いくつの「いい音」を持っていますか?

今年のGWは沢山の方にお越しいただいたのですが、5月中は他のテーマについて書いており手を付けていませんでした、しかし色々と勉強になることもあったので遅れましたが記事にしたいと思います。


休みも後半(私自身はずーと休みなんですが)になり、ブウウーーっと低いエンジン音が聞こえてくると我が家ではついぞ見たことのないシルバーの「どら焼きの親玉」のような薄い物体が駐車場へ滑り込んできました。

110508_143713.jpg
ポルシェの「なんとかー」という2シーターミッドシップのスポーツカーでした。
400kmの遠来のお客様です。仮にAさんとお呼びしましょう。

Aさんは、私の使っていたEurodynを買って頂いたご縁でそれ以降何度か行き来させていただいています。

確か音楽を聞いている部屋は我が家と同じ位の広さでしたが、職住近接の職のスペースにも何台もスピーカーを持ち込んでいて、現状で10セット以上音が出るようになっているはずです。
最近はWE4181を4台買ったので(594は既にある)ツインでやってみるとか、訳の分からんことを言っていた。


さて、今回は一泊の予定だし、我が家だけでは物足りないと思ったのか、同好の士を紹介してとの要望で、一緒にYさん宅へお邪魔した。
僕とYさんはオーディオだけでも30年来のお付き合いで、機材の変遷も聞いている音楽も熟知しているといっていい。

きっちりと育ちの良いYさんは、遠来の客人のためと色々な組み合わせで音を出してくださった。
Yさんの御宅には、3つのスピーカーがある。

1.WE555を中心としたフィールドコイルの3Way

2.Sentorian の7インチフルレンジ

3.最近導入された JBL D130と175DLHの2Wayモノラル (型名は不詳、グレー塗装のフラットバックのやつだ)

各々、ステレオソフト、SP復刻など古い録音、JBLはLPモノラル時代の再生をそれぞれメインに担当させている。


僕自身も過去は似たような経歴を持っていて

SPレコード    蓄音器

SPレコードの電気再生用とSP復刻LP(~1946年頃)  WE555+カールホーンなど

LPモノラル (1946年~1957年)  WE728+WE713+WE31 や Klangfilm KL-L305など

LPステレオ (1957年以降)  Eurodyn   ALTEC A-5  Lowther PW-2 など


詰まるところ、あれもこれもと種類の異なる機械を「不本意ながら←ここ強調」揃える必要に迫られる理由は
レコードの形状の違いや周波数帯域が拡大する歴史を追いかけ、それぞれのレコードをまあノーマルな状態で再生するためには、同じく機械側の歴史を追体験するしか他に道が無いからです。

DSC03275.jpg
準備は出来たのに、グズグズしてちっとも実験の出来ていない、クレデンザ再生用のドライバー。

DSC03267.jpg
計画通りならこんな感じに付くはずだ!  これを作ってからもう何年たったのやら・・・・



Yさん宅でたっぷりと音楽を聞かせて頂いた私たちは、夕刻には辞して食事に向かいました。

そこで、AさんはYさん宅の状況について、かなり「怪訝」に感じたという旨の感想を述べられました。
始めのうち、私にはその主旨が掴みきれずにおりました。しかし、或ことに気付いて「Aさんの戸惑い」を理解できたのです。

これはちょっと言葉にはしにくく、誤解を恐れずに言ってしまうと

Aさんが追い求める「良い音」には絶対無二の頂点があって、自身の信じるオーディオの目標は一点ではないか?と感じました。
それならば、常に最新の技術を信じても良さそうだが、古い機械を使っているから余計話がややこしくなるのだ。

対して、Yさんの御宅の3つのスピーカーはそれぞれ別のアプローチで音楽を表現していた。
音の要素のプライオリティがひとつではないという意味だ。


Aさん程のキャリアと使用機材をもってしても、求める音は一つだけ。というのはある意味素晴らしいことかもしれません。
オーディオの持つ本来的な使命、「フォノグラフ=音の記憶」からすると本道だと思います。長らく日本のオーディオ界を覆ってきた「原音再生」の精神ですね。

これに対して、私のように異なる複数のスタンダードを持つのは、130年という長い歴史を刻んだレコードをどうやって再生するか?という意識だろうと思います。
よって、私は人生で一度も自分がオーディオマニアであると考えたこともなく、「これが自分の音だ」という嗜好もありません。
多くの機械と遊んできましたが、それぞれを聞いた友人が「お前の音だなあ」と言ってくれるので、そうなのか。と思うだけなのです。



Aさんからはご帰宅後直ぐに、丁寧な書状と極上の「浜茹しらす」を送って頂きました。
その中には、こう記されていました。

「目指す方向は私とは違いますが、再生音の一つの方向を示していただき、大いに勉強になりました」

いえいえ、こちらこそ普段は「当たり前」と思っていた事を改めて考える機会を頂きました。
Aさんも「何か」を気付かれていたのでしょうね。



いつもの通り、SP、モノLP、ステレオLPと各カテゴリーでスーパーなレコードを聴いていただきました。
ステレオで選んだのが以前にご紹介した、「ファリャの三角帽子」です。

聴き終えたあと頬を赤くしたAさんから思いも寄らない言葉が発せられました。

A 「確かにすごい音だってのは分かるけど、でもこのレコードは例の高いやつでしょ?」

私 「まあ、バブル頃は随分高かったと思いますが、今頃は当時の半額になってますよ。」

A 「・・・ レコードにそんな金額は出せっこない!!!!!!」

私 「はあ?? あんた先日 WE300Aを4本買って ○○○万円払ったって言ってたでしょう!」



あなたは幾つの「良い音」を持っていますか?





私を含め、現在95件のピュアオーディオ・ブログが参加している、ブログ村オーディオカテゴリーへのリンクです。
是非覗いてみてください。ウエスタンや自作アンプ、自作スピーカーの情報が盛りだくさんです
にほんブログ村 PC家電ブログ ピュアオーディオへ
にほんブログ村

同じく、現在315件のクラシック音楽ブログが参加しているリンクです。歴史的名盤から、ニューリリースの感想まで、私もレコード探しの参考にさせて頂いています。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村





スポンサーサイト


コメント
Kaorinさん

こんばんは

JBL D130と175DLHの2Wayモノラルは多分D1050ですね、キャビの色で1004と1005の違いが、でもマルチセルラの方がWesternっぽいですね。


面白い実験ですね。D173246をクレデンザWood Hornで鳴らすんですね。
でもルックスはうーーーん

ところでこのD173246のダイヤフラムはフェノリックでしょうかそれともアルミ合金どちらでしょうか?

BeachMaster等にはフェノリックが使われていたようですが、、、、、
2011/06/03(金) 00:40 | URL | mambo #n9Bk/wZI[ 編集]
mamboさん、こんばんは、

JBLは私が詳しくないので、詳細に紹介できませんが高音ドライバーは
小口径蜂の巣のホーンに付いていました。

エナメル系半艶グレーで端子はハンダです。
箱入りではなくユニットとXOのセットでした。


そして、家のドライバーはそのような立派なのではなく、ALTECの730です。
本当はLagevinとかの720ですと蓄音器に付けたときに帯域がピッタリだったのですが
最近は妙に入手難で諦めています。

720の振動板はフェノリックでした、730も恐らく同じではないかと。
旅客機の機内放送に使われていたヤツがフェノールだそうで、同じくらいの帯域なら
いいなあと思いますが、Music用はさすがに広いですかね。
2011/06/04(土) 00:06 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
こんにちは

この記事には考えさせられました。
同じソースを複数の装置で聴くている場合は、目指す方向が
一つに収束していく気がしますが、ソースが複数(SPとか)
になってくるとやはり目指す方向は多様化せざるを得ないので
はないかと思います。
モノラルとステレオを一緒にしている私などは、まだまだ中途
半端なのかも知れません。
それぞれの道を極めるというとカッコいいですが、結局はその
ソフト特有の魅力を引き出す手助けをするだけなのかなって思
いました。
2011/06/04(土) 14:06 | URL | メタボパパ #-[ 編集]
クレデンザのドライバー駆動、非常に興味を持って拝見しています。
ぜひレポートをよろしくお願いいたします。

ボクのHMVでの拙い経験では、普通のスピーカー再生に比べてクセはありますが、
それがソースのツボに嵌るとタマりません(笑)。
2011/06/04(土) 17:02 | URL | ibotarow #iaNYWVsc[ 編集]
Kaorinさん
こんばんは

私はフェのリックのダイヤフラムの音が大好きです。

友人にお勧めしたGaussのHF4000に偶然 オリジナルフェノリック付のものが入手できたのでですが、音の柔らかさときたらアルミと
は比べ物になりませんでした。

>ALTECの730
そうでしたか、わたしはてっきりWEだと、、、、

でもこの時期のこのタイプは殆どフェノリックではないでしょうか?

それにしても最強のWoodHornだと思います。
Horn長は1.5mほどあるのではないでしょうか?
喉のところの真鍮といい、とても柔らかく、人肌が感じられそうですね。
グレデンザ、そろそろポチッちゃおうかしら? でもなあそっちの世界は、さらに泥沼っぽいからなあ、
2011/06/04(土) 23:52 | URL | mambo #L19/bMsE[ 編集]
kaorin27さん こんにちは。
 各ソースにたいして愛情を持ち、敬意をはらい、
律義であればあるほどkaorin27さんのようになら
ざるを得ないでしょうね。私はサーフェイスノイ
ズ恐怖症の重症患者なので、もっぱらCD(このネー
ミングは大嫌いなので、ディジタルレコードとでも
呼びたいのですが)だけですが、そのせいで失った
ものも少なくないと思ってしまいます。
2011/06/05(日) 14:21 | URL | 芳賀 瞬 #-[ 編集]
メタボパパさん、こんにちは。

パパさんが以前、帯域を広く取ると、真ん中のエネルギーが薄くなる気がするという
記事を書かれていましたね、今回の記事はそれに対するオマージュのようなものです。

EMTの針先を見ても6μ、12μ、15μ、25μ、60μ、80μ・・・と沢山あります。
勿論グルーヴの太さに応じてですが、中音のエネルギーの推移ともピッタリとリンク
していますね。
SPや初期LPを聴いて「高音が伸びていない!」と腹の中で思っている人は沢山いると
思います。(高そうな盤なので口には出さないが、顔色で想像できる)

しかし、それぞれの時代のレコードに入っているものを、現代的Hi-Fi嗜好だけではなく、
各々の特徴を活かして十全に発揮させてあげることはとても大切だろうと考えています。
2011/06/05(日) 14:27 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
ibotarowさん、コメントありがとうございます。

本当にご無沙汰してしまい恐縮です。
教えて頂きたいことは沢山あるのですが、その手前のチンマイことで
右往左往しています。

さて、電蓄化計画はアンプまで揃えてみたのですが愚図で進みません。
自戒の念を込めて写真を使ってみました。

多少なりともご報告できるよう頑張ります。
今後ともよろしくお願いします。
2011/06/05(日) 14:31 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
mamboさん、こんにちは。

730をつないで針先掃除の音を聞いてみましたが、こりゃフェノリック
ぽいですね。
サウンドボックスのような「カサカサ」感が丸みがあって独特です。
金属では555でしか聴けないような「カサカサ」感でした。

クレデンザのホーンは昔の勇者が「蜂」だったかな、に糸を括りつけて反対側から
明かりを灯し、中を飛ばして計測したらしいです。何mだったかしら。

蓄音器は流石にご高齢で個体差が激しいと思いますが、乗り切る根性さえあれば
(manboさんなら文句なしでしょう)得られる成果は途方も無いと思います。
2011/06/05(日) 14:40 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
芳賀さんこんにちは、コメントありがとうございます。

そうですか、サーフェイスノイズが苦手ですか。
人により、他の人が想像もつかないような嗜好ってありますね。

どのように表現したら正確なのか難しいのですが・・・

僕は逆にCDの曲の始まる直前のザワザワ感が苦手です。
勿論、CDですから無音なんですが、何となく部屋の空気が落ち着かない
というか、さわさわした感じを感じるのです。
まあ、我が家のCDのラインが皆さんのほど熟成されていない古めかしい
ものだから仕方がないのでしょうが。

対して、レコードはたしかに「サー」とか「プチ」とかいいますが
曲の始まる直前にスピーカーの方へ体を引き込まれるような静けさを
感じるんです。

どう言ったら近いかな、
雪が降る夜は、晴れた夜より耳に静けさが沁みるって言うと(北海道でしたね)
お分かりですね。
シンシンと雪が降るって、そんな感じです。

「シンシン」って言葉にしちゃったから無音ではないけど、無音より静かっていうのかしら。
2011/06/05(日) 15:02 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
kaorin27さん こんばんは。
 いやー、面白いです!kaorin27さんは、レコードに雪の夜の
静けさを感じ、(そうです。仰るように、あれは確かに静けさが
聴こえてくるのです。)一方私は、CDの出現によって「これで
ドビュッシーのピアノ曲がやっと聴ける」と安どした。普通は
考えが一致して、そうか俺もなんだ、となって面白いとなる。
でも、自分とこんなにも違う、そしてそれが、こんなにも
面白いなんて、不思議で愉しいです。
2011/06/05(日) 20:06 | URL | 芳賀 瞬 #-[ 編集]
早速のご意見ありがとうございます。

いやーいいこと言われました。
「静けさが聞こえてくる」ホントそんな感じですね。
南国の方には共感されにくかもしれませんが・・・
「白い色の紙」と「白い絵の具を塗った紙」って質感が違いますね。そんな感じです。

ドビッシーのピアノのお話もその通りですよね。
CDって超高級植物図鑑のべらぼうに細密な花の絵のようです。
レコードは窓から差し込む光が空気の分子すら感じる室内を書いたレンブラントの絵のようです。

非常に興味深いテーマですね。
2011/06/05(日) 21:07 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
kaorin27さん 納得です。
 レンブラントです。俗に『光と影の画家』などといわれますが、
実はkaorin27さんが言われるように、彼が描いたのは空気感では
ないかと。その空気も均一ではなく、粗の部分と密の部分があって、
しかもその空気は動いている。それがなんともアナログレコード特有の
生々しさに通ずる感覚なのではないかと。質感の件もしかり。そして
さらに人間の五感は細部まで嗅ぎわける力をもち、絵具を塗っても、
その絵の具がチタニウムホワイトとシルバーホワイトじゃまた違うとなる。
ホルベインとルフランじゃ違うとなる。われわれの感覚がもう少し鈍ければ、
オーディオの泥沼も浅くて済むのになあ…。
2011/06/05(日) 23:18 | URL | 芳賀 瞬 #-[ 編集]
こんばんは、

> オーディオの泥沼も浅くて済むのになあ…。
泥沼ですか!?
おかげさまというか、ありがたいことにというか泥沼感を一度も
感じずにこれました。
いつも、いい音出してくれてありがとーってやつです。

No天気なのか、仰るところの感覚が鈍いかですね。(笑)
2011/06/07(火) 01:24 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
kaorin27さん こんばんは。
 何度も返答して下さって、ありがとうございます。身の周り
に同好の士がいないもので、オーディオにかかわる対話が楽し
いのです…。
 感覚が鈍いなんてとんでもないですね(笑)。あなたから発せ
られる鋭い言葉のひとつひとつに私は「おっ!」「ふーむ!」
「あっ!なるほどなあ…」とひざを叩いたり、腕を組んだり。
泥沼感経験なしとは、凄いなあ。オーディオをコントロールする
手腕が、私などとは格が違うのですね。私はつい最近、DG-48で
やっと出口を見つけ、光がさしてきました。
2011/06/07(火) 15:27 | URL | 芳賀 瞬 #-[ 編集]
こんにちは、

オーディオをコントロールする手腕が無いばかりか、そもそも
そういった感情が無いと言う方が正しい気がします。

誤解を招きやすいので記事にはしにくいのですが、
多くのスピーカーとかアンプはとても優秀じゃないですか。
そのまま、素直に使うといい音になるはずですよね。

私がいい音だと思っているのは、それを信じているからです。
本当は音は悪いかも知れませんが、要は気の持ち様ってやつです。
2011/06/07(火) 16:48 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
http://kaorin27.blog67.fc2.com/tb.php/269-a6fea3ef
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)