Klangfilmスピーカーとバフル (3)

バフルがユニットの振動と供に振動を始めるとバフル板自体が音源となり、特に低域で解像度に問題が起きるのではないか?と、仮説を立ててみましたが、振動する面積のある板は音源と考えて問題は無いだろうと思います。

ユニットがバフルにネジで直付けされている時にこの問題は発生し易いように感じます。
Eurodynの時もフレームを8本のボルトでバフルに取り付け、それ自体には何の疑問も抱かなかったのですが・・・
2mx2mで厚さ25mmの板といえば、かなりの重量になります、この巨大な物体をいかにしてスピーカーユニットが振動させるかは、ヘリコプターを例にとって考えてみます。(先刻ご承知の方は飛ばしてください)

小さい頃、ヘリコプターの後方に付いている小さなプロペラの意味が解りませんでした。
後年、あの小羽根が無いと、ヘリコプターのローター(大きいほうの羽根)を回してもキャビン(ヘリコプター本体)がくるくる回りだして飛行できないと教わりました。
その理由は、ローターが受ける空気抵抗が大きすぎて、キャビンの重さでは空気抵抗にあがない切れないのだと。

それほど、地表付近の空気は重く強い訳です。
同様にスピーカーにおいても、振動板が前に動く信号が入力されると、振動板は静止したままフレームとマグネット、そしてバフルに付いている状態ではバフル全体が後退してしまうこともあるだろうと。

このような、バフルの共振を防ぐための解決策をKlangfilmはEuropaを通じて我々に提示してくれています。
では、具体的に見てまいりましょう。

ウーハー周りの正面です。通常存在するはずの、ウーハー固定ボルトの頭が見えません。
DSC02169.jpg

また、後ろ側の取り付け状況は。
DCP_0168_convert_20090719161131.jpg全体の構造体(鉄製フレーム組の櫓)に渡した水平の桟へ、マグネット部を4本のボルトで固定しています。

さらに、前面板(正面写真の色の濃い部分、以下、一般にはバフル板と同義とします)との関係です。
DSC02163.jpg
解り難いですが、3枚の厚紙のようなリング状の部品がユニットのフランジと前面板との間に挟まれています。
板側から黒色の物(材質が不明です、あとのボール紙よりは少し硬い感じです)が2枚と明らかにボール紙が1枚。
それぞれ5mm近い厚みがあり、都合13mmあります。
この3枚のリングがどうして70年もの間ずり落ちずに止まっているか解りませんが、ユニットと前面板を固定するものはありません。

以上のことから、以下の2点のテクニカルな特徴を見出すことが出来ます。

①ユニットは構造体に取り付け、その構造体を床に設置(接地)することによってメカニカルグランドを建物の床とコモンとしている。
   極端な話し、Europaの構造体を床に固定してしまえばマグネットは地球とコモンに近い状態になります。

②さらにユニットのフレームのたわみによる振動は前面板とユニットのフランジとをオープンとし、緩衝材(紙質のリング)を挿むことでその影響を回避している。
戦前から戦後直後に造られたKlangfilmのZalle(ホール)用スピーカーはかなりの割合でこの思想によっています。
その中でもEuropaは設計が古いグループに属する主力機種であったので、思想は各部に徹底して具現化されています。

例えばウーハーのフランジはこのような構造で補強&緩衝されています。
DSC02173.jpg
通常のスピーカーのフランジの外側にもう1枚強固なフランジを用意して、2枚のフランジ間にはやはりボール紙を挿みこんで締め付けています。

もうすこし、ウーハーユニットを見てみましょう。フレームの厚みです。
DSC02175.jpg
ユニットの口径は14インチ(35cm)ですが、同クラスではあまり例の無い厚みの鋳造フレームを採用しています。(尚、写真に見えるボルトは2枚のフランジを連結するもので前面板には達していません)


ここでKalngfilmは、「動くべきもの=振動板と、動かざるべきもの=マグネット&フレーム、バフル、建物、地球(笑)」の明確化を徹底しています。
こうした手法はバフルに振動を与えるのを防ぐ為ではなく、ユニットの能率を極限まで高め、より俊敏な応答性能を求めた故の産物かも知れません。
結果として、バフルに向くユニットの選別に役立つ訳ですが、その話題はまた後ほど。

しかし、これらの手法は奇抜なことでも目新しいことでもなんでもなく、フレミングの法則を実現する為の最もプリミティブで基礎的な、当然のことを粛々と実行しただけに他なりません。


ここまで話が進むとバフル板自体について語ることはあまりありません。
我が家では幅550mmの板を構造体の左右に付いているネジ穴を利用して片側支持で付けているだけです。
DSC02178.jpg
写真右側の黒い部分です。
このバフル板はネジでとめられている以外の三方向(上下と外側)は非接触ですから、音声信号の振動レベルでいうとフラフラの状態です。
また、ご覧の通り補強の類は一切行っていません。
これでワーグナーのフォルテシモでも殆ど振動しないのです。

これは前回掲載した、30cmの可搬用スピーカーKL-L305のバフルと全く同じ構造になります。
また、同じく前回にバフルの原理として仮説を立てた、
「ユニットのフランジ面の延長線上の、前後の音で打ち消し合い、音圧の低いところにそっと、仕切り板を置く」という通りの姿になっています。


こうして仔細に対象物を見ていると、これを造った当時の技術者の思いや狙いがなんとなく解ってくるような気がして楽しいものです。


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