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FMチューナーの夢 〜 現実的な落しどころ

FMを受信する行為において、いつか夢が叶うならばR&SのRelay Receiverを使いたい!が、世界中のエンスージアスト共通の思いでしょう
私の知り合いにもお一人その異次元世界を享受している人がいます、羨ましい限りです

しかし、新品当時(日本には入っていないと思うが)百万円じゃ買えなかっただろうし、そもそもただの「レシーバー=受信器」だからそれ自体は同調するに止まり、ステレオ放送を楽しむためには別売りのMPXデコーダーでまた数十万円の出費を余儀なくされる

近年稀に中古品が競売にかけられることがあるけれど、中古とはいえその価格は「FMチューナー」の常識の範疇から遠く外れています



さて、
FMアンテナで拾った直後の電波信号をデジタル変換されてのちに処理されるというデジタルチューナーのプロセスは、いかなドアナログ人間の自分にとっても大層魅力的に見えたし、
負け惜しみになるが、FM放送の受信は不安定な面もあると聞くからデジタルの方が「効率」がいいじゃんと思えていた

そうこうしているうちに、周りから「”あの”デジタルチューナーを買った人がいる」「随分待たされたようだけれど、最近届いたようだ」という噂が耳に入り始めてきた
購入には10万円でお釣りがくるようだとか、やっぱりデジタルは音がいい!とか・・・

しかし、まだ絶対数が少ないようで直接聞かせてもらう機会がなく、音を聞いた感想などもネットに上がるようにはなっていたが・・・

新しいカテゴリーの製品の購入に抵抗のないチャレンジ精神旺盛な方々が購入している事例が多く思える、そうした方々の音の嗜好を、所有されている他のラインナップから想像してこのチューナーの評価を照らし合わせると、いまだ自分の装置に加えて望む成果が得られるのか確信が持てないでいた


ついにある日、古くから付き合いがあって音の嗜好がわかっている知り合いの中に
「オレ、聞いたぞー」という人が現れた

「どう思う?」と問うた私

答えて曰く「お前がデジタル買うなら、REVOXはもういらないだろ。周波数シフターごと譲り受ける。ついてはアンテナを立てる必要が・・・」

「あげないよ!」


どうやら自分自身の気持ちは決まったようでした
ちょうどこの頃、前回ご紹介したQUADのチューナーを買っていたのですが
この手のひらに乗るようなチープなチューナーに教わっていたのです

自分はオーディオから再生される音楽を通じて何を聞きたかったのか?
何を感じたいと求めているのか?
そう、心臓をキュッと締め付けられるようなメランコリーや郷愁の想いではなかったか!

英国紳士は、会話の際に大口を開いて大声をあげたりしません、おちょぼ口のまま口角を少しあげるだけで多彩な感情表現をします
オーディオ的に大きな声を張り上げて自己主張するだけが「いい音」じゃないんだぞとQUADはその小さな声で言葉少なに、しかし能弁に語ってくれたのです



元々は長時間録音を目指してレコーダーを更新しようかと歩き始めた旅路でしたが、一度火がついた気持ちは止まりません。デジタルチューナーを買ったつもりで何ができるのかを考え始めました

と言っても、上述したR&Sのレシーバーが買えるわけではありません、金もなければ物もない

次善策が何かは、もう何十年前からもわかっていました、高嶺の花で手の出ない対象でしたが、相場が少し下がってきたのと、最近の円高も背中を押してくれました

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手持ち3秒ほどで撮ったので手ブレ失礼です


FMチューナーのロールスロイスと勝手に呼んでいる REVOX B760です
バランス送りのSTUDER銘の業務機もあるのですが、STUDERのトランスで痛い目にあっている自分は迷うことなく民生機であるB760を選択します
現状の我が家のライン上ではこちらの方が遥かに良い結果になるでしょう(企業秘密で内容は書けませんが)

とは申してもアウトプット・ステージ以外は全てSTUDERと同一の仕様であり部品にはSTUDERのスタンプがあり、XLR端子をつける場所にはバカ穴を塞いで共通の筐体を使っています

そして何より、購入の意思を決定つけたのはこの内部構造です

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写真はネットから


多くのFMチューナーの信号処理は基本的に1枚基盤が多用されている(拡張基盤もあるもあるがあくまでも面積不足の補助という役割が多い)
対してこちらは受信器に必要な機能毎に基盤を分けて構成される、上述した業務目的のレシーバーと同じ考え方で作られています
その結果として、緊急的なトラブルへの対策にも優れています(最大数回の基盤交換で現状復帰が可能)



とりあえず聞いてみました
その夜になって、マーラーがお好きだという方が見えて、神奈川フィルのライブを一緒に聞いていただきました

今までの新型REVOX(と言っても20年以上前のもの)がDECCA SXL6000番の音がすると例えるなら
B760はどうみても2000番の音なのです

チェロバスの、ゴリゴリ、バリバリと弾くような重みがFMチューナーの範疇を完全に凌駕しているように聞こえます
これが突き抜けると、再生音という感覚がなくなり音楽の中に入り込むかのような独特な気持ちになる、まさに初期SXLやSAXなどでのみ感じることのできる「あの」感覚に手が届きそうな、体ごと引き込まれそうな気分になるのです

これはおそらく、どなたもご自身で聞いていただくしか想像もできない次元の出来事だと思います
これを聞くためだけに。という、色々な理由付けが通る音かもしれません



最後になりますが、自分のFM受信の旅がこれで終わるとは露ほども思っていません

これは現実的な、今日現在の落しどころです
Relay Receiverもいつかは使ってみたいし、日進月歩のデジタル技術はまだ産声をあげたばかりです
何十年も前に人類史上の頂点を極めたアナログの受信技術と直ぐに競わせるのはフェアではありません


自分自身もFM放送を探求するサーガをまだ歩み始めたばかりなのです








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我が家のFMチューナーが決まった話

このブログの過去記事を振り返ってみると、2015年の2月にFM放送の受信を目指して行動を始めたとの記事を書いていた

長いブランク明けであって昨今のFM放送や受信の事情が全くわからなく、まるっきりの初心者がヨチヨチ歩きを始めたという状態のスタートだった

オークションとハードオフで3000円程度のチューナーを買い
FM中継局のアンテナは自宅から目視できる場所なので、すぐに入るだろうと4素子のアンテナを買って置いてみたがノイズが多く実用にならない。

参ったなあ、
スタートした時点ではアマく考えてましたが、何事も始める前に考えるほどには簡単にいかないものです



次に打った手は・・・忘れもしません。ちょうど今頃の時期でした、午前中には時ならぬ雪が降った午後のこと
心ばかりの命綱を腹に巻いて、緊褌一番 決死の覚悟で屋根の上に8素子アンテナの設置を完了しました
これで問題なく受かるだろうと聴き始めましたが、なんとなく入力の弱さを感じて、ブースターを買ってみました

おやや・・・まだ足りないか? と高額だったけれど40dBのブースターをさらに奮発した!!!
どうやらここで、アンテナ入力の確保はできたようだがアンテナ1本とブースター1台は無駄になって空き部屋の隅に寂しそうに転がっている

オーディオをやっていると時々「俺は一切の無駄なく一直線で最高の音を出す!」なんて力んでいる人に出会いますが、まずそんな結果にはお目にかかっていませんしそれどころか無駄のない趣味なんてなんの喜びもないのだから長続きするわけもないです



所詮FMなんてメインの音源じゃないし可能な限り出費を抑えて。との目論見で始めたFM受信騒動ですが

その後
Kenwood 1台 アキュフェーズ 2台 SANSUIの同じ機種ををもう2台と買いました
台数が増えた大きな理由は「音質」なんかのためではなく、故障して使用不能になったからでした

そこで「基準信号発信器=ステレオ対応」や「周波数カウンター」まで買い込んでメンテを行うようになりましたが
国産民生機の脆弱さに呆れて、国産機に見切りをつけたかった

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海外製FMチューナーを使用する場合、アンテナコネクターもわけのわからない形になる
その上、大陸と英国ではオスメスが異なるようだ、安くもない変換器をいくつも買う必要がある

しかし、欧州で生産されたFMチューナーはバンド帯が異なるため日本では使用できません
昔のバリコン式の時代は共振点を変更して使えたようですが、シンセサイザー式ではどうにもならないと言われていました

その頃にネット上ではデジタル処理して出力できるPGFチューナーなるものが評判になり、どのみち録音はデジタルなのだからいっそのことこのチューナーを導入してはどうかと、開発者の林さんに連絡を取り教えを請いました

しかし丁度新設計の基盤を準備中のタイミングなのでもう少し待てますか?とのことでしたがその後の進展はなく話は立ち消えになっておりました


本当にもうこうなったら崖っぷちです
一から勉強をして自分で「周波数シフター=放送される電波の周波数をずらして欧州のチューナーで受信できるようにするもの」を作るしか、我がFM受信システムを完成させる道がありません

かく云う私はよく電波とか言われますが(笑)電波関係の工学は全くのど素人
右も左も分からない、イロハから勉強してなんとか実用となる周波数シフターを作ることができました
それを使ってやっと念願だったREVOXのチューナーを使える環境を手にしたのです

これまで痛い目にあった中古品チューナー使用時の不具合に対応して
・できるだけ後期に、つまり最近に作られたもの
・業務用のSTUDERブランドで発売された実績のあるもの
この2点を目指して新しいチューナーを導入しました

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早速、音を聞いてみました
全く まったくもってお話になりませんでした
これまでのチューナーが受信機の機械の音だとすると、これはもっと生々しい血の通った音楽が創生されるようです
何が違うのでしょう?
上述した通り私は受信機に関してはズブのど素人なので理屈は想像もつきませんしそんなことには何の興味もありませんが、何から何までこれまで使っていたチューナーとは次元の違う音楽再生であることは明確でした

これで随分と楽しみましたが、一つだけ困っていることがあります

CDーRはメディアの入手やすさ、コスト、圧倒的な互換性を鑑みると理想的な録音方式ではありますが
唯一、録音時間が短いのが弱点です  78分しか持ちませんのでオペラをはじめとする長手の楽曲では途切れた録音になります

昨年のバイロイトのリングはヤノフスキーの熱演だっただけに惜しいことをしました

そこで、システムの再構築の検討を始めた頃、とある小さな会社からPGFデジタルチューナーの完成セットが販売されていると云う情報が入りました


また一方では
QUAD Lowtherシステムの構築に伴い(必要に応じてではなく多分に調子に乗って)QUADのモノラル時代のFMチューナーまで買ってしまいました

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巨大なブースターのパワーでチューナーは何台繋げても余裕綽々です
そして、この1台でまた新たな衝撃を受けたのです

Klangfilmの大きなシステムに入れて「いい音だな」とはならないのかもしれません
しかし、QUAD&Lowtherの世界観の範疇でこれほど鮮烈なFMを聴けるとは想像もできませんでした
夜中にひっそりとした音量で聞く
ラジオ深夜便から流れるJAZZや懐メロが静かに壁に染み込まれていくようです

大音量だ、抜けだ、鮮度だと云う旗印だけではない、本質の根っこの部分でオーディオに何ができるのか?何を求めるのか?を考え直させられたと云う意味での衝撃でした

そして、これら2つの衝撃がその後の方向付けをよりはっきりさせていくのですが、長くなりましたので
次回に続きます








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20年ぶりのアンプ製作  PX-4シングル 1932年仕様

ひょんな偶然が重なって、AD-1のアンプを自分で組んだのは30代の前半でした
その後10年ほど活躍してくれましたが、Klangfilmの専用アンプが投入されたことによって使命を終えていました

それ以降は、メーカー製造のアンプをメンテナンスして使う機会ばかりでしたから長いことアンプ製作から離れていました

そんな私に
昨年の末から今年のかけてアンプ製作のご依頼が舞い込んできました

その方は、随分と以前にフィールドのオイロダインをお譲りして以来懇意にしていただいている好事家の方で
これまで300Bの91などを中心としたアメリカ製アンプで楽しんで来られましたが、ある時PX-4アンプの音に触れてから、欧州製直熱三極管の燻銀のような音質の魅力に目覚めてしまったとおっしゃるのです

周りにもアンプ製作を頼める方は沢山お見えのようですが、ご高齢であったり欧州管に対しては経験がないという事情があって、「じゃあ、お前に任す」と白羽の矢が立ちました

正式にご依頼をいただくに際して
過去の失敗を繰り返さないように、入念にお打ち合わせをいたしました

・回路は1932年ころ真空管が発表された当時の回路の採用を了解されたい。理由はそれ以外に選択肢がないので
(私の創意工夫は一切入れない、よって音が悪いという苦情も一切受け付けない(笑))
・部品選定に関しては一任いただくこと(可能な限りオールドの英国製、欧州製部品を使う)
・デザインはコンストラクションに関わるので基本的にはお任せ願うこと(細かいことはご希望に添います)
・パイロットランプと監視メータをつける(私はやんわり反対して、すぐ承諾)
・出力は200Ωで旧型オイロダインをダイレクトにつなぐ(特注するしかない)

回路は上の通り、知る得る限りでもっとも原典版に近い時代の古いものを採用しました
まだ、出力トランスが普及しておらず、カップリングディバイスがチョークとコンデンサーの時代の回路です!
当時の業界事情を鑑みれば当たり前なのですが、20年前に作ったTELEFUNKEN AD-1の推奨回路とは双子のように酷似しています

穴があくほど見慣れた方式ですので、回路図と部品リストの書き出しは瞬く間に終わりました
しかし、頭のひねりどころはここからです。部品配置こそがアンプ成功の全てと言っても過言ではありません
コンストラクションさえ決まれば九割がた完成したようなもの、あとの実装・配線なんて赤子の手を捻るようなものです

それからはコピー紙を何枚も携帯して、思いついたそばからアイディアを形にしてスケッチする日々が続きました
そこしずつ部品が揃ってきますから具体的な寸法も入りはじめます

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5ヶ月から半年くらい過ぎた頃から、新しいアイディアが追加されることはなくなり
そろそろ腹を決めて製作にかかる頃合いかと思ったのが昨年の10月頃でした

自分はアンプを起こしたのは20年ぶりとか言っているのであまり偉そうなことは言える立場でないのはよくわかっているんですがこの時間がアンプ作りでは最も重要だと思います

ヤフオクなどに出品されるアンプを見ますと、この検討が不十分で見切り発車で組み立て始めたのではないかと思しきアンプが散見されます

音の嗜好は個人の問題なので使用者が満足するなら私が関知するところではありませんが、高圧を扱う真空管アンプにおいては安全性と長期にわたる安定性に対して懸念を感じ、傍目ながら気が気ではありません

自分自身が作ったアンプも含めてなので、文句を言われても構わないのですがそう言ったアンプはとても使う気にならないと思っている人間が作ったアンプの顛末記であります

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銀紙が光っていけないんですが、発泡スチロールの板の上で部品を立てて検証中
自分としてはこの大きさ「320mmx200mm」で行きたかった、今見ても申し分のないコンストラクションです
中央の出力トランスはまだ代理のものです

その後、オーナー様のご希望で「350mmx220mm」のやや大きなシャーシに変更になりました

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部品を並べてみるとやっぱりサイズ的に少々ゆったりですねえ

その後も検討を繰り返し、最終的に組み上がったのがこちら

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写真の整流管は動作確認の為にG2004を載せていますが、本番ではMullard FW4-500を奢って英国アンプの矜持を保ちました

その装着に反対した電流監視メーターは左側のオルタネイト・スイッチを押している間だけ照明がついて測定を開始する仕様にして、ちっちゃな抵抗を示しました


内部は

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音声回路中の抵抗は全て英国製ヴィンテージ品です
・ソケット類は全部英国製
・コンデンサはドイツ製と英国製の混成部隊
・スイッチやヒューズソケット、ヒューズなどは米国製
・フックアップワイヤーは英国WESTREX(電源供給)と米国ベルデン(ヒーター回路)
後述の通り信号回路には出力管のRk(メタルグラッド型なのでそもそもリード線が存在しない)のプラス側3cm程しかワイヤーを使っていません
・スムーシング・チョークは最大限大きく(30H)とってコンデンサーは少しでも小さくしたいのですが、安全保障上電解コンデンサーは現代部品からの選択ということで16μFとしています。ここは6〜8μFでも十分でしょう


写真に撮ると苦労は映らないんですが(笑)
長い間考え抜いた甲斐があったというものです

全てのCR部品はそれ自身の持つリード線の範囲内で組まれていて、ワイヤーによる所謂「渡し」にしている箇所はありません
出力管のRkから入力端子のコールド側まで1本のグランドラインを渡して信号の通る順番に流す手法はいつもの通りです
アースポイントは1点です、これで歪みが最も減りノイズが少なくなりました。理想的ですね

回路図にするとこのアンプは結構複雑な回路構成なんですよ、部品が少ないんじゃないの?と見えるようならちょこっと自慢です

なお、電源周りのワイヤーを過剰に余らせて回しているように見えるかもしれませんが
本機は「チョークコイル」「出力トランス」が直出しのワイヤーなので、パツンパツンに切り詰めてしまうと後々のメンテナンスや部品交換の際に痛い目にあうので可能な範囲で長く残してフォーミングしています


出力は 3.5W (CP)
残留ノイズ 2.4mV(200Ω)以下
周波数特性 15 〜 30kHz (-1dB)

特注した出力トランスが1932年の常識では計り知れない高性能だもんで
直熱三極管の古典回路としては規格外の高性能アンプが出来上がりました
というのはこの回路は本当に優秀なもので、部品の裏付けさえあれば現代的な「高性能アンプ」も真っ青の音が出るんですよ

さて、組み上がったアンプの音のことなんかリキんで語っても仕方がありません

聴く人の感性により評価は変わりますし、音はスピーカーから出るものですから特定のスピーカーを使って聞いた音の印象を語ってもそれらのスピーカーを所有していない人にとっては「アンプの音」をイメージするのは難しいでしょう

その前提で一つだけこのアンプの特徴なのかな?と思ったのは

我が家の常用アンプに比べ、春の朝の空気の透明感のような清潔でクリアーな空気感を強く感じます
これはシングルアンプの特徴なのか?トランスか?回路かはわかりませんが
理屈で追うと、広い周波数応答と低歪みの賜物でしょうね

しかしながら、我が家ではもう何年も聴いたことのない空気感でしたので、自分でも少し取り組んで見たいなあ!などというフラチな考えが頭をもたげていることを告白しなければなりません







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英国オーディオ旅行  二十年ぶりの民生機

我が家における英国式オーディオの火を消してはいかん!

と、この歳になって一念発起
20年ぶりくらいに民生機に取り組んでいます

まずは、入り口をご紹介しましょう

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CollaroのターンテーブルにDecca Super arm と PRO arm の2本体制です
それぞれに専用の(針圧の適合という意味で)ヘッドを使います
下のセレクターボックスは、2本のアームとステレオ、モノラルの切り替えを行います

ターンテーブルは当然のこと、フローティングしないとお話にもなりません
そのために、写真にあるキャビネットの決められた隙間に納めるよう上下ともミリ単位のクリアランスで押し込んでいます
今回のラインを組む中で一番苦労した点です

置いてあるレコードはオワゾリール パーセルによるシェークスピア劇の音楽に登場いただきました
エンシェントを指揮したホグウットの名盤です、これほどふさわしい1枚もそうありますまい

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ヘッドも少しずつ揃ってきました
まだいくつかはメンテナンスのために英国へ旅をしています

この中に一つ、中々の珍品が含まれています、そのあたりのお話は別途書きます



さて、今回もアンプはQUADにしました
これはもう腐れ縁のようなもので仕方ないですね

これ以外のメーカーの機械も随分とお世話になってきましたが、ことプリアンプに関してはQUADの方式が一番納得がいっているというだけの理由です
他社のアンプよりQUADが優れているとも思いませんし、もちろん劣っているとも思いません

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プリはいつものようにモノラルのを2台使います
このQUAD QCIIというアンプは4回ほどモデルチェンジをしていまして、中身の回路や部品の定数が変わっているのでステレオで使うときには注意が必要です

今回の個体はセカンドバージョンで、入力数やテープアウトの端子などが一般に見られるモデルとは異なっています
この時代のもので状態の揃った2台を見つけるのは難しいと思います、運が良かったです

ただし、EQカーブは見る影もないくらいずれています
英国から別途マイカコンデンサーを送ってもらいカーブを合わせました

カーブがずれている状態で何人か音を聞いてもらっています
みなさん、首を傾げて怪訝そうな顔で無口のまま帰られました

次回聞かれたときにびっくりしてもらえると思います
こんな古いアンプは買ってきて繋いだだけでは何の役にも立たないんだ、という重要なことをお知らせできる又とない機会でしたので、不備を承知で調整前の音を出しました(我が家ではほとんど完成後にしか人様にはお聞かせしません)

憧れのヴィンテージアンプを買うだけならお金との相談で済みますが
良い音楽を聞くことができるかは全く別の次元で、現状のままでは不可能に近いことです

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パワーアンプはお馴染みのQUAD Ⅱ型なんですが、売主は変なことを言っていました

曰く
「この個体は、再生産品である。電源を入れると一応音は出るが要修理品である。シャーシにはいくつか穴が開けられているので了解されたし」

こちらとしては、まあ音が出るんならトランスは逝っていないようだし、下手に部品が変えられていないのは願ったり叶ったりだからこれで良いか!と送ってもらいました


さて、パワーアンプのメンテナンスを開始しましたが、あらゆる点でおかしなことが起きます

1 Ⅱ型アンプで特徴的な豪華仕様のアクリル銘板の代わりに簡素なアルミ板の銘板がついています
しかもそこには、セントラルエレクトロニクスの注文により作られたとあります???

2 写真の通りシャーシの横腹に穴が空いています
寸法や形状から、ねじ込み式のプロ用のコネクターがつけられていたようです
反対側にも2個空いていて、スピーカーコードを引き出していたようです

3 写真上側のアンプの電源トランスには、昔懐かしいテプラシールが貼ってあります
よく見て見ると  「CH. 9」とあります
チャンネル9番???

4 同じく写真の通り、アンプの両端にはラックマウントごときな「ツバ」が付いています

5 最後に周波数特性を測って見ました
8kHzくらいから下降して高音が全く出ていません???
慌てて、近所でⅡ型をお使いのMさん宅で見せてもらうと・・・大きな発見がありました


出力トランスの仕様が違います
・・・初めはわからずに単純な配線違いだと思って配線をノーマル機仕様にしたら・・・危うくトランスを焼き切りそうになりました

そうと分かればこっちのものです
業務用ラインで使うための道具立ては揃っていますからお手の物、実際にはノーマル機よりもトランスを楽に使っていますから望外に優秀な特性であることが判明しました

思い返すと、Vitavoxのモニタースピーカーも同じ仕様だったなあ、あれがまだ手元にあればダイレクトに使えたのになあ
と思いましたが後の祭り、人間「知らない」というのは恐ろしいものです。もっともっと勉強しよ



さて、仕様の違いもわかってひと段落、続いてアンプの実際的なメンテナンスに移りましたが、これがまた大変なものでした

まず、50年代のカーボンコンポジット抵抗の狂うこと、狂うこと
慌てて同一部品を大量に英国から取り寄せました

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いくら新品といってもストックの抵抗も狂っています
一つの値の抵抗が10本あっても2本1組も取れません
そこは最後の手段を使って何とか2台分揃えました、大量の不使用抵抗が残りましたがこれもそのうち使うときがくるでしょうね

これまで長いことドイツ製の業務機を扱ってきて、金属皮膜系の抵抗を見てきました
何十台か100台近く直しましたが、抵抗値が狂っていたから交換した記憶がすぐには思い出せません


また、1本のKT-66が熱暴走を起こして原因の追及に時間を要しました
これも業務機ではあまり考えられないことです、不具合までのマージンや部品決定時の安全保障の感覚が大きく異なりますね





オーディオシステムの音を聞いて、あっちが良いとかこっちが好きだと言い放つことは実は造作もないことであり、どれほどの意味もないことです

ある時代に、ある目的や用途を持って作り出されたモノには必ず作り手の想いやそれぞれの時代の要求があります
現代に生きる我々にはその物の価値を正しく汲み取れているか?が問われているのだろうと思います


今回ご紹介した民生オーディオが生み出された当時の英国では、まだおそらくかなり身分の高い人たちが顧客だったでしょう
途方も無い大きなお屋敷の普段は家人も足を踏み入れないような離れや奥の院でお父さんだけが音楽を聞く部屋に置かれていたかもしれません
あるいは、来客からの羨望を浴びるようにしつらえた瀟洒なサロンかも・・・


いづれにしても、無粋な「家電製品」が見えているようでは興ざめです
QUADやLEAKがプリメインアンプであるにもかかわらず、プリを切り離して可及的小さな筐体に詰め込んだのちパワーアンプを人の目の届かぬ場所に離して押し込めるように設計されているのは決して偶然ではありません

私は以前にQUADを使っていた時も同じようにしましたが、こうした機械は必ずアンティークのキャビネットに入れて、使わないときには普通の家具として何食わぬ顔をしていなければならないと考えています


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これは20年ほど前に使っていたキャビネット

こちらが今回のもの

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そして、大切なことは
価格的には何十倍も開きのあるKlagfilmの劇場用システムと聞き比べて、やっぱり大きい方がいい!なんて無毛な感想を持って評論家ごっこをしないことです


素晴らしい京都のやっこ(四角に切ったお豆腐)にお醤油をかけただけのものと料亭の料理を比べて「俺はこっちの方が好きだ」なんて無粋なことを言っているようでは
この世界を生きていく資格が無いというものです








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お買い物で巡るジョンブル魂の真髄 〜 英国旅行 前編

英国は米国と並ぶオーディオ大国です

昔読んだオーディオ雑誌に「一流の音楽家を輩出していない国はオーディオが発達する」と言った素っ頓狂な記事があったのを思い出す、コンサートの質や量に不満があるからレコードにうつつを抜かす輩が多いのだと。その延長線上に日本はあるのだと
後付けの作文としてはなるほどと一瞬納得してしまいそうになるが、目の付け所がピント外れですねえ


人類史上稀なる上質な陶磁器を生産していたのは、元末から明初までの中国と安土桃山から元禄あたりまでの日本というのは一つの見解であるけれども、その時代に一流の芸術家を輩出していないからでも無類の陶磁器愛好家が多数いたからでもない
その問題については、かの北大路魯山人がきっちりと正解を出している

「焼き物を見るとその時代の生産国の趨勢がわかる。焼き物の出来不出来は国の国力そのものなのだ」と

企業でも国でも同じだけれど、メセナ活動や文化、スポーツ振興が盛んになるのは余力があるときに限られる
日本のオーディオ界が活況を呈したのはいざなぎ景気から続く安定成長期(田中政権の列島改造計画が功奏した)故の賜物だ、著名音楽家の輩出とは無関係の純粋に経済活動によるのである

そして21世紀の時代の寵児は中国になり電気機器製造の多くは大陸に移ったが、JBLやTannoyを凌駕する製品がかの地からは到底生み出されそうにない
同時に中国人のバッハやベートーヴェンが出ることもないだろう  

衣食足りで礼節を知る。とは日本の言葉だけれど遊びに使える小金のありがたさは国も時代も違えども何処も同じということだ
渦中の東芝が”あの”サザエさんの提供を下りるかどうかの瀬戸際だそうだ、頑張れ東芝!


オーディオ界に目を戻して見ると、先の大戦が終わって世の中が落ち着きを取り戻した頃から本格的に家庭用オーディオの普及が始まった

1947年にLPレコードの販売開始  ちょうど10年後にはステレオレコードの実用化を達成している

CDの販売開始を1980年とすると、その上位規格であるSACD・ハイレゾが生み出されるまで23年以上かかっていることを鑑みても如何に力が入っていたかがわかるというものだ
その上、その上位規格自体がヨロヨロとして独り立ちできないのはマクロ経済の先行き不透明さが影を落としている
(ちょっと大人の話をすると、10年前にSPからLPへの変革という巨額の投資をした新技術をあっさり改定できたということは業界全体で投資の回収が済んで、且つ利益に転換していたという認識があったからに他ならない)



さて、英国のオーディオ機器を買いました

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右はワーフェデールのW2タイプの最初期型
有名な音場型のW4型=エアーデール3兄弟の末っ子にあたり 唯一の2wayで且つ唯一全てのユニットが正面を向いているオーソドックスな構造を持ちます・・・ということはすなわち最も正しい音場を再現できるということです

このユニットがまた化け物で
ウーハーはチコナル・マグネットを背負い、さらにツィータはアルミボイスコイルを採用する同社の最上級ラインである「SUPERシリーズ」のユニットが奢られています

30cmウーハー
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ツィーター
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このスピーカーは当たり前といえば当たり前ですが音出しから1秒以内で嫁ぎ先が決まりました
今はもう我が家では聞けません。でも致し方ないことです

2017年にこの仕様でスピーカーを作ったら数百万円近いプライスタグが付けられることでしょう
何せ現代は300万円で売っているスピーカーシステムの修理交換ユニット代金が○万円と言われる時代ですからね

1950年代の英国では、たかが電気蓄音機にかけられるコストが現代の数倍はあった、それだけかけても元が取れた時代だったということです

それによって出てくる音の差・・・性能の差と言い換えてもいいですが、申すまでもないことです



一方、左側のスピーカーは私の心の友 Lowther の LIB(ローサー・アイデアル・バッフル)の最も初期のオリジナルです
格子柄のネットが美しいですねえ

ユニットはもちろん20cmフルレンジが1発だけ入っています

音味は大型ホーンスピーカーの音がします
大型の???  ホーンスピーカー???  20cmのコーン型なのに???

大型のホーンの親玉といえば、そうです、蓄音器の音がする稀有なスピーカーですよ、これは
聴いてみないと信じられないですよねえ

その秘密はですねえ
ローサー社は、自社製スピーカー(用途により数種類あるが全て20cmコーン型)のことを「ドライバー」と呼んでいるんです
ボックスに入れたスピーカーではなく「バッフル」または「ホーン」を駆動する「ドライバー」であると

製造者自らが一般的なスピーカーとは異なる意図で作っていると告白しているローサーを鳴らすには相応のお作法が必要になります
オーディオマニア用語でいうとアンプを選ぶということになりますが、もともとスピーカーとアンプはセットで考えるべきであって、全てのスピーカーは生まれながらにしてアンプを選ぶものですから何もローサーに限ったことではありません

その中で、ローサーは少々オーディオマニアのセオリーから外れた使い方を要求されるかもしれません
同時代の英国のちょっと尖った・エキセントリックなスピーカー(QUD ESL  ステントリアンやGoodmansの一部もそうかもしれません)達ももしかしたら同じ傾向があるかもしれませんが、アンプ単体で立派なものを繋いでも少々神経質な薄っぺらい音にしかならない場合があり、海の東の端の黄金の国のオーディオマニアの間ではこれらのスピーカーに対して少々ネガティブな印象が付けられているように感じないでもありません

ま、何事も使い方次第なんですけれど


本日は紙面がつきましたので(笑)
重要なアンプに関しては次回にいたしましょう









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