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ネジのはなし~ドイツ製品への畏敬

今回はなぜ、ドイツものに心を奪われたかという、その辺のお話です。長い駄文になってしまいますがよろしければ、いや是非読んでみて下さい。

中学生にして音の出るカラクリに魅せられた私は、希望の高校に合格したら自分のステレオを買ってもらうと言う身勝手な、しかし有り勝ちな約束を両親から採り付け、まあ晴れて合格と相成った訳です。
その時に購ってもらった物の中に、国産某社のレコードプレーヤがありました。

アーム部には調整部分があり少し弄ると微妙に音が変わるので感じ入った訳ですが、ネジを締め上げても柔らかな感触がし、まだ締め足りないように思えるのです。そして、どれ程締め上げても微妙に動く気がするのです。それ以来、必要以上に締め付ける癖がついてしまい、後年には大切なねじ山を幾つかダメにする程のトラウマとなりましたが、ネジはアソビと摩擦で機能する物だからこんなもんだろうと、ある意味達観するに至りました。

少しの後、近所のリサイクルストアを冷やかしていたときです。独逸国はSIEMENSになる周波数発信機の残骸(店主によるとある工場から出た物でまだ使える、新品のときは百万円クラスのものだよ)がありました。金参千円也を支払い、家に帰って部品取にしようと分解を始めました。
いやはや、分解するには惜しい、それは振るいつきたくなるような逸品でした。

     これは本文とは直接関係無いのですが、独逸製可変抵抗器とその元箱です。
DSC00530.jpg

     あの終戦から2年、ただのRheostatにここまでするかドイツ人!!!
DSC00535.jpg


前置管「EF-84」の3段を経て出力管「EL-86p-pp」というラインナップ:発信用の高信頼管です。トランス類も当然SIEMENSブランドの物が幾つも付いています。
貫通された5段のロータリースイッチにはプラスチックのカバー付き、国産モノしか知らなかった私には強烈な体験でした。

何より驚異だったのは使われていたマイナスネジの具合でした。
廻し込む際には抵抗無くするすると行きますし、所定の位置に来るとスッと停止します。それでいて、外すときにはキッという小気味良い感触と共にすべるように外れるのです。

ネジ一本で何故にこれ程違いがあるのか?
これこそは、両国の物造りに対する思想の象徴だろうと思いました。
経済優先の本邦と、モノとしてのあるべき姿を求める元同盟国。まあ、比較の対象のコストが違うこともありますが、その後、国産の高級機、業務機に触る機会が増えた後にも、この時のイメージを覆すことはありませんでした。

ここまでの話にはオーディオ機器としての音の要素はありません。
「何を言ってやがる。ネジで音はしねえ。肝心の電子回路は日本が一番なんだよ」という意見もあろうことは重々承知しています。
しかし、私というパーソナリティはあのネジを造れる国民を、ひいてはそれを造ることを許される社会全体を信用してしまうのです。

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