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英国オーディオ旅行  二十年ぶりの民生機

我が家における英国式オーディオの火を消してはいかん!

と、この歳になって一念発起
20年ぶりくらいに民生機に取り組んでいます

まずは、入り口をご紹介しましょう

PICT4743.jpg

CollaroのターンテーブルにDecca Super arm と PRO arm の2本体制です
それぞれに専用の(針圧の適合という意味で)ヘッドを使います
下のセレクターボックスは、2本のアームとステレオ、モノラルの切り替えを行います

ターンテーブルは当然のこと、フローティングしないとお話にもなりません
そのために、写真にあるキャビネットの決められた隙間に納めるよう上下ともミリ単位のクリアランスで押し込んでいます
今回のラインを組む中で一番苦労した点です

置いてあるレコードはオワゾリール パーセルによるシェークスピア劇の音楽に登場いただきました
エンシェントを指揮したホグウットの名盤です、これほどふさわしい1枚もそうありますまい

PICT4744.jpg

ヘッドも少しずつ揃ってきました
まだいくつかはメンテナンスのために英国へ旅をしています

この中に一つ、中々の珍品が含まれています、そのあたりのお話は別途書きます



さて、今回もアンプはQUADにしました
これはもう腐れ縁のようなもので仕方ないですね

これ以外のメーカーの機械も随分とお世話になってきましたが、ことプリアンプに関してはQUADの方式が一番納得がいっているというだけの理由です
他社のアンプよりQUADが優れているとも思いませんし、もちろん劣っているとも思いません

PICT4728.jpg

プリはいつものようにモノラルのを2台使います
このQUAD QCIIというアンプは4回ほどモデルチェンジをしていまして、中身の回路や部品の定数が変わっているのでステレオで使うときには注意が必要です

今回の個体はセカンドバージョンで、入力数やテープアウトの端子などが一般に見られるモデルとは異なっています
この時代のもので状態の揃った2台を見つけるのは難しいと思います、運が良かったです

ただし、EQカーブは見る影もないくらいずれています
英国から別途マイカコンデンサーを送ってもらいカーブを合わせました

カーブがずれている状態で何人か音を聞いてもらっています
みなさん、首を傾げて怪訝そうな顔で無口のまま帰られました

次回聞かれたときにびっくりしてもらえると思います
こんな古いアンプは買ってきて繋いだだけでは何の役にも立たないんだ、という重要なことをお知らせできる又とない機会でしたので、不備を承知で調整前の音を出しました(我が家ではほとんど完成後にしか人様にはお聞かせしません)

憧れのヴィンテージアンプを買うだけならお金との相談で済みますが
良い音楽を聞くことができるかは全く別の次元で、現状のままでは不可能に近いことです

PICT4730.jpg

パワーアンプはお馴染みのQUAD Ⅱ型なんですが、売主は変なことを言っていました

曰く
「この個体は、再生産品である。電源を入れると一応音は出るが要修理品である。シャーシにはいくつか穴が開けられているので了解されたし」

こちらとしては、まあ音が出るんならトランスは逝っていないようだし、下手に部品が変えられていないのは願ったり叶ったりだからこれで良いか!と送ってもらいました


さて、パワーアンプのメンテナンスを開始しましたが、あらゆる点でおかしなことが起きます

1 Ⅱ型アンプで特徴的な豪華仕様のアクリル銘板の代わりに簡素なアルミ板の銘板がついています
しかもそこには、セントラルエレクトロニクスの注文により作られたとあります???

2 写真の通りシャーシの横腹に穴が空いています
寸法や形状から、ねじ込み式のプロ用のコネクターがつけられていたようです
反対側にも2個空いていて、スピーカーコードを引き出していたようです

3 写真上側のアンプの電源トランスには、昔懐かしいテプラシールが貼ってあります
よく見て見ると  「CH. 9」とあります
チャンネル9番???

4 同じく写真の通り、アンプの両端にはラックマウントごときな「ツバ」が付いています

5 最後に周波数特性を測って見ました
8kHzくらいから下降して高音が全く出ていません???
慌てて、近所でⅡ型をお使いのMさん宅で見せてもらうと・・・大きな発見がありました


出力トランスの仕様が違います
・・・初めはわからずに単純な配線違いだと思って配線をノーマル機仕様にしたら・・・危うくトランスを焼き切りそうになりました

そうと分かればこっちのものです
業務用ラインで使うための道具立ては揃っていますからお手の物、実際にはノーマル機よりもトランスを楽に使っていますから望外に優秀な特性であることが判明しました

思い返すと、Vitavoxのモニタースピーカーも同じ仕様だったなあ、あれがまだ手元にあればダイレクトに使えたのになあ
と思いましたが後の祭り、人間「知らない」というのは恐ろしいものです。もっともっと勉強しよ



さて、仕様の違いもわかってひと段落、続いてアンプの実際的なメンテナンスに移りましたが、これがまた大変なものでした

まず、50年代のカーボンコンポジット抵抗の狂うこと、狂うこと
慌てて同一部品を大量に英国から取り寄せました

PICT4745.jpg

いくら新品といってもストックの抵抗も狂っています
一つの値の抵抗が10本あっても2本1組も取れません
そこは最後の手段を使って何とか2台分揃えました、大量の不使用抵抗が残りましたがこれもそのうち使うときがくるでしょうね

これまで長いことドイツ製の業務機を扱ってきて、金属皮膜系の抵抗を見てきました
何十台か100台近く直しましたが、抵抗値が狂っていたから交換した記憶がすぐには思い出せません


また、1本のKT-66が熱暴走を起こして原因の追及に時間を要しました
これも業務機ではあまり考えられないことです、不具合までのマージンや部品決定時の安全保障の感覚が大きく異なりますね





オーディオシステムの音を聞いて、あっちが良いとかこっちが好きだと言い放つことは実は造作もないことであり、どれほどの意味もないことです

ある時代に、ある目的や用途を持って作り出されたモノには必ず作り手の想いやそれぞれの時代の要求があります
現代に生きる我々にはその物の価値を正しく汲み取れているか?が問われているのだろうと思います


今回ご紹介した民生オーディオが生み出された当時の英国では、まだおそらくかなり身分の高い人たちが顧客だったでしょう
途方も無い大きなお屋敷の普段は家人も足を踏み入れないような離れや奥の院でお父さんだけが音楽を聞く部屋に置かれていたかもしれません
あるいは、来客からの羨望を浴びるようにしつらえた瀟洒なサロンかも・・・


いづれにしても、無粋な「家電製品」が見えているようでは興ざめです
QUADやLEAKがプリメインアンプであるにもかかわらず、プリを切り離して可及的小さな筐体に詰め込んだのちパワーアンプを人の目の届かぬ場所に離して押し込めるように設計されているのは決して偶然ではありません

私は以前にQUADを使っていた時も同じようにしましたが、こうした機械は必ずアンティークのキャビネットに入れて、使わないときには普通の家具として何食わぬ顔をしていなければならないと考えています


DCP_0435_convert_20090630094228.jpg

これは20年ほど前に使っていたキャビネット

こちらが今回のもの

PICT4746.jpg


そして、大切なことは
価格的には何十倍も開きのあるKlagfilmの劇場用システムと聞き比べて、やっぱり大きい方がいい!なんて無毛な感想を持って評論家ごっこをしないことです


素晴らしい京都のやっこ(四角に切ったお豆腐)にお醤油をかけただけのものと料亭の料理を比べて「俺はこっちの方が好きだ」なんて無粋なことを言っているようでは
この世界を生きていく資格が無いというものです








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