プッシュプル・アンプを作ろうと思ったわけ

当たり前の話で恐縮だが電話線を何千キロもケーブルだけで引き回すと、ケーブルの抵抗分や容量の影響を受けて長くなるほど通話を聞き取り難くなるのはご想像の通り。
そこでケーブルの途中にアンプを設けて減衰した分を増幅して繋ぐ目的の所謂「中継器」を挟むことになる。
その為にWE100シリーズのような高効率、長寿命の真空管を使ったアンプ(中継器)が作られて、時には海底に何年も沈められたまま粛々と私たちの通話を縁の下から支えてくれている。ドイツでの「ポスト・チューブ」というのも同じ目的だろうか。その親分が有名な「ED管」だ。

即ち、音響エネルギーを活性化する為には電源装置からエネルギーを受け取る必要があることが分かるお話。


・プリアンプか?パッシブ・フェーダーが良いか?
・プリメインアンプよりセパレートアンプは優れているか?
・同じくモノアンプは?
こうした話は沢山あるが、いずれも閉回路中の電源ユニットの個数が増えていく=グレードアップと見られている。
(しかし、システム全体のゲインや効率を含めて検討しなければ単純に優劣は語れないと思う。念のため。)

最近あるサイトを見ていて発見したが(プロケーブルさんというその筋では有名なサイトらしく、下のHさんから教えてもらった)
PCからデジタル信号を出してエアーマックEXをDAC替わりに使う際に、接続するLANケーブルの途中に電源付きのハブを入れると良いと書いてあった。
不思議だというむきもあったが、冒頭の話を見れば80-90年も前から実施されていた手法と何も変わりは無い。
扱う信号がデジタルになろうと、電話が空中を飛ぼうと音声信号を扱う根っこの理論は些かの変わりもないということだ。



実はこんなことを書き出しにもってきたのには少し前にキッカケがあった。
Hさんのお宅にお邪魔して何気ない会話をしていたときのこと

DSC01508.jpg


「オーケストラが大音量でワーッと鳴っている時に、チェロバスが入ってくるような局面ではそのアンプやスピーカーの底力が見えるよね」
と言うようなことを仰った。

これにはまいった
CDやレコードに入っている「ある瞬間の音響エネルギーの総和」よりもアンプの増幅能力やスピーカーの出力能力が下回っていると「こじんまり」した音楽になっちゃうよね。ってことだと思う。

特に低音域ではより大きな音響エネルギーが必要とされるから、正弦波で測定した時の特性やピンクノイズでのアンプの挙動よりも厳しい動作状況が容易に想像できるし、室内のエアーヴォリュームの影響も受ける。

アンプの出力が完全に息切れを起こしたときにはクリップしてしまうから逆に不具合は判りやすいが、オーケストラのトゥッティで「なんとなく吹き上がらない」なんて不満に感じる場合もあるだろう。
また、わが家のような小音量再生(ffで85dBくらい、ピークで90dB程)の環境ならこの問題は表れ難いのかと言うと、それほど簡単ではないほどに音響エネルギーは強大のようだ。



現在AD-1シングルアンプの出力管のアノード電流はA級動作のインスペクション通りであるから、これを2階建てにしたA級プッシュプルでは単純に2倍になる。
これで、エネルギーの総和を倍近くにできるのなら、折り重なりあうオーケストラの各楽器をより緻密に描けるのではないかと言う目論見だ。
そうは言っても、実出力はシングルだろうとプッシュだろうと変わりは無いのだが・・・  
と割り切らずに電流の増加がエネルギーの増加と信じたい気持ちもある。


もちろん、現在もKl-32611(出力管のKL-72406は 直熱三極管AD-1を業務用に規格を上げてソケットを変更したモデルでプッシュプル駆動)というEuropa専用のアンプで文句の無い成果を得てはいるが、これは戦前のアンプであって周波数帯域はそれなりに狭い。
このところ追いかけている70年代以降の録音を対象とした「広帯域システム」のプランの中にはより広い帯域を持ったアンプを是非欲しいと思っている。

AD1-sアンプの帯域や繊細さを持ったままKl-32611アンプと同等の描写が出きるなら夢のアンプが出来てしまうが、そんなことは本当に可能なのだろうか?


つづく


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コメント
アルテックの604Bを鳴らすお手伝いをした事があります。能率の高いスピーカーを真空管で鳴らそうととすればハムが避けられないとは申しませんが、出たって不思議はありません。プリのボリュームは8時9時ですから、パワーの入り口で絞ってもらえばと考えましたが、ボリュームを通すと音が悪くなるのではと全開を譲ってもらえませんでした。ハムが出ると文句が言われても、それは私がスピーカーを壊した訳ではありませんと説明しましたがご理解頂けませんでした。プリアンプが必要かフェーダーで足りるかは、どちらかが正解というより、どこでどれだけ稼ぐかの問題ですが、ゲインとインピーダンスについて私も完全な理解をしている訳ではありません。お話を伺えれば幸いです。
2012/08/09(木) 21:20 | URL | kawa #EnGitwzo[ 編集]
kawaさん、リアルなコメントありがとうございます。

古い機械を問題なく鳴らすまでには、時として手の掛かる面もありますね。

ゲインの件は記事にしたくても出来ない最たる物です。上手く伝える自身がないというか
本当にちゃんと伝えるには膨大な前提が必要なので、日記的な性格のブログに向いていないような
気がしています。
ゲインに比べると随分と平明だと考えていた電源についてさえ真意を伝えるのは大変だと思っています。

**ちょっと気になったのですがパワーのINPUTのポテンショメーターを絞る事でノイズの量が減るのならば
パワーアンプより前のノイズでしょうか。
ハム(電源起因の50Hzや100Hzのノイズ)ならポテンショメーターの位置に係わり無く出続けるはずですね。


そうなんです、プリ(ライン)アンプならゲイン1以下のだって入れる意味があることもありますね。
これは本文の電源を増やす事に繋がっていくのですが、合わせてエネルギーの保存の法則を考えていく必要が
ありますので、複雑になりすぎて記事にする元気が出ないんです。お察し下さい(笑)


2012/08/11(土) 01:21 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
M/F様 こんばんは、コメントありがとうございます。

はい、パワーアンプの特に出力段に関して言えば仰る通りかと思います。
一方、システム全体をセットで考えているので紛らわしい表現なってしまい済みません。

本文では、レコードやエアー・ヴォリュームの例を出して極力ご理解頂けるように務めた心算ですが、私が
求めているのはレコードに入っている音響エネルギーの総和をいかにしてスピーカーから出す音響エネルギー
(振動板の振幅)まで保てるか。その為にアンプをどうすべきかというテーマなのです。

この時に、生の演奏やレコードの溝、スピーカーの振幅は運動エネルギーと解釈できるので、単に電流供給量
の問題としてしまっては全体を説明するのには不便が生じます。

そうでした、貴ブログのAD-1アンプ製作記を楽しみに拝見していましたが、最近更新されておられないようでした
ので進展がありましたらまた記事をお願いします。
2012/08/11(土) 04:30 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
アルテックの話は他所の話ですが、恥を忍んで白状すれば自分の所でもパワーアンプより前の雑音を無くせた訳ではありません。ネットワークを飛ばしてユニットをアンプと直に繋いだ所為でしょうか、ますますスピーカーの能率が高くなった気がします。特にレコードを鳴らしていた頃は、トランスにイコライザー、あちこちで拾った雑音が完全には隠しきれませんでした。
2012/08/16(木) 12:03 | URL | kawa #EnGitwzo[ 編集]
kawaさん、こんにちは。

パワーアンプのノイズはダイレクトなので余り気にしませんが、それ以前のノイズは
一緒に増幅されるので気になりますね。
古い機械などを見ると本邦の一般的な回路より初段の+Bが極めて低い電圧での動作であり
そんな処も低ノイズの理由かと思えた次第です。

ノイズはまた奥の深い課題ですね。
2012/08/18(土) 12:06 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
こんばんは。

AD1を使用したアンプは、試作機を製作して色々な検討を進めていましたが、ソケット(サイドコンタクト)でのトラブルが続けて起こりましたので、この点の解決策が見つかるまで記事はストップすることにしました。再生音も良く、性能としても立派なのですが、悩ましい所です。
2012/08/22(水) 01:11 | URL | Musicforest #-[ 編集]
こんばんは、コメントありがとうございます。

そうだったんですか!
実は、同じ症状ではないかもしれませんが私もサイドコンタクトには苦い思いをした経験があります。

ここ20年くらいに造られた新品のソケット(バネが強くて球がカチっと入るタイプ=ドイツで売って
いたが恐らくアジア製)を使った時はアタリが悪かったですね。
未だに原因は不明ですが(まともに調査せず交換したため)ソケットの付いている天板を押し込んで
反らすと接触したりして気持ち悪いので廃棄しました。

その後古いドイツ製中古(にゅうーーっと入って信頼感は無い)を購入して問題はすっかり解決しま
した。
そちらも課題克服できましたら、またご報告を楽しみにしています。
2012/08/24(金) 22:50 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
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