお願いしていただいたのも「なんとなく近寄りがたい感じ」がしていたのだと思います



次回は、この悲劇を通じて学んだこと

球転がしをする前にやるべきことは山ほどあった!


最終回です






沢山のブログが集まるサイト「日本ブログ村」に参加しました。
130以上のオーディオブログが参加しています。ぜひご覧下さい。下のバナーがリンク先です。
にほんブログ村 PC家電ブログ ピュアオーディオへ
にほんブログ村










上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。