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雨の一日に聴く曲  マーラー 「大地の歌」

昨夜からの結構な雨ですが、「雨の日に家の中にいるの大好き派」としては、まったりして過ごしています。

さて、今年はマーラーの没後(ですよね)100年だそうで、放送番組なども組まれているようです。
しかしながら、個人的には最も聴く機会の少ない作曲家の一人になってしまいました。

自称、「モーツァルトが解らないウツケ者」ですが、それでもオペラ、ピアノ・Vnソナタ、交響曲ナドナド各カテゴリーの中には幾つか愛聴の曲もありますけれど、マーラーは現在手持ちのレコードを見ても


「大地の歌」  2,3枚
「交響曲 4番」  2枚 「名人セルとカラヤン先生」

多分、これ以外にあってもカップリングの小曲だと思います。
こんな人間が今日はマーラーのレコードについて記事にします、マーラー好きの方には平にご容赦願いたく。




中高生の頃の音楽やオーディオの情報源というと「週刊 FMfan」からが圧倒的でした。
当時は音楽を聴くこともFM頼りでしたし、長岡鉄男のダイナミックオーディオ(かな)は新商品案内が見どころでしたね。
学友の多くはライバル誌の「FM レコパル」を読んでいたようですが、週刊FMは何となくクラシック情報が多かったような気がして購読していました。

この週刊FMに連載されていた、「偉大な演奏家」のエピソード集の記事が秀逸でした。
その中で読んだワルターの回が、今でもマーラーを想起するときに必ずつきまとうイメージになっています。

ワルターは若い頃マーラーに付いて指揮の、恐らく作曲も勉強をしていた。
ある日、オーケストラの練習で、サブ指揮者のワルターは指揮台の脇で練習を聴きながら勉強していた。
指揮をしていたマーラーは、ある楽器奏者の演奏が気に入らなかったらしく何度かやり直しをしていたが

「私の隣から、突然ウサギを見つけたオオワシが巨大な羽を広げてバサーっと飛び立って行ったような勢いでマーラーは件の奏者の元へ飛来し、音楽会場には似つかわしくない罵詈雑言を浴びせた。」

こんな感じの狂信的な音楽家の面だけがなぜか意識に残って困っています。


さて、そんなトラウマを持つ私に、ピッタリなのがこの曲なのは偶然という訳ではないように思います。
DSC03563.jpg
英)DECCA  LXT-2721-2  Das Lied von der Erde B/Walter VPO Ferrier Patzak

大地の歌なんて余裕でLP1枚に収まるのに、リュッケルトによる3つの歌が入るにせよ何故2枚組か!?後半へ続く。


曲の話や、演奏に関しては何も語ることはないですね。
僕のようにマーラーを聴く機会の少ない人間でも、必ず持ち合わせないとならない1枚でしょう。

「大地の歌」って言ってますけど、「命の歌」ですものねえ。
そのことについて、一際考えさせられる演奏ですね。 
太宰の小説のようにと言っては言い過ぎでしょうか、そんな評論は専門家の方にお任せしましょう。


さて、このレコードは一種の「オーパーツ」といえる物で、なぜ、1955年当時コロムビア専属であったワルターさんがDECCAに、それも1枚だけレコードを残したか?というのは興味深い謎ですね。

実際のところは、Decca専属の大物とバーターでお互いにワンセッションづつ録りましょうとなったようです、しかし更に突っ込んで邪推すると余計な心配をしてしまいます。


ワルターさんは、ご存知の通りユダヤ系だったものですからナチにその地位を追われて米国へ向かいました。
その逃避行前はウィーンの宮廷楽長でもあり、大成功の思い出もあったためにウィーンフィルには特別な想いもあったでしょう。

そして、20年ぶりの相思相愛の相手とのたった一度の再会セッションに選んだ曲がこの「大地の歌」だった訳です。
これはDecca側の希望だったのか?本曲の初演者たるワルター側の強い想いだったのか?想像するだけでもワクワクするセッションだったと思います。

通常は会社側の制作プログラムに沿って企画制作されるのが当たり前ですが、この一瞬のランデブーをワルターの想いと切り離してしまうのは、「粋」とは言えない気がします。

DSC03568.jpg


さて、このレコードが作られる背景にはもう一人の重要な役割を持った人物がいました。

その人は「ヴィクター・オロフ」
Deccaのウィーンにおける有名なチーフ・プロデューサー「ジョン・カルショウ」の前任でありウィーンの音楽家達から父の如く慕われた人物です。

カルショウの手記などでは、頑固オヤジ的な堅物のような印象を受け、カルショウやレッグに比べ華が無いために名前は出ませんが、レコード制作の手腕は(一時代前的だけれど)余人の追随を許さない巨匠の風格があります。
この人の残したレコードは「大名演」「超優秀録音」の宝庫です。

この収録が行われた1955年当時は、LPレコードの制作手法や録音機材が頂点を極めていた時期でDeccaに限らず世界の各国で人類史上に残る優秀録音が多数行われていました。


オーケストラの録音に限っても十指に余る優秀録音がありますから、これ一つを取り上げて「絶対無二」などと申し上げる積もりはありません。
しかし、少なくともオーディオに親しみ、クラシックを聴く身であるならばこの録音を体験しておくというのは悪かろうハズがないと思います。



現在、CDになってどのような音響が聞かれるかは残念ながら私は存じませんが、このレコードの情け容赦ないグルーヴのうねり方を見ますと、LP3面を使ってカッティングせざるを得なかったんだろうと納得ができますし・・・

売上を犠牲にしてもその英断をした経営陣(多分Sir、アーサー・八ディ卿)に深い尊敬と感謝の念を21世紀の今になっても捧げる他ありません。



そして、各章末を締めくくるのは・・・ずっと頭を離れないこの言葉

「生も暗く、死もまた暗い(Dunkel ist das Leben, ist der Tod!)」





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コメント
kaorin27さん こんばんは。
 『週刊FM』…懐かしいですね。中学生の頃、よく読んでいました。友達と一緒に番組表に赤鉛筆でマーキングしてましたね。同じ頃、ワルターの1950年代のモノラル録音が、CBS SONYから廉価盤でまとまって発売され、モーツァルトやベートーヴェン、ブラームス等をよく聴いていました。残念ながら私もマーラーは苦手で…。
2011/06/01(水) 18:27 | URL | 芳賀 瞬 #-[ 編集]
こんばんは、コメントありがとうございます。

そうです、聞きたい&録音したい番組には印を付けていました。
特に、演奏会の収録番組が結構あって、海外ものの他、国内では
聞いたこともないのにNHKホールは音が悪い!とか生意気言って。

昭和女子大人見記念講堂なんて名前を覚えて思春期の胸をトキメカシ
たのも週刊FMのおかげでした。
2011/06/02(木) 00:49 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
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