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Marantz 8B と球転がし   大好きなTさん

私の家と同じ市内にTさんという先輩がおられる
この人を私は大好きなんだけれど、今まで出会ったオーディオ好きな人の中でも群を抜いてユニークな方なんです

何がすごいかってその発想力が、私のような凡人には遠く及びもつかない程とてつもないパワーがあるのです
それはもう、30年前に出会ったその日から一言一句発言を全て覚えていますから、いつか「T氏語録1〜7巻」という本を出版して大儲けしようと企んでいるんですが・・・「やめてくれよお」と拒否られているので現在は虎視眈々とチャンスを窺っているところです


さて、そのTさんからある日電話をいただきました
その頃Tさんは長年使っていたマッキントッシュのアンプに加え、マランツの#7と8Bのコンビを導入して随分と楽しんでいるらしい。という話を風の噂に聞いていました

しかし、電話口の向こうからは何やら元気のない声が聞こえてきます

「マランツの8Bなんだけどさ、球を変えたら音が出なくなっちゃったんだ、それに少し焦げ臭い匂いもする」

それは大変ですね、一応見るだけ見ますから持ってきてください、ということで我が家に持ち込まれました

Marantz-model-8-Tube-Amplifier2.jpg
この写真はNET上からいただきました


一目で、出力管のカソードに有る抵抗の溶断とわかりました
多分C電圧測定用の抵抗だったと思います
多分というのは、そのアンプは購入後まだ2ヶ月ほどだったため、販売店へ送ってくださいと話していましたのでその時は回路図を見ていなかった


どうしてこうなったかと話を聞きますと
いわゆる「球転がし」をしたくなった(マッキンの当時からやっていたという)のでe-bayで海外からEL-34を取り寄せて差し替えた途端バリバリっとなった、らしいのです

「kaorinくんも海外から球を買うだろうけれど、こんなことはないの?」と聞かれましたが
私は、アンプに実装する前に真空管試験器で球の良否を測ってからでないと使いません。と答えました
もし不良の場合は、数字的根拠を突きつけて返金を要求する必要もありますしね、外国人相手は骨が折れます

何よりも、球の不良による今回のような「もらい事故」が怖いので、氏素性のわからない球をすぐにアンプに入れてB電源を投入するなんてのは自殺行為だと思っています
オークションにある「測定済み」「整備済」なんてのは夏のお墓で肝試しするより怖い
今回は、抵抗1本で済んで運が良かっただけなんです、トランスでもやっちゃったら泣いても泣ききれませんよ

なんて話をしたところで、一服してコーヒーを飲みながら昔から疑問に思っていたことを聞いてみました



なんで、真空管を変えるんですか?


私の疑問はこうです

そりゃ真空管を変えると音は変わることもあるでしょうね
ブランドや型式が、果てはロットが同じでも個体差はある、さすれば「内部抵抗」が違い、同一条件下で「流れる電流値」も違うのは当たり前、人間の顔がたとえ双子でも違うようにね、当然出てくる音が微妙に変わるのはこれも道理だ


現在自宅で稼働中の2セット(モノラル4台)のアンプはフルメンテしたのち、使用する全ての真空管の個々のバラツキを考慮しアンプに実装した動作状態を汲みして、ステレオ2台ペア毎のゲインや特性を揃えてあります

いざ、真空管を交換する段になったら・・・
手持ちの真空管は全数測定してからストックしてありますから、切れた真空管と測定結果の近い1本を選び出して交換するのですが、それでも微妙な調整に関しては実装の上オーバーオールで調整・確認する必要が生じます
これは大きな労力なのです

以上の通り、真空管が切れる→交換 という事態に対しては大変な恐怖を感じているのです
現状の動作状態が保たれなければ困るし、今の音が変わっては困る という恐怖なのです

それなのに、積極的に球を変えるなんて、一体全体どういう心持ちなんですか?と 問うたわけです

PICT4532.jpg

ある真空管を測定したときのメモです、これは試験器で単体で測っただけ
より大きな問題は回路に実装したときにこの人たちがどのような振る舞いをするかなのです



では、Tさんの答えはどうだったのか?
多くのブログやコミュニティーでも球を変えて音の変化を楽しむという記事を見かけますけれど、Tさん以外の方も同じような意見なのかなあ?などと考えつつ息を飲んで答えを待ちました

しばし、沈黙ののちTさんはこうおっしゃいました

「だってさ、今よりいい音がする球があるかもしれないじゃん。可能性があるならそれを聞いてみたいじゃない!?」

おっと、びっくり、
予想していたより遥かに説得力のある回答で、一瞬身じろぎました

でも、何か、何かひっかるモノがあったのでその後も互いの本音をもう少し探り合いました
それでもやはりTさん揺るぎない精神でさすがです、俺の気持ちは一言で伝えた!それ以上でもそれ以下でもないってくらい堂々としています

きっとそうなんでしょう、
昔からよく言われる、音の変化を楽しむという趣向も含めて、趣味としてはその考え方も一理でしょう
お前はあらゆる可能性を放棄するのか?それで人類に進歩はあるのか?なんて言われたら返す言葉もありません


でも、Tさんごめんなさい、やっぱり凡人の僕にはその深謀遠慮は理解できませんでした
自分がアンプに対してしていること、それによってアンプから得ていることを考えると違うんです、僕はアンプに「いい音」を出してもらいたいんじゃないんです
アンプが意図した通りの動作をして欲しいだけなんです、だからアプローチが異なるのだとわかりました


ただ自分はまだその道の半ばで、足場を固めている途中なのでより良い可能性を追求する段階に至っていないと思っているのです
そこで精一杯考えて、こんなカスカスの意見だけ言わせてもらいました



もし、私がコンサートヴァイオリニストとして生活できるほどの能力があったとして、何らかのご縁があって稀の名品をロシア政府(笑)から無償で貸与していただいたとしましょう

例えばガルネリウス「キャノン」を借りたとして、それを使って演奏活動をしています
そんな私が「たまには他のヴァイオリンを使って違う音を楽しみたい」とか「このキャノンはいい音でないから駒とかをスズキのに変えようかしら」と考えるでしょうか?私には無理ですね

どんなに頑張ったって自分が「キャノン」と伍するだけの演奏をできるとは思えない、精一杯勉強して少しでもその名に恥じないような演奏家になろうとするしかないです
そして、鞍上人なく、鞍下馬なし という状態になりたい、名器ガルネリウスを体の一部のように弾きたいと願うはずです

これは曲の作り手ベートーベンや、ヴェイオリンの作り手ガルネリと演奏者である私との時空を超えた真剣勝負なのです

PICT4528.jpg

現在稼働中の真空管です、これらより「いい音」の出る球があるのかどうか知りませんが、作り手と使い手の時空を超えた真剣勝負をするためには球を変える前にやるべきことは山積みです


対してTさんの「可能性のある限りいい音を聞きたいし、その為には自分ができるだけの手を打ってみたい」という志もよくわかりました

お互いに意見を交換しあっても尚且つ双方の意見が両立するという意味のある時間となりました


しかし・・・

このお話はこれに留まらず、もっともっと大変な事になる続きがありました







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コメント
例のスピーカーのアンプ選びしていて、今更はずかしながらコンデンサーの容量抜けの音に気づいた次第です。ビンテージアンプで聴いておられる方のオリジナルパーツにこだわる理由はここですか?
kaorin27さんの今までのお言葉が身にしみます。
2016/07/25(月) 15:09 | URL | ようさん #-[ 編集]
こんばんは

そうですか今が楽しい時期ですね
コンデンサーは抜けるのが仕事みたいなものですから交換さえすれば何も心配はないです
パーツのブランドとかオリジナルに拘るかは個人の自由ですが、少なくとも容量のしっかりした物で聞きたいですね
2016/07/25(月) 23:21 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
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