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低音と高音のはなし

若い頃は販売店へ出向いてメーカーのカタログを集めてくるのを趣味にしていました。皆さん一緒ですよね。

最近は分かりませんが、その当時は技術的な売り文句が多くて、周波数特性のグラフがほとんどのカタログに載っていました。
そのグラフを見ていると、1kHzが中心点で何となく中音の一番真ん中辺りかなあとイメージしてました。

その当時の周波数ごとの勝手な思い込みを整理してみると

最低音(重低音とか)   50Hz以下

低音・・・・・・   60-800Hz

中音・・・・・・  900-9kHz

高音・・・・・・   10kHz以上

超高音・・・・・   18kHz以上


まあ、子供の思い込みですから許してください。


この勝手な思い込みのもう一つの根拠は、1980年頃に沢山販売されていた、国産3Wayスピーカーの標準的なクロスオーバー周波数にも影響を受けています。

一例として79年にパイオニアさんが発売した S-955という機種は

36cmコーンウーハー
6.5cm ベリリウムスコーカー
リボンツィーター

の構成で  950Hzと8000Hzにクロスオーバーを採っています。
s0128b.jpg

この機種はリボンツィーターの為か全体に高めですが、概ね下は500-800Hz 上は5kHzから8kHz近辺が多かったように記憶しています。
3Wayの各ユニットがそれぞれ低音用、中音用、高音用と分けられているのだと思い込んでいたのです。


さて、実際の音の聞こえ方は随分違うのだなあと気づいたのは長じて後ピアノ教室で理論を教えて貰った時です。

改めて書く必要も無いのでしょうが、NHKの7時の時報を知らせるピッピッピッ・ポーンの電子音は
最初から3つのピが440Hzで、ポーンが880Hzです。あの音を聞くと880Hzなんて激しく高音ですよねえ。

しかも、これを五線譜に置き換えると、440Hzは基準音=音叉の出す音で真ん中の「A」
ドレミファソラシドの「ラ」の音なんですって。
普通の男性が歌うとしたら、結構声の出しにくい、これは高音ということになります。

その上、880Hzときたらオクターブ上の「ラ」(女声のハイA)ですから、ほとんど音楽の楽譜には存在しないと言って良いような高さということになります。
因みに、ソプラノの限界と言われる「ハイB」(3点変ロ音)で約1000Hz・・・ほとんどガラスの割れる音だよ((#^.^#)。

今お話している周波数は、サインカーヴの単音で「基音」(音程と言ってもよい)ですから、実際の楽器では例えば同じ「ラ」の音を出していてもピアノとヴァイオリンでは音色に違いがあります。
この音色の違いを決めているのは、基音の上に2倍、3倍・・・と発生している「倍音」の分布に寄ることはご存知の通りですね。

改めて考えると、音楽の音程というのは周波数特性グラフに当てて見ると、随分と下の方で成り立っているのだと気がつきます。



以上の事から、昔のケータイの着信メロディーのような音程を聞き分けるだけならば、250Hz~1000Hzもあればカヴァーできるといえましょう。

倍音を4倍まで、低音側を1/2まで再生しようと考えると100Hz~4000Hzの帯域幅があれば、殆どの楽曲は楽器の音色を持って聴くことが出来そうです。

蓄音器のクレデンザは、100Hz~4000Hzを再生できると言われており、そこから出てくる音は蓄音器のイメージに反して特別モゴモゴせず、また鼻を摘んだような様にも聴こえないどころか、スカっと抜けた音を出してくれます。


これには昔から言われている秘伝?の秘訣があって、「低音限界」x「高音限界」=40万
になったときに人間はその音をバランスが良いと感じる法則があります。

これが名高い 「40万の法則」ですね。そのままやないかーーい

下に、池田圭氏の「盤塵集」に記載されたグラフを載せておきますが、なんと上手く出来ているのだろうと何度見返しても感服させられます。
abookx_0080pg1_convert_20110611122153.jpg

以前から僕は、日本で聞かれるオーディオの音であれ、街に流れているBGMやインフォメーションの類も相当に高音寄りだとお話ししていますが、この数字を出せば直ぐに納得ができると思います。

実測してみると、90万や下手をすると120万といった数字が出てきます。

かなりキンキンした音のはずですが、一旦これに慣れてしまうとハッキリと聞こえるからとこれを良しとしてしまう傾向があり、パッと聞きは大変よろしいのですが時間が立つと徐々に違和感を覚える人もあります。



まだ計測をされた経験の無い方は、是非一度ご自宅の周波数特性を測って掛け算をしてみてください。

スピーカーから出る音の周波数特性を測った場合・・・
例えば、低音側が-10dBで50Hz出る装置は、高音側も-10dBで8kHzで落ち込んでいて始めて「バランスの良い音」になるのです。
しょっと信じられないでしょう?


これが-3dBということになると、-3dBで50Hzを出せる装置というのは、いくらもないんですよ。
ユニット正面の特性を測れば「計測」はできるでしょうが、50Hzの音を物理的に一波発生するには部屋の寸法が7mほど必要なわけで、振動板が動いて電気的に記録できる。ということと音として存在するということはまた別次元の問題であるのです。


オーディオの再生音について、色々とお悩みをお持ちの方もおられると思いますが「40万」に近づけることでかなりの部分の問題点の解決になると思います。

最も簡単な実験方法は、高音を落として聞いてみることですが、それだけでも何か感じることはあると思います。


但し、一つ問題もあります。
現代の広大な帯域を持って録音されたソフトを使って高音だけを落とすと、やはり鼻つまみの音になるでしょう。

これを本格的に再生するには、当然のこと20Hzを叩き出すことが出来る装置にするしかありませんが、それには膨大な、本当に膨大なコストが掛かります。
そんな、ウーハーやアンプを揃えることも大変ですが、何よりも20Hzは半波長でも8.5mですからね。
一波長を動かすとしたら17mの部屋を作らなければいけない・・・

新しい録音やオーディオ機器は、潜在的には勿論私たちが聞いている古い録音を圧倒的に凌駕する能力を持っています。
それは疑いようのない事実ですが、これを十全な状態で再生するには、以前に比べて突拍子もないほど大きな覚悟が必要だと感じます。

お金があれば、マジコの新しいスピーカーは使ってみたいけど、部屋は問題だなあ。





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コメント
こんばんは~。

勤め人の時にメンテをしていた放送設備には電圧増幅部と言う
プリアンプの様なアンプが有って低域は800Hzでカットして
出力は0dB以上は出ない様にコンプレッサー機能が着いて居ました
工場では機械の音が結構煩くて低音が出るとモゴモゴして聴き難い!
モットも付いているスピーカーは殆どが500Hz辺りで出なくなる
レフレックス(折り返し)・ホーン・スピーカなので
マイクもデファレンシャル型と言う特殊な特性
周囲の音を差動で不感にして人の声だけを拾う様に造られて居ます
なので、これも音質は低域は出ないです(^_-)-☆
2011/06/11(土) 18:41 | URL | altum #VQ8ezY4k[ 編集]
こんばんは

私の場合は60Hz~13KHzで78万、
これだと40にするには30Hz、、、、
狭い部屋なんで30は無理ですね。

それとクロスについてなんですが、
Cinemaのダブルウーファーのクロスは380
Westrexは500です。

いかにマルチで使ったとしても、
やはり素の状態でフルレンジ的に鳴るユニットが一番素直な音声を作ってくれるようで、、、、(特にWooferはそれが大です)
2011/06/11(土) 22:24 | URL | mambo #n9Bk/wZI[ 編集]
altumさんこんにちは、

やはり電車内のアナウンスに近い環境で、似た使い方を
されていたのでしょうね。

ミージック用とは別に周波数帯域をトリミングすることで
用途に合った使い方が検討されているんですね。

2011/06/12(日) 13:04 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
mamboさん、こんにちは。

スピーカー出力の周波数特性の場合はどの点で上限、下限を
決めるかが難しいように感じます。

測定位置によって随分結果が変わりますでしょう。
また、全体に右肩下がりのカーヴの時にどう評価するべきか?
等々いろいろ検討事項がありますね。聞いた感じとの整合性は大切かと
思います。

クロスに関しては僕もそう思います。
フルレンジウーハーとフルレンジドライバーで220Hz6dBクロスなんて
WEの考え方はやっぱり気が利いてますね。
あらゆる部材のコストを無視しなきゃできんでしょうが・・・

2011/06/12(日) 13:16 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
こんばんは

特性上はともかく、60Hz以下なんてハナから出ないと思って
いるので、図からすると7KHzまで出てると十分なんですね。
実際、接点不良で高音が片方出なくなっても、結構聴けるこ
とを知りました。
さすがに、1KHz以上が出ないのは耳には付くのですが...
2011/06/12(日) 23:48 | URL | メタボパパ #-[ 編集]
こんばんは、
こちらも今週は早朝、こんな時間帰宅でパワーダウンです。
流石に1Hzは基音の高音側限界ですからね、聞こえない音もあるでしょうか。

さて、そちらのブログよりは、こちらで。
お忙しそうで・・・それが何よりですよ。
2011/06/14(火) 21:30 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
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