古いアンプは本当に良い音なのか? その1

まず、「良い音」の定義が無いと始まりません。

幾度と無く書いているけれど僕は「自分の好きな音」ってのが無く、一流の機械がキチンと動作した音と言うのはどれも感服するばかりだと思っている。

それでも無理やり「好き嫌い」を申せば蓄音器の音が好きだが、それは決して「良い音」と同義で考えてはいない。

良い音は「充分に広い再生帯域(どこかで38万~40万の法則を満たす)」「平坦なレスポンス」「低歪」を満たしている音と考えている。
もう一つステレオ再生の際には「2つのチャンネルが近似である」という要素も重要になる。



では、本日の御題である「古いアンプは良い音か?」について考えるが、結論から申すと今回の修理において、2点ほど問題ありと認めた。

まず、一点目は 周波数特性の問題。

家庭用アンプの場合は、平坦な周波数特性をクリアーした物を大量に生産・販売すれば商品として成り立つが、ステージ用アンプは設置先の音響特性にフィットさせたオーダーメイドの納品になるから、通常1台、1台イコライジングされて異なる周波数特性を持つことが多い。

この点は、戦後のアンプは合理化が進んでイコライザー機能(トーンコンですね)を持たせたり、別途イコライザーを用意することで汎用性が高まり、アンプの基礎的な特性はフラットなものが多くなった。
しかし戦前においては完全な現場・現物合わせのケースも多く、同じアンプを2台購入して周波数特性を測ると個体差とは言いがたい差異を示す場合がある。

つまり、中古品や取り外したアンプを購入し、そのまま自宅のオーディオセットに接続しても直ぐに真っ当な音を再生できない場合も少なからずある事になる。

2台のアンプの特性に差があるまま使っておいて、「名前ばっかりで大して良い音がしない」とか「これが味があって良いのだ」なんて誤解を生じていることも多いように思える。

PICT0044.jpgアンプ自体が大きくて重いので、必要な測定器を最小限持ち込んで計測に入った。




兎に角色々な要素が絡み合って原因を作っているので全てはリポートできないのだけれど、将来の自分のために項目で残すと。

・入力トランスにおける負荷 (CR発信機は出力Z=600Ωなので、この時代の入力トランスでは負荷が重過ぎる、200Ωのフェーダーを入れた後に測らないと高音で損失が出ると気付いたのは少し経ってからだ)

・この時代はトランス単体の特性が狭いので回路上の共振で両端を伸ばしている。
その共振点をずらして特性を整えている。

等など、それぞれ確認を取ったりCRを外したり別の値のものを着けたりしながら毎回周波数特性を測っていたので、A4の大学ノート1冊近いデータになってしまった。
なんとか一月をかけて2台の差を0.5dB前後にすることができた。

こうして書くと、そんなの経年変化や組み立てのバラツキだろう!なんて家庭的な意見もあるといけないので、ライン出力トランスのアップを載せておく。
PICT0349.jpg
・最後まで気付かなくて苦労したが、入出力トランス、段間トランスは型式の後にも番号が振ってあり、周波数特性の個体差が結構ダイナミックだ。
左は 2201/9 右は2201/16 (005が並記されているので入力トランスとしても使ったことがあるようだ。)



最終的にアンプトータルの周波数特性は40Hz~14kHzで-2dBに追い込んだが、40万を少しオーバーで残念。
そして、この結果は今の常識からすると、ハナシにもならないくらい狭帯域である。いわゆる「良い音」のアンプとはとても言えない。

ただし、これでレコードを聞いてみると低音も高音も過不足がないばかりか、実にバランス良く聞こえる。
不思議に思うけれど理由は明確だ。
Neumann DST-62は上が15kHzまで、Europaも保証は15kHzまでなので、入口から出口までエネルギーが保存されたまま伝えられている。
だからこそ、ソースたるレコードに1970年録音以降の盤や逆に古いSP盤を用いると、高音が詰まったり、ノイズが多くて薄い音になる。

ソース側にも「丁度良い」帯域のものが求められるのは、オーディオで有る限りこれは道理だ。


スピーカー出力のトータルな特性を見る
PICT0293.jpg

このスピーカーを購入以来かつて無い良質な特性だ。
これまでお見せしてきたのはZeissアンプとの組み合わせだったが、そこで目に付いたピークやディップが見られず、穏やかな、ふたこぶラクダのような特性になっている。

この結果は、レコードを聞いた印象を充分に裏付けるものだ。
ただし、右端の20kHzのレスポンスは無くなっているが、これは上述した通りの理由による。



長くなったので、2つ目の問題は次項に譲る。










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コメント
こんばんは

古い機械は現代のものさしで測るとボロがでるのかも
知れませんが、そのボロはレコード音楽を聴く上で、
問題にならないところなのではないでしょうか?
それ以上に欲張らない分、密度が高く惹きつける魅力
が詰まっているように思います。
また、機械も壊れないことを第一に考えられたモノの
方が実は音もいいような気がしてなりません。
これは優秀だけど病気がちな人より、元気な人ほうが
頼りになるのと似ています(笑)
2011/10/15(土) 22:55 | URL | メタボパパ #-[ 編集]
こんばんは、

オーディオ機器は壊れた時のショックが大きいので、何より健康が一番です。

仕事では、グループのまとめ役にでもなってみると、
頭の切れて、仕事が早いような子はちょいセルフィッシュな面もあったりして
やっぱり、休まずに頭数が計算できて、残業も逡巡なく残ってくれるメンバーが
一番頼りになりますわね。

2011/10/16(日) 01:45 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
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