Marantz 8B Tさんの涙! って泣いてないか、でも泣けるよねえ
さて、件のマランツ8Bは購入したお店に発送して周りの抵抗をもう2、3本交換して無事戻されたそうです
それから半年ほどのち再びTさんから電話がかかってきました。やっぱり暗い声です
「どうしました、大丈夫ですか?」
「それがさ、マランツ8Bの片方のchの音が小さくなって左右のバランスが取れないんだよ」
「左右の球は入れ替えましたよね、ソケットの掃除はしましたか?プリアンプ以前ではないですか?」
「それがさ、8Bにはメーターが付いてるよね、出力管4本のうち1本だけが針が十分に振れないんだよ」
「それは困りましたね、一応見てみますから持ってきてください」

出力管の脇にある(黒いキャップが被っている)半固定抵抗を調整して右端のメーターの針をメーター内の白いラインに合わせるという作業
まあ、出力管のPiを測ってppのバランスを取るんだよねえ、おそらくカソードで測っているのだからパスコンが抜けたんだろう。くらいの軽い気持ちで待っていました
30分もすると、ちびまる子ちゃんが焦った時に頭から青い線が降りてきているような顔をしたTさんがアンプをかついでやってきました
それでも、随分とのんきなことを言ってきます
「今日はさあ、まだレコード聞きたいからさあ、抵抗とかコンデンサーとか変えればいいんでしょ、早くやってよ」
まあ、見てみますからちょっと待ってください、とNETで落としておいた回路図から見始めた・・・・その瞬間今度はこちらがガーーンとなりました

なんと、固定バイアスなんです
メーターはバイアス可変によるDCバランスを測るためにあったのです、ほとんど部品がない場所の電圧だぞ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おそらく修理はできないだろうな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「今日は無理ですね、あまり好ましくない状態だと思います、せいぜい早くやりますがそれでも2、3日はください。
それと手直しではできないと思いますので正規の修理代が発生しますし、修理不能でお返しする可能性もありますのでご理解ください」
無念というか不服そうな顔でしたが、直ぐに出来ないのは事実は事実なので納得してもらって一旦お帰りいただきました
さてここからはこちらの気分が暗くなる番です、早速原因の特定=犯人探しを始めました
普段はこんなに急がないんだけれど、気が早ってしまうというか嫌な予感を拭いたいからという感じです
まずは関連するであろうCR部品の不具合を個別に確認していきます・・・・予想通り問題は見つかりません、数は少ないのでここまで20分ほど
早速行き詰まりますが、そうも言ってはおられません、気力を振り絞って次の手に移ります
各部電圧を4本の出力管から見た立ち位置で測っていきます
音声回路でも特に問題はありません、ここまでで1時間弱。少し焦りが・・・

このメモは信号回路で犯人がわからず、B電源の流れを測っていて犯人検挙の瞬間を記録したものです
答えは想像以上に悲劇的なものでした
アウトトランスの1次側のレアショートだったのです
自分の測り間違いじゃないかと何度も何度も確認しました、しかし残念ですがスクリーン=プレート間に導通はありませんでした
いつもより数倍重い携帯を取り上げてTさんに連絡しました
翌日、Tさんは購入したお店に連絡したのですが、部品としてはすぐにはないのでジャンク品が出た際に生きているトランスを探すしかないと言われたそうです
それからどうなったか委細はわかりません、日本にはたくさんの同型機があるでしょうからトランスは出てくると思いますが早く叶うことを祈ってやみません
最初に抵抗が溶断した時にはこちらで修理(の記録)をしていないので、今回のトランスが切れた同じ場所の球が不具合だったのかはもう私にはわかりません
まっとうに考えると真空管アンプは400vレベルのB電源で動いているわけですから、短絡事故の際には重度の損害が生じる可能性が大きいのです
使う人間は常にその覚悟というと大げさですが、もしもの時の安全保障を考えてしかるべきでしょうね
私が長いこと真空管と付き合ってきて思う事です
「なんとなく嫌な気がする、これをやっちゃいけない」という第六感を敏感にするしかこんな恐ろしい器械と付き合う道はないと思います
別の言い方をすると「気配を察する」感性です
前回話題にした「球転がし」を私がしないのは、アンプにとっては「ヤバイ気がする」ってことも大きな要因だと思います
そこんところが鈍感になると、いつの間にか大きな渦に巻き込まれるかもしれないと思うのです
今回は大変な悲劇でしたが、このアンプを初めて見た時に言った
「抵抗で済んで良かったですよ、トランスでもやったら大変でしたね」なんて冗談が本当になってしまったのです
その時の修理を自分でせずに販売店にお願いしていただいたのも「なんとなく近寄りがたい感じ」がしていたのだと思います
次回は、この悲劇を通じて学んだこと
球転がしをする前にやるべきことは山ほどあった!
最終回です
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それから半年ほどのち再びTさんから電話がかかってきました。やっぱり暗い声です
「どうしました、大丈夫ですか?」
「それがさ、マランツ8Bの片方のchの音が小さくなって左右のバランスが取れないんだよ」
「左右の球は入れ替えましたよね、ソケットの掃除はしましたか?プリアンプ以前ではないですか?」
「それがさ、8Bにはメーターが付いてるよね、出力管4本のうち1本だけが針が十分に振れないんだよ」
「それは困りましたね、一応見てみますから持ってきてください」

出力管の脇にある(黒いキャップが被っている)半固定抵抗を調整して右端のメーターの針をメーター内の白いラインに合わせるという作業
まあ、出力管のPiを測ってppのバランスを取るんだよねえ、おそらくカソードで測っているのだからパスコンが抜けたんだろう。くらいの軽い気持ちで待っていました
30分もすると、ちびまる子ちゃんが焦った時に頭から青い線が降りてきているような顔をしたTさんがアンプをかついでやってきました
それでも、随分とのんきなことを言ってきます
「今日はさあ、まだレコード聞きたいからさあ、抵抗とかコンデンサーとか変えればいいんでしょ、早くやってよ」
まあ、見てみますからちょっと待ってください、とNETで落としておいた回路図から見始めた・・・・その瞬間今度はこちらがガーーンとなりました

なんと、固定バイアスなんです
メーターはバイアス可変によるDCバランスを測るためにあったのです、ほとんど部品がない場所の電圧だぞ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おそらく修理はできないだろうな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「今日は無理ですね、あまり好ましくない状態だと思います、せいぜい早くやりますがそれでも2、3日はください。
それと手直しではできないと思いますので正規の修理代が発生しますし、修理不能でお返しする可能性もありますのでご理解ください」
無念というか不服そうな顔でしたが、直ぐに出来ないのは事実は事実なので納得してもらって一旦お帰りいただきました
さてここからはこちらの気分が暗くなる番です、早速原因の特定=犯人探しを始めました
普段はこんなに急がないんだけれど、気が早ってしまうというか嫌な予感を拭いたいからという感じです
まずは関連するであろうCR部品の不具合を個別に確認していきます・・・・予想通り問題は見つかりません、数は少ないのでここまで20分ほど
早速行き詰まりますが、そうも言ってはおられません、気力を振り絞って次の手に移ります
各部電圧を4本の出力管から見た立ち位置で測っていきます
音声回路でも特に問題はありません、ここまでで1時間弱。少し焦りが・・・

このメモは信号回路で犯人がわからず、B電源の流れを測っていて犯人検挙の瞬間を記録したものです
答えは想像以上に悲劇的なものでした
アウトトランスの1次側のレアショートだったのです
自分の測り間違いじゃないかと何度も何度も確認しました、しかし残念ですがスクリーン=プレート間に導通はありませんでした
いつもより数倍重い携帯を取り上げてTさんに連絡しました
翌日、Tさんは購入したお店に連絡したのですが、部品としてはすぐにはないのでジャンク品が出た際に生きているトランスを探すしかないと言われたそうです
それからどうなったか委細はわかりません、日本にはたくさんの同型機があるでしょうからトランスは出てくると思いますが早く叶うことを祈ってやみません
最初に抵抗が溶断した時にはこちらで修理(の記録)をしていないので、今回のトランスが切れた同じ場所の球が不具合だったのかはもう私にはわかりません
まっとうに考えると真空管アンプは400vレベルのB電源で動いているわけですから、短絡事故の際には重度の損害が生じる可能性が大きいのです
使う人間は常にその覚悟というと大げさですが、もしもの時の安全保障を考えてしかるべきでしょうね
私が長いこと真空管と付き合ってきて思う事です
「なんとなく嫌な気がする、これをやっちゃいけない」という第六感を敏感にするしかこんな恐ろしい器械と付き合う道はないと思います
別の言い方をすると「気配を察する」感性です
前回話題にした「球転がし」を私がしないのは、アンプにとっては「ヤバイ気がする」ってことも大きな要因だと思います
そこんところが鈍感になると、いつの間にか大きな渦に巻き込まれるかもしれないと思うのです
今回は大変な悲劇でしたが、このアンプを初めて見た時に言った
「抵抗で済んで良かったですよ、トランスでもやったら大変でしたね」なんて冗談が本当になってしまったのです
その時の修理を自分でせずに販売店にお願いしていただいたのも「なんとなく近寄りがたい感じ」がしていたのだと思います
次回は、この悲劇を通じて学んだこと
球転がしをする前にやるべきことは山ほどあった!
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コメント
前回kaorin様宅にお邪魔してからご無沙汰しておりました。ブログを読ませていただいてはおりました。139aはおかげさまで機嫌よく働いています。固定バイアスのEL-34PPアンプですので、テスターとオシロなしに球を交換するのは無謀ですね。T様には高い授業料となったのでしょうが、自分でやら
ないで交換するペア球を用意してお願いすれば、大事故にはいたらなかったかも。C電源系のトラブルは即刻球がオダブツになりますものね。「やばい気配を感じる」こと、大切だと思います。
ないで交換するペア球を用意してお願いすれば、大事故にはいたらなかったかも。C電源系のトラブルは即刻球がオダブツになりますものね。「やばい気配を感じる」こと、大切だと思います。
2016/07/29(金) 12:20 | URL | melonjuice #-[ 編集]
その節はお世話様でした
元気に稼動中とのことで安心しました、お楽しみいただければと思います
つくづくおっしゃる通りと思います
固定バイアスの場合は球の良否がアンプの損失に直結する場合があるので怖いと思います
しかし、それ以前に固定バイアスってなに?
ソケットで抜き差しするようになっている(決してそんなことはないけれど)のに交換して何が悪いの?
と言った風潮が怖いです、次回はそんなお話をしたいと思います
素晴らしいROOM完成の暁には是非お声掛けください、また、よろしくお願いします
元気に稼動中とのことで安心しました、お楽しみいただければと思います
つくづくおっしゃる通りと思います
固定バイアスの場合は球の良否がアンプの損失に直結する場合があるので怖いと思います
しかし、それ以前に固定バイアスってなに?
ソケットで抜き差しするようになっている(決してそんなことはないけれど)のに交換して何が悪いの?
と言った風潮が怖いです、次回はそんなお話をしたいと思います
素晴らしいROOM完成の暁には是非お声掛けください、また、よろしくお願いします
2016/07/30(土) 01:18 | URL | kaorin27 #-[ 編集]
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