fc2ブログ

good or bad, but thinking makes it so 良いも悪いも捉え方次第

約3年前、大きな決意をしてラインアンプの受注を受けました。

詳細をここで述べても意味がありませんので割愛しますが、作業を完遂してお届けすることは叶いませんでした。
ざっくりと言えば、こちらからのご提案と使用者様のご希望との乖離を最後まで埋めることができなかったためです。

この一件は、私自身にとって(そして、ユーザーたろうと楽しみにされていた発注者さんにとっても)精神的な痛手となりました。
半年以上お待たせして、その上に破談となったわけですから大変なご迷惑をおかけしてしまったわけです。
しばらくは外からの依頼を全てお断りをして、状況の把握と反省する時間が必要でした。


こうした反省を踏まえもう一度頑張ろうと思えたのは辛くも貴重な経験があったからで、今は感謝しています。
そして、今後このような悲劇を繰り返さないようにしようと、改めて「自分のすべきこと」を見直す良いきっかけになりました。


そのチャンスは今年の春にやってきました、実に2年と半年ぶりの事でした。

PICT3451.jpg


使い勝手につながる入出力の端子形状や選択数については、今回も全面的にオーナーの意向を反映させました。
古い録音を聞くためにSTEREO↔︎MONOの切変えも供えました。

別の方からモノラル・プレスのCD(左右チャンネルは電気的に同一)をかけるのに、なぜわざわざMONOスイッチが必要なのか?
と、聞かれましたが「必要だから」という以外明確な答えはありません。それしか答えはないんです。




前回の反省を生かして、作業に掛かる前にまず
電気的、機械的な中身については私が一番良いと思った方法を受け入れて使って頂くしかない。と申し上げて納得をいただいてから製作にかかりました。

どんな物を作るにしろ、私が作ったという事実は未来永劫消える事はないんです。
いくらオーナーからのご希望とはいえ(外見やファンクションに関してはどうぞご自由に、ですが)私自身が納得の出来ない機械を世に出す事こそ、私が第一番に避けるべき事だったのです。

以上が前回の失敗から得た教訓でした。

前回のご依頼者様が悪いわけではもちろんありません。
一番悪かったのは「出来うる限りご希望に添って作ります」と曖昧な投げかけをした私です。
ご希望に添う部分と、納得頂くべきところをしっかりと最初から分けてスタートするべきでした。

各ステージ間のインピーダンス整合とゲインセットはオーディオ・システムのクオリティを決定付ける最も影響力の強い要件ですが、それを一般の方に納得のいただけるように説明することは「音の良いアンプ」を製作するよりもずっと困難な作業です。


結局、誰が善で誰が悪だという話ではなかったのです。
沢山売るという事が善である大きなメーカーならば、要望の多い方面へ舵を切ってしかるべきでしょう。
私はそのような立派な立場ではなかっただけの事。

ならばきっと、私のやろうとする事を待っていて下さる酔狂な方も(数はよっぽど少ないけれど)見えるだろうからそちらの世界への期待に答える事が、小ならばこその役割だろうと思い至ったわけです。




PICT3447.jpg

これは仮組み中の写真ですが、オーナーさんの思いと自分のすべき事を練り上げた上で形にして、良いアンプができたと思います。

外装デザインはオーナーさんのご希望通り
Klangfilmの専用電源と重ねてキャビネットに納めました

PICT3468.jpg

このラインアンプは5極管の1球仕様で、この次の世代になると3極管の2段NF付きになり、音味が変わります。
そういった意味では貴重ではあるのです

もちろん、だから「良い」とか「悪い」という話ではありません。



There is nothing either good or bad, but thinking makes it so.

ー 物事(オーディオ機器)に良いも悪いもない。考え方(捉え方)によって良くも悪くもなる。 ー



と、綺麗にまとまりました、お後がよろしいようで







沢山のブログが集まるサイト「日本ブログ村」に参加しました。
130以上のオーディオブログが参加しています。ぜひご覧下さい。下のバナーがリンク先です。
にほんブログ村 PC家電ブログ ピュアオーディオへ
にほんブログ村







スポンサーサイト



to be or not to be 為すべきか 為さざるべきか それが問題だ

ずっと書きたかったけれど、テーマが大きすぎていかようにも書ききれなかったことがありました。


自宅のラインの引き回しは、200Ωまたは600Ωのトランスを介して全てバランスラインで繋がっています。

それらをつなぎ合わせるのに用いるコネクターは基本的にXLR端子を使用しますが、他にもバリアターミタルであったり、アンフェノール・ソケット、ドイツ端子など多義に渡っています。

アース配線後


何を使いたい、とか、音がいいからなどというコダワリはまったくありません。
たまたまそれが「付いていたから」と言う理由だけで使っているにすぎません。

もし私がオーディオ製品を商売にして人様にお譲りするのであれば機器の端子からリードで引き出し適当なBOXでも増設してXLR端子に変換するかもしれません。
そのように手の込んだことをするのならまだ良し、とんだ乱暴者ならばバランス回路の「コールド」と「グランド」をショートさせてRCAピンジャックを備えるなどという不届き者なヤカラもおるかもしれません。

自宅の中に限ってしまえば受けるも渡すもお互いにバランスなので、こうしたカオス(本人的には至って明快)なんら不自由を感じません。

しかし、一旦ここに民生機(アンバランス)を挿入しようとすると・・・
やれ「端子がない」「コードがない」「外付できるトランスはどこいった?」と上へ下への一大騒動と合いなるのです。

こうした事情があって、これまでも幾つか譲ってくれとか修理してくれなどのご希望やご依頼はあったのですが、
こうした声には無力ながらご辞退をしてきたのです。




そんな折、2年ほど前のことでした
自宅のラインナップが固まってきたこともあり、部屋の整理のため昔に買っておいた機器をいくばくかオークションに出品をしました

その中の一つに、Klanfilm中期の傑作ラインアンプ「Kl-V004」2台とオリジナル電源付きのセットがありました

PICT2661.jpg


このアンプは本来大きなコンソールの中に7台〜14台・・・と用途に応じてキャビネットに組み込まれるユニットアンプの一つで、同じ大きさで色々な機能違いの兄弟がたくさんいます

1_a59eef1e2306cf642c740689352e57db.jpg


その中で「004」はマイクアンプになります。
現代では優秀なNF(望むならCRでも)RIAA-EQのベースとして使うことができますし、2段目を使うとこれまた絶品のラインアンプ+出力トランスの送り出しが可能です。



先ほど「民生機の中に業務機を入れることは難しい」と書きながら、なぜ多くの人の目に触れるオークションに出したのか?という疑問がありますが、

「004」の最大の特徴がここにあるんです。
戦前や戦後すぐの機械ならハナから無理な話なのです。しかし、この時代の出力トランスは設計変更があった後のシリーズなので十分に配慮して使うと、10kΩ以上の負荷に耐えるように作られています。

それに、CDなどのライン入力ならば、2段目から受けるのでここをアンバランス入力としても問題ありません(というより、アンバランスでしか使えません)ので、これぞ正に民生機に合わせるには申し分ない特徴を持ったアンプだったのです

PICT2666.jpg

専用電源も専用ラックもついて文句なし!



そしてそのとき、出品にあたり私は一つの大きな決意を持っていました。
出品は物販だけでなく「その御宅の装置にフィットさせて組んでからお渡し」という形態を選んだので以下のような問題が発生するであろうことを想定していたためです。

これまでは他人に渡すにも修理を受けるにしても、あくまで製造元の指定する用法を尊重してきました。

しかし相手は名うてのオーディオマニア諸氏ですから、明らかに誤認とはいえ自分のやり方を主張をされる方もありました。
その際には一生懸命説得するか、どうしても聞き入れて頂けない場合は残念ですがお断りしてきました。
依頼を受ける方が「我」を通すのはおかしいと言われる方もありましたが、別に私に「我」なんてものは全くないんです。

作ったメーカーが「ダメだよ」と言っていることをあえて行えば、悪い結果になることは火を見るよりも明らかなんです。
自分がその行いに加担するわけにはいきません。それだけのことです。


さて、出品に当たっての「決意」とは

オークションに出して、不特定多数(これまではごく近い知人だけ)の人を相手にするのだから、まず民生機に繋ぐことになるだろう。

おそらく「ドイツの古い劇場用」といったセリフに憧れてスピーカーなどを一つだけ揃えてアンプやプレーヤーは民生機を使われているような場所に納めることになるだろうと予想していました。

デザインや入出力の数(たとえアンバラであっても)出来るだけご依頼者の意向を組んでみよう、と。

私にとっては、新たな世界に足を踏み出す試金石と思って、大げさに言えばそんな気持ちで取り組もうと覚悟を決めていたのです。


以下つづく・・・






沢山のブログが集まるサイト「日本ブログ村」に参加しました。
130以上のオーディオブログが参加しています。ぜひご覧下さい。下のバナーがリンク先です。
にほんブログ村 PC家電ブログ ピュアオーディオへ
にほんブログ村