この家の音には敵わないなあ と 思った  (証拠編)

オーディオの本懐はなんぞや、と考えるとき
これを通じてサーブされる楽興に涙することであるというなら反論も少なかろうと思う

そのためには、演奏法や人気歌手の動静にばかり目がいくレコードバカでは片手落ちだろうし
10年一日のごとくおなじCDを握りしめて音の些細な違いの評論に終始するオーディオバカであってもまた本懐は遂げられまい

音を聞き分けるには音楽が必要で、音楽を楽しむにもまた音を聞く以外にないというのは、改めて申すまでもないことだがこんな当たり前のこともつい忘れられているのような気がしてならない




では、今日の本題ですが
あなたがオーディオのお友達の家に行って一緒に音楽なりオーディオなりを楽しんだとしましょう、今風にいうとオフ会とでも言うのでしょうか・・・WEB上のオンラインが生活の主線だなんてずいぶん突飛な発想だと思いますが・・・


そこでもし
ああやられたなあ、いい音だなあと関心した時にあなたは明確な行動に出ますので悔しくたってまずは素直に負けを認めて足元に平伏しましょう(笑)

・・・それはある1曲とセットになった局地的敗北なので、何にも気にすることはありません
よくぞこのCDを見つけてきて、ここまで上手く鳴らしたねえ と、快く勝者を讃えてください


オヤ!今そこのあなた、ポケットから徐ろにスマホを取り出して
かかっているレコードやCDのジャケットをパシャりと写真に撮りませんでしたか?

そしてこう思ったでしょう、帰ったら早速ポチッとして同じCDを手に入れよう

私個人的には、この行為は「オーディオ敗北宣言(爆)」なんです



上述した通りオーディオから出てくる音を通じて音楽を聞くので、音楽だけでなく音にも関心したからこそ初めてそのソフトを欲しいと思うのです
そこには、こんな心理が働いています

なんて素晴らしい音と曲なんだ
このCDを買えば我が家でもこれと同じ音響的成果を手中に収めることができるのではないか!?






大きな恥を忍んで告白しますと、私もいくつもの軍門に下ってきましたよ

PICT4866.jpg

これはその代表的な一枚で
盟友Hさんの、川中島の和室の夜
WE728BのダブルにALTEC804+WE12025ホーンで叩き出した若きホロヴィッツ渾身のクレメンティで、冒頭の一撃から頭蓋骨を打ち砕かれんばかりの衝撃でした

また、この夜聞いたセルのマーラー4番は、この時ほど第二楽章のFiedel(の音)が悪魔的に響いた経験を私は持ちません

あの夜のスピーカーやアンプの白熱灯に照らされた姿や庭の様子、床に敷かれた中国段通の模様の一目まで克明に脳裏に焼き付いて離れることは決してありません、まさに五感に刻み込まれた衝撃であったのです

当然ですが2枚ともすぐにあちこち手を尽くして入手しました、もちろんオリジナル盤です
到着が待ちきれず心を踊らせて聞いてみました

結果はご想像の通りです

H邸で聞いた演奏に「足下にも及びません」

このようなレコードはまだたくさんあるのですが、
いずれも愛聴盤までには出世できず・・・なぜ「足下にも及ばないのか?」は大きな壁になって立ちはだかった


結局のところ自分にとってこうしたレコードは

「Hさんのレコード」なのであって自分のモノになりきれない、と言うよりは一生かけてもなりっこないモノだったのです

この当たり前のことが解るまで長い年月がかかりました、自分は物事が分かっていない未熟者だと思い知らされました
それが分かって以降、人様の家で聞いたレコードやCDを追いかけて買い足すことをほとんどしなくなりました

歴史的名盤や聞いてみたい盤を購入するのと並行して、できるだけ
誰かに教えてもらったのではない、書籍やネットで紹介されたものでもない未知のレコードの中から、純粋に音楽だけに感動を受ける=つまり前知識や先入観や過去の評価を受けていないレコードを探し出す事を心得るようになりました

実践としては、訳のわからないレコードを鼻の効きだけで闇雲に買うのですから、100枚買って1枚残るだけかもしれませんが、何年も続けていると徐々に打率が上がって今では相当な確率でヒットを打てるようになりました

PICT4867.jpg

近所の書店のエントランスに出張販売に来ていたレコード売り場で見つけた。米)コロムビア6目オリジナルなのに3000円ほどで買ったと思う、不人気盤の特権
レーニャの3文オペラなんて識者にしたら著名盤かもしれないが、少なくとも自分にとっては何もかもが初見で購入



前回から続くこのテーマは、気づいていない人から見ると「何おかしなことにこだわっているんだ、コイツは」と思うかもしれません

オーディオの使い方(私の嫌いな言葉で「使いこなし」)でも同じなのですが
自分以外の誰かが言い出したことや選別した後の後追いをいくら頑張っても、「そこそこ良い音が出ている」以上のモノが出来するとはとても思えないのです


本物と偽物の見分け方は「取扱説明書」もなければ「骨董店店主の太鼓判」や「公衆トイレの落書きのようなネット上の書き込み(このブログも含めて)」なんかも何一つ信ずるには値しません
自分の感性を磨き、理由は語れないけれど偽物を見抜ける能力を自分自身が獲得するしかありません




最近、こうした事を確信するような体験をしました

一つは、小布施町のJazz喫茶 BADさんのお店の音
マスターが「これが一番好きかなあ」と言ってかけてくださったショスタコ自作自演のプレリュードとフーガ
私は全く初見でしたが、その音を聞いて些か背筋に冷たいものが流れるような凄みを感じました

こちらのマスター個人はオーディオには全く頓着せずハード面は専門家に依頼して喫茶店を始めました
お店を始めてから15年ほど経つとのことでしたが、その間オーディオマニア的な「音質向上策」には背を向けて「グレードアップ」もすることなく、ただ15年好きな音楽を聴き込んでこられた結末の「凄み」なのです
マスターだけの世界にある音でした、決して人真似で到達できるような座標面には存在しません


あのレコードを我が家でも聞いてみたいと思いますが、あんな音は絶対に出っこないと分かりますので手が出せません

一人の人間の音楽人生から染み出した音なのですから、別の人生を歩んで来た私の家では別の音になるのは至極道理なことなのです



後編に続きます







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この音には負けたなあ!と思う瞬間 (序)

さて、前回に予告したハイレゾ・レコーダーのレビューですが・・・
あまりに虚しいのでやっぱりやめました

私のうちと全部同じ装置を組んでいるお宅はゼロですし、よしんばコード1本まで全て同じであったとしても出てくる音は全然異なるのがオーディオの本質なのに、パーツ(レコーダー)一つの印象を語ってもクソほどの意味もないと思うからです


            フルトベングラーっぽく     「音と言葉」


余談ですが、ずいぶん前にオークションに真空管アンプを出品した際にこんな質問がありました

「もう少し詳しく、音の印象を教えてくれませんか?」

これには困ってしまいました
お相手の方のスピーカーやプレーヤーが分からないのに、なにを書けばいいのでしょう

手詰まりになった私は、机の下に置いてあった雑誌に同じ出力管を使ったアンプを見つけ、その記事を写して誰々さんの記事にはこの様に書いてあります。と返信しました

たいそう喜んでいただいて、こちらの予想以上の金額で落札いただけました
仕事としてのマーケティングとしては成功の部類でしょうが、自身の気持ちはやるせないものが残りました




私がオーディオって凄いなあと思うのは

どんな高額な装置を並べたどんな大きな部屋でも
また空想や妄想を元にどんな立派なご高説を吐いても

結局のところ  「音は出てしまう」 こと・・・すなわち

音を聞けば全て明白になる  ことだろうと思う

言葉なんて一つも無くたって  あるいは美辞麗句の百万言を費やそうとも 音は正直でそして時に残酷だ





2年ほど前に、あるネット上のコミュニティーのメンバー間でいざこざがあったのはこのブログでも少し触れた

その様な衝突は日本全国どこでも多少は起きているだろうし、幾度か耳にしたこともある

自分なりに衝突の原因を考えると

自分の好きな音 だとか流儀  を硬く信じるあまり他の流派を認めない狭量の問題とする



さらに「俺の好きな音」は中々に困った思想で、その家の音がいつまでも良くならない大概の原因もまた「俺の好きな音」にあるとも書いてきた

つい最近も体験したけれど
「俺の理想の音」とやらがある人は「目の前で出ている音」と理想とのギャップばかりが気になって、いつまでも心がすっきりと晴れることがない様子だ

それが自宅の音ならば
オーディオは泥沼だ、地獄だ、あれを買わなきゃ、セッティングをいじって、ケーブルを変えなきゃいい音にならない・・・と音質対策という名の責任転嫁(本名グレードアップ)に走るし

他人の家の音ならば
望まれもしまいのに評論家気取りで、ここがいけない、あっちが気にくわない、とやるので衝突になる

どちらも生まれ変わらなきゃ治らないほど、絶対的に困ったことだ



コレも何度も書くが、私には理想の音も好きな音もない
だから自分の家でオーディオを聞いて良い音だと喜んだこともないし、悪い音だと落ち込むこともない
当然、音楽を聴きながらオーディオの音をどうしようと考えることもない

いい録音だとか素晴らしい演奏だ なんてことは毎日言っているがそれは100%レコードへの感想だ
オーディオ機器の中には音は1秒だって入ってやしない=無い物の感想は述べることができない


蓄音機もハイレゾもあればありがたく聞く どっちがいいも悪いもない  演奏の良し悪しにメディアは関係ない
繰り返しになるが、劇場用のKlamgfilmよりも20cmフルレンジ(Lowther)でのみ涙できるレコードもこの世には数え切れないくらいあるのだ




上のコミュニティーには私も少し加入したことがあったが、
そこでの話題の中心は十年一日のごとく「音質向上策」について無限ループの様にぐるぐる回っていて

初めの頃は、そのうちキャリアを重ねて変わっていくのだろうと思っていたがこちらのボキャも尽きて、掛けてあげる言葉が見つからずにフェードアウトしてしまった
それから半年ほどで、前述したトラブルが勃発したので幸いにも渦中にあらず胸をなでおろしたものだ




そのころ一つの、見逃せない大きな発見をした 
というのが今回のテーマなのでご紹介したい

その昔、オーディオマニアの先輩の五味康祐さんが書いていたけれど

オーディオマニアの友達は所詮碁敵の様なもので、他所で良い音を聞いたときはナニクソと思ってまた切磋する関係

こんな感情は何と無くわかる気がする
悔しくもいい音だったなあ、なんて思った時には少しでも見返してやろうと無意味な投資をしたりするものだ



ではでは、
貴方がどなたかの家を訪ねた時に

こりゃ一本取られたなあ!いい音だなあ と、頭では認めたくなくても心が認めている
絶対バッチリの判定法があるので、次回お教えしましょう



ここで、自分が楽しめばその音がいいじゃん、勝ち負けなんて関係ない!なんて間抜けなコメント書かないでね
そおいう次元のことじゃないから







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