「うえすたん」という会社

毎度のことだが、古い機械ばかり弄っていると不思議な感覚に見舞われることがある。
自分の脳が眩暈を起こすとでも言うのだろうか・・・世間的にはとんでもなく汚いものが美しく見えてしまうのだから、これは明らかに病気だ。


古い機械だから、まあ大概は汚いしボロイ。シャーシは隙間だらけだし、その上業務用であればデザインだってゴツさばかりが先に出ている。

しかし何と言うか「畏怖の念」を感じるのはオーディオに限らずいつも古い機械達だったことも正直に告白できる。

「畏怖の念」とは、同じ工業生産品で言うと江戸切子や寄木細工を目の当たりにした時に
「もうしませんから、かんべんしてくださいーー」って土下座せざるを得ないようなパワーのことだ。

その源はなんだろうと考えてみると、職人さんの仕事に打ち込む「情念」の有無だろう。
一流の斬新なデザインに、最高に良質な材料を使って、どれ程高精度な加工を施してもインダストリアルな製品ではたどり着かない世界があるに違いない。

まあそんなことは誰もが分かっているが、その道ではど素人の僕よりずっと江戸工芸に造詣の深い人だってオーディオなら音や使い勝手で現代品を持つ方が余程多いと思う。
オーディオにも職人芸を求めてしまうから、自分は脳が眩暈を起こしていると言うのだ。



さて、ステレオ音響なる近代のカラクリに現を抜かし、さらに大切な原典のオーディオを長いこと蔑ろにしてしまった。

こと此処にいたって、いよいよ自責の念に耐え切れず、まずはSP盤の電気再生におけるパワーアンプのメンテナンスに取り掛かることにする。(まだ宣言にすぎないか!)

で、随分以前に入手した 「WE-14型リプロデューサー」 である。もう2年も前だ(汗)

これがアンプボード(木の板に組まれたアンプ部)の全てだ。
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抵抗・ゼロ、コンデンサ・ゼロ(外付けで1個!いるらしい)・・・真空管のあいだをトランスで繋いだだけ。

下手な写真で正しく伝わらずに大変恐縮だが、この板といい、トランスといい、ツマミ一つを取ってもその仕上げの美しさと言ったら息を飲むばかりである。

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いつの時代(1922年のようだ)にどのような目的で生産されたかは知らない、こんなナリでも家庭用なのかとも思う。しかし豪華絢爛なオーディオやラジオ、高級乗用車などとは明らかにタッチが違う。

横須賀や厚木の基地でお祭りの際に閲覧できる戦車や戦闘機の備品のような「ポッタリとしてツルン」としたタッチだ。
もう少し普遍的なもので例えると、昔の電車の運転席(クリームの塗料を厚く塗っていたやつ)に近いだろう。

工業生産品を越える何かがあるのかは知らないが、今に至るまで多くの人の気持ちを引き付けるのはやっぱり稀な存在だからと思う。

これで、音まで良かったら反則だ!
でも、僕の脳はもう聞かなくたって音が良いに決まってると告げている。

「戦前のうえすたん」という会社はきっとそういう会社だったのだから。




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これはもう、単純に憧れの地  Paris-France

300年続いた江戸期が終結し、文明開化と共に多少とも海外の情報が入るようになって以来、日本人の心の中にはフランス文化への憧れが芽生えたように思えます。

しかしこれは、なにも日本に限ったことでは無いらしく、パリを中心としたフランスは現在でも世界一の観光大国であり、絵画を始めとして文化の中心地であることは間違いなかろうかと思います。

人後に漏れず、私もパリへの憧れは持ち合わせておりますが、音楽の面においてはシャンソンに出会ったことがきっかけでした。

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Musiqua Das FILM Francais DISKPORT-SEIBU (1981) MFPL-80Y01-3
80年代に、西武系のディスクポートで販売していた、1930年代のフランス映画黎明期の主題歌、挿入曲を集めたLP3枚のセット。
こんなリブレットが付いているんですから、これだけでも憧れちゃいますよね。

この中の1曲にやられてしまいました。
Lys Gauty   A Paris Dans Chaque Faubourg 1933年トビス映画会社製作 「巴里祭」の主題歌 

こちらは、日本コロムビアの有名な「シャンソン・ド・パリ」シリーズのSP盤

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この当時のシャンソンはやはり、SP盤で聴くのが似合いますね。
室内の空気が、一瞬にして1930年代のフランスの香りに変わるような気がします。


さて、この当時のフランスの音楽をオーディオで聴くにはどのような装置がお似合いなのでしょうか?

1920年代の後半に、「世界映画機材、仕分け会議」が開かれたそうです。
当時は米国のWestern Electoricと独逸のKlangfilmが二大勢力であり、過度な競争は互いの為にならないと、話し合いによって展開する地域を決めてしまったそうです。

現代の感覚からすると、独占禁止法に抵触する不当取引のようにも感じますが、まかり通っていたのでしょうね。
公正な競争原理による、クライアントの利益を保護するなどは軽視されていた時代ですか。
それほど、映画機材の業界は売り手市場だったのでしょう。

うろ覚えですが、
WEは北中米、日本(と多分アジア)、英国を担当
Klangfilmが欧州大陸、ソビエト連邦、アフリカを担当したということです。

その歴史が、カナダのNothanElectricや、英国のWestrex London、日本のWestrex東洋支社などに残っています。
同様に、KlangfilmオーストリアやソビエトのLOMOがあります。

そしてフランスも当然の如く、Klangfilmの機材が一般には使用されていました。
先のトビス映画会社も配給の際には、Film缶に「Tobis-Klangfilm」と銘打っておりました。

しかし、ライセンスによるノックダウンのフランス製機材は殆ど見かけません。

まあ、お隣さんですから輸送は大したことなさそうですが、より近いオーストリアには自国製造の物があることを鑑みると、フランス人のいい加減さをドイツ人が信用していなかったのではないか?
なぞという、勝手な妄想が膨らんで、また楽しからずや。ではあります。

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ラインアンプのシールです。 仏語で「独逸から輸入した」って書いてありますね。

これならば、Klangfilmでシャンソンを聴いても大丈夫ですよね。
録音した機材で再生するっていうのは、出てくる音は別にしても気分的には中々にしっくり来るものがあります。



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